ぜひ一度、騙されたと思って読んでみて欲しい一冊があります。それは、RAG FAIRの土屋礼央さんがWEBダ・ヴィンチに連載していた【なんだ礼央化】です。

私がこの本と出合ったのは大人になってからだったのですが、本当に度肝を抜かれたような気分にさせられました。というのも、私がそれまで見ていた世界が、礼央さんが見ていた世界と同じものだとは思えなかったからです。

ただそこになにかがあるだけで、それを楽しんでしまう。たとえば、通勤電車内での時間や、自宅から駅までの徒歩の時間。また、そこになにかがないだけで、楽しめるなにかを作り出してしまう。何かが欲しい、飲みたい、といったときに『じゃあ代用品を考えよう!』と行動を起こしてしまうのです。普通であれば何も感じないまま通り過ぎてしまうものに目を止め、それら全てを輝かせてしまうような、アイデアの塊……それが、私がこの本を読んで土屋礼央さんに抱いた印象でした。
しかし、ほとんどが総じてくだらない!というのもひとつのポイントです。『そんなことどうでもいい』と言ってしまったら、そこで全てが終わってしまうようなことばかりなのです。どうでもいいようなことでも、全力で取り組んだり、よくよく考えたりすると、本当におもしろいことになるということが非常に勉強になりました。

全編を通じておもしろおかしく、おちゃらけた口調の土屋礼央さんですが、ところどころものすごく深くて素晴らしい言葉が書かれているのも心を惹きつけます。ご両親が教えてくれた教えや考え方、友人と自分の考え方の違いにまた深い理解を示すところなど、読んでいて思わずメモしたくなるような名言があるのです。そのメリハリのついた文章も、この作品の魅力のひとつかもしれません。
この本を読破したとき、私はそれまでいったい何を考えて生きてきたのだろう?と茫然自失の状態になりかけました。世の中はこんなに素晴らしいことで溢れているのに、私はそれを見ずに生きてきたように思えたのです。それ以来、日々の小さなことでも楽しんで、くだらないことにも全力で取り組むようになりました。


今の自分をどこか変えたい、と思っている方がいたら、ぜひこの本を読んでみてください。