デンマーク王室という伏魔殿に潜り込め! ーーーそして悲劇を目撃せよ。
◇被疑者アンデルセンの逃亡・下◇ -Mordet På en Havfrue-
A・J・カジンスキー トーマス・リュダール 池畑奈央子 訳
真犯人を突き止めるため、アンデルセンはモーリーを説得。強引に協力を取り付けると、アナが眠る病院へ向かう。引き揚げられたアナの亡骸を見たとき、アンデルセンは奇妙な違和感を抱いていた。その理由を確かめるため忍び込んだ霊安室でアンデルセンは、ついに他が仮を掴む。アナの胸元に別の誰かの乳房が縫い付けられるのを発見したのだ。違和感の原因はこれだった。
恐らく、被害者はもう一人いる。そして、その先に真犯人がいるはずだ……。アンデルセンはさらなる証拠を探すも、その動きを察知した真犯人も動き出す。無人の倉庫でアンデルセンを強襲。意識を奪うと、急勾配の階下へ転落させることに成功する——。
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殺人犯も事件の手がかりもデンマーク王室にあるかも知れないーーーそう結論づけたアンデルセンとモーリー。モーリーがメイドとして王室に雇われることに成功し、「似顔絵の女」を探す。遂に見つけたその女はヨハネ、と言う名前の皇太子妃付き衣装係だった。胸の大きな、美しい娘だ。彼女なら皇太子の手がつくのも無理は無い……
一方アンデルセンは偶然、『赤い砂糖』を見つける。汲み取り係の歌が真実ならば、アナとマーアンの殺害現場はどこかの工場? アンデルセンは港そばの工場に行くが、先回りしたクリーヤ夫人に殺されかける。死んだと思われたアンデルセン顔に残された指輪の紋章、という新しい手がかりからアンデルセンを殴ったのは海軍士官かも知れない、と推理する。
2人はヨハネの日記に書かれていた仮面舞踏会に潜入するがブラストラプ警視総監に見つかり、投獄されてしまう。アンデルセンは無実を訴えるのに疲れ果て、“犯人”として自供を始めるが皮肉にもそこで犯人の動機の片鱗を掴む。
一方、その犯人、クーリヤ夫人は外科医ホロヴィッツの"手術"を終え、嬉々としてフレゼリク皇太子の元に馳せ参じるが……
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「被疑者アンデルセンの逃亡・下」、別名「本当は残酷なアンデルセン童話」です(・∀・)
民間伝承であるグリム童話やペロー童話とは違い、100%創作なアンデルセン童話は語り継がれるものだけが全てなのにこれは怖いし、狂ってる。要するに今日よく聞かれるアレですよね。しかしそんな方法取るか普通……((((;゚Д゚))))))) うーん、「人魚姫」を見る目が変わりますね。上巻の表紙の人魚姫がやけに妖美な理由が分かります。つーか女たらしの言うこと信じるなや……
下巻も引き続きイライラさせてくれたアンデルセン←ですが、「ものにも命がある」は日本人の自分たちなら容易く理解できますよね。100年経てば付喪神ですよあなた。ただあの状況でそう信じられるアンデルセンはほとんど狂人ですが←
デンマークに限らず、全ての北欧ミステリーにおいて100%ハッピーエンドはあり得ない、とわたしは嫌というほど知っています。ある程度覚悟もしていた。だけどこんなのって!
この事件を追う一部始終の出来事や感情、見て来たもの全てがアンデルセン童話の土台になっているからアンデルセン童話は幸福な結末を用意しているにも関わらず、寒々しく悲しいのですね……それは現実逃避にも見えますが、美しいものでなければ生きていけなかった哀しみにも寄り添っている……
「被疑者アンデルセンの逃亡・下」でした(・∀・)/
このミス!第1位! 実はこのシリーズって初めてだったり!?(*^o^*)/