フィリップ・K・ディック No.32◇スキャナー・ダークリー◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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ある時は麻薬常習者ボブ、ある時は麻薬おとり捜査官フレッド。自分で自分を監視する……今は、どちらだ?






◇スキャナー・ダークリー◇ -A Scanner Darkly-

フィリップ・K・ディック 浅倉久志 訳



カリフォルニアのオレンジ郡保安官事務所麻薬課のおとり捜査官フレッドことボブ・アークターは、上司にも自分の仮の姿は教えず、秘密捜査を進めている。麻薬中毒者アークターとして、最近流通しはじめた物質Dはもちろん、ヘロイン、コカインなどの麻薬にふけりつつ、ヤク中仲間ふたりと同居していたのだ。だが、ある日、上司から麻薬密売人アークターの監視を命じられてしまうが……P・K・ディック後期の傑作、新訳版



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1994年、カリフォルニア。アメリカは薬物に満ち満ちていた。昔からあるヘロイン、コカイン、LSD、覚醒剤は元より「物質D」と呼ばれる薬物が闇ルートに出回り始めた。物質Dは安価なのでたちまち普及してしまった。



友人バックマンとバリスと暮らしているボブ・アークターも物質Dの常習犯である。ところがボブは薬物中毒者である前に物質Dの製造・密売元を突き止める麻薬専門のおとり捜査官フレッドなのだ。職務上ヤク仲間に溶け込む為に麻薬を服用していたが今や上司のハックにも言えないぐらいの重度常習犯になってしまった。



そんなある日、フレッドはそのボブの監視を命じられてしまう。自分で自分を監視する。“スキャナー”、つまり電子盗聴盗視機器をボブの部屋に置き、“スクランブル・スーツ”ーーー大勢の人間の外見特徴をコンピューターに覚えさせ、映写させるーーーを着てやり過ごす日々。ボブとフレッドの入れ替え生活をしているうちにフレッドはある疑問に侵される。ーーー今の俺は、どっちだ? そんな折、バリスが警察にしょっぴかれ、ボブ=フレッドであることも露見する。そして……



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「スキャナー・ダークリー」です(・∀・)

薬物に溺れる自分とそれを見つめる自分ーーー両極端の自分が存在し、やがては望まない方に取り込まれる本当に究極のアンチ・ドラッグ・ノベル!

読んでいてこちらも混乱しました。生活の破綻と死への恐怖からドラッグに溺れて中毒者と同じような生活を送ったことのあるディックだからこそリアルな中毒症状とリハビリの様子が書けたのだと思います。



しかしそこまで自分が分からなくなるものか、と思いましたがドラッグに加えて最新テクノロジーにも振り回されているボブ=フレッドの姿は21世紀の私たちそっくり。心理学者たちと話す場面は非常に印象的です。何かを仲介を頼まないと人間はものも見れなくなっている。



物質Dの意外な正体と恐るべき出所、ボブ=フレッドの行く先……2024年の世界はディックが想像した1994年と比べてそこまでディストピアじゃない、と言えるでしょうか?



「スキャナー・ダークリー」でした(・∀・)/ 

同じ詩でも翻訳者が違えば言葉は違って見える訳⭐︎(*^o^*)/!