フィリップ・K・ディック No.22◇逆まわりの世界◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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死者は生者に、生者はやがて子宮に還る。その中で……






◇逆まわりの世界◇ -Counter-Clock World-

フィリップ・K・ディック 小尾芙佐 訳



死者は墓から甦り、生者は若返って子宮へと回帰する――1986年、ホバート位相と名づけられた時間逆流現象のために、世界は一変した。死者の再生と売却を請け負うセバスチャン・ヘルメスは、ユーディ教の始祖トマス・ピークを墓から掘りだしたことにより、公安機関〈消去局〉とユーディ教指導者、ローマ・シンジケートをめぐる戦いに巻き込まれる。不条理と狂気が交錯するディック幻の傑作が改訳版で登場。



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「ホバート位相」。それは死者は墓から生き返り、生者は若返り果てには子宮に還りまた生を受けるという時間逆流現象だ。それによって1度死んだのを蘇ったセバスチャンは蘇りつつある死者の気配を察知し蘇らせ、その「生者」を親族やその人間を必要とする団体に売り渡すのを仕事にしている。



そんなある日、セバスチャンは今、自分が居る墓地にユーディ教の始祖であったトマス・ピークが埋葬されていることを知った。ユーディ教ーーー自由黒人共同体思想を広めた、あの? しかもその彼は近日中に蘇る。セバスチャンが聞いたのはトマスの気配だったのだ。



トマス・ピークが蘇ったことでユーディ教の今の教祖レオ・ロバーツ、ユーディ教をよく思わない〈図書館〉率いる〈消去局〉、ローマ教会派遣のシンジケートがトマスを巡って動き出す。セバスチャンはレオ・ロバーツ、シンジケートと連絡を取りつつ、ある女と出会したことで図書館と〈消去局〉と争うことになり……



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「逆まわりの世界」です(・∀・)



「死者は甦り、生者は若返る」……時間逆転ものです。文章だけだとブラッドベリっぽいですが、これに宗教や薬を混ぜることでまさにディック。そこから生まれるのは不条理に振り回される人間たちというディストピア。というかこの設定、どこかで見たような……誰か同じもの書いてます??

死者→生者ルートばかりが描かれ、生者→子宮ルートの語りはありません。というか出来んか。そもそもどうやって子宮に還る……? え、煙になるとか?← もう少し話を膨らませてそちら側の語りも欲しかったなーなんて。



レオ・ロバーツ率いる現ユーディ教VSローマ・シンジケートVS図書館率いる〈消去局〉の三竦みの諜報戦もさるとこながらセバスチャンと妻ロッタの夫婦関係の行方も面白い。1度死んだセバスチャンと1度も死んだことのないロッタとでは根本的にズレがあります。それがトマス・ピークをきっかけにどんどん綻びが生じて……今までのディック作品を知っているとショックデカい。そうなってしまうの……? 結局セバスチャンはそこに戻るしかないわけ……? やっぱり主人公側にいるキャラが良いこと言います。



「逆まわりの世界」でした(・∀・)/ 

来年に向けてちょっと予習する? しちゃう?ーーー〜(*^o^*)/