人はある日突然落とし穴に嵌まる。「犯罪」という名前の落とし穴にーーー
◇妄執の影◇ -Silent as the Grave-
ウィリアム・アイリッシュ 黒沼健 訳
男は殺人者だった。男は女を愛していたのでそれを打ち明けた。女は男を愛していたので、そんなことはちっとも気にならなかった。そのことはだれにも口にしないと女は誓い、ふたりはねっこんした。それから数年がたったが、驚いたことに、ふたりの愛の強さは少しも変わらなかった。だがある日、ふたりの生活に翳がさした。男の勤め先の上司が変わったのだが、男はその上司とうまくいかなかったのである。男は荒れ、上司を殺してやりたいというようになった。そのたびに、女は昔の告白を思い出していた。そんなある日、その上司が何者かに路地で殺され……
男と女の間の愛と疑惑を緊迫感あふれる筆致で描いた表題作「妄執の影」をはじめ、短篇の名手アイリッシュの愛と絶望が織りなす珠玉の作品ばかりを集めた傑作短篇集。
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1.妄執の影
(Silent as the Grave)
……「シルエット」参照。
2.さらばニューヨーク
(Goodbye, New York)
……「ニューヨーク・ブルース」参照。
3.ガラスの目玉
(Though a Dead Man's Eye)
……友達と「取り替えっこ」してガラスの目玉を手に入れたぼく。だけど目玉を失くしてその人は困ってはいないのだろうか? 聞くところによると目玉はズボンの折り返し部分に入っていたという。そこに事件の香りを感じたぼくは警察官のパパに手柄を立てさせるために捜査することに。
4.影絵
(Silhouette)
……「シルエット」参照。
5.義足をつけた犬
(The Dog With the Wooden Leg)
……盲目の老人マーティは外に出る時はディックという犬を連れて行く。ディックは脚の1本は義足だけどとても賢い犬なのだ。そんなある日、そのディックの義足の中に麻薬を仕込まれ、マーティは一味の1人だと思われてしまう。マーティはディックと共に自ら潔白を証明することに決めた!
6.爪
(The Fingernail)
……「レストラン・ロベール」の奥に住むハミルトンという男が殺された。どうやら物取りの犯行のようでお金が入っていたらしい箱の傍に、犯人の爪が。犯人は爪を剥がれるほどの大怪我をしたらしい。怪我をした人間は見つかったが犯行を立証するためには指が必要だったのだがその指が見つからなかったのだ。そして5年後……
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「妄執の影」です(・∀・)
読んだ作品が半分あったのでアレですが、圧巻なのは盲人のマーティが賢い犬と麻薬組織をとっ捕まえようとする5です。聴力が並はずれていて現実にはこんな上手く行くわけないと思いますが盲人と脚が不自由な犬、と見下している節が所々に見えて応援したくなります。
3は子どもが主人公。ウールリッチ=アイリッシュは警察官の父親を持つ少年の活躍を意外に書いています。子どもが誰もが感じる純粋な疑問、ワクワクするような追跡にも闇や犯罪に対する恐ろしさは妥協しません。
最後のはあの名短編を思い浮かべた人も多いと思います。真実を知ったらその金持ちの奥さんは卒倒しますね……
「妄執の影」でした(・∀・)/ 本作でしばらくアイリッシュはストップします。
次こそディックです←(*^o^*)/