バルドゥイン・グロラー◇探偵ダゴベルトの功績と冒険◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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世紀末ウィーン社交界の醜聞を切り裂く名探偵誕生! その名もダゴベルト・トロストラー!






◇探偵ダゴベルトの功績と冒険◇ -Detektiv Dagoberts Taten und Abenteuer-

バルドゥイン・グロラー 垂野創一郎 訳



20世紀初頭に入り爛熟期を迎えた文化都市ウィーン。音楽と犯罪学に打ち込む素人探偵ダゴベルトは、友人グルムバッハ夫妻との晩餐後、葉巻と珈琲を楽しみつつ、ハプスブルグ朝末期の社交界で起きる様々な難事件解決の顛末を披露する。「クイーンの定員」にも選出されたダゴベルト探偵譚から9篇を精選。オーストリアのコナン・ドイルと称される著者の本邦初となるオリジナル短篇集。



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1.上等な葉巻

 ……ウィーンの紳士、アンドレアス、ヴィオレット・グラムバッハ夫妻の楽しみは晩餐の後に友人ダゴベルト・トロストラー氏が手がけた難事件の話の数々を聴くことだ。彼は犯罪愛好家の名に恥じない名探偵なのだ。そんなある日、いつものように晩餐の後おしゃべりをしているとグラムバッハの上等な葉巻が数本盗まれていて……



2.大粒のルビー

 ……グラムバッハ氏がダゴベルトに助けを求めた。フリーぜ男爵がロシアの踊り子『女侯爵』の大粒のルビーを盗み、偽物とすり替えたと濡れ衣を着せられたのだ。今日16時になったら宮廷弁護士に引き渡すというではないか! あからさまな脅迫、詐欺にダゴベルトはどうする?



3.恐ろしい手紙

 ……ヴィオレットがダゴベルトに助けを乞うた。彼女の友人ーーーオーストリアの重要人物と結婚したーーーが昔書いた手紙をタネに強請られてしまったのだ。しかも悪名高い国際詐欺師に! ダゴベルトは相手の野心を利用し、自らの周辺に近づかさせるーーー



4.特別な事件

 ……ダゴベルトは高級遊民だが警察でも一目置かれる重要人物でも有る。警察顧問のヴァインリヒ博士から呼び出しをくらったダゴベルトは医学生殺害事件の話を聞かされる。選りに選って無能なシュクリンスキーが事件を担当する。ダゴベルトは警察の面目を潰さずに真相を突き止めることが出来るのかーーー!?



5.ダゴベルト休暇中の事件

 ……2ヶ月ものの間ご無沙汰だったダゴベルト。ダゴベルトは休暇を取っていたのだがある人物から興味深い手紙を貰い、それにかかりっきりになっていたのだ。その手紙によると自分の母は60年前の幼い頃取り替えられ、本当はとても裕福な身分の生まれなのだ、と言うーーー



6.ある逮捕

 ……ダゴベルトとグラムバッハ氏が招待されたのはヴァイスバッハ男爵主催の園遊会。そこでも事件は起こった。ダゴベルトがまさに客の1人のシガレットケースを盗むところを目撃したのだ。その人物は庭師のトラウトヴァイン。しかしその正体は恐ろしい強盗殺人犯!



7.公使夫人の首飾り

 ……いつもなら寝ている朝8時半に叩き起こされたダゴベルト。呼び出し相手はまたもヴァインリヒでこれまたシュクリンスキーが無能ぶりを発揮したらしい。公使夫人の首飾りを盗んだ罪で医学生モーハルトが逮捕され、無実ならいくらでも申し立てが出来るのになぜか何も話さず……



8.首相邸のレセプション

 ……首相邸の夜会に招かれたダゴベルトは首相夫人から極秘に依頼を受ける。なんでも夜会を行なうとその後招待客から紛失物の問い合わせが相次ぐのだ。ダゴベルトは招待客の中に悪名高い窃盗犯がいるのを突き止めるーーー



9.ダゴベルトの不本意な旅

 ……2ヶ月ぶりにダゴベルトに会ったグルムバッハ夫妻は大いに安堵した。なにしろその間どこに居るのか、生きているのかすら分からなかったのだ。ダゴベルトは2ヶ月もウィーンから遠くないプレスブルクに居たという。いったい何をしていたのか?



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「探偵ダゴベルトの功績と冒険」です(・∀・)

今、世紀末ウィーンを舞台にした作品を書いているのですが(not ミステリー)、英国社交界と違い、資料が断然少なくて困っていました。どんな社交場を設けるのか、どんな料理を食べるのか、どんな交友関係を結ぶのか……そして何より考え方が違います。ほとほと困っていて専門書でも小説でも良いからー!と藁にも縋る気持ちでこの本を探し当てました。すっごく嬉しかったです。



本書は帝国の犯罪愛好家、数々のポジションにつきながら警察からの信頼も篤い高級遊民、ダゴベルト・トロストラー。ホームズともポワロとも全然違う、謙虚な自信満々の紳士が警察機関に出入りもして事件の謎を解いていき、友人グルムバッハ夫妻に語って聞かせます。このヴィオレット奥様が良い味出しています。

関係者は決まって上流階級。故に公にされては困るところもあるようで……醜聞が漏れるのを恐れ、無かったことにする、という任務もやるダゴベルトがもみ消し屋に見えるところもある。そこはホームズやポワロとも違うところで、そこが知名度の高低を決めたとも思いました。グロラーは「オーストリアのコナン・ドイル」と謳われたのです。



彼は行動型。猟犬のように事件現場や人と関わりますがその反面、指紋を採集したり、遺留品に注目したりとデータに注目するタイプでも有ります。この時から犯罪者の指紋はスクラップされていたんですね。

ちなみにオーストリアには警察と連携した探偵学校もあったようです。この場合、「私立」ではなく、「公的」な探偵ですね。……というか無能が昇進してしまう当時のオーストリア警察っていったい……そんなんだから滅びちゃうんだよ帝国……。゚(゚´Д`゚)゚。



ダゴベルト探偵譚は初めてかと思いましたがかなり昔に1作読んでいました。って5年前!? 怖っ!← 



「探偵ダゴベルトの功績と冒険」でした(・∀・)/

人類の未来を完璧に予知する男はやがて……(*^o^*)/