ピエール・ルメートル No.8.5◇われらが痛みの鏡・下◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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パリ陥落はもう目前。その中をルイーズは、ジュールさんは、ガブリエルは、ラウールは、フェルナンは、アリスは、デジレはーーー必死に生きて抵抗する!

 

 

 

 

◇われらが痛みの鏡・下◇ -Miroir de Nos Peines-

ピエール・ルメートル 平岡敦 訳

 

 

ドイツ軍機甲部隊がパリに迫るなか、ルイーズはまだ見ぬ兄の行方を求めて、レストランの店主ジュールとともにパリを脱出する。だが、ロワール方面へと向かう道は避難民であふれ……パリ陥落目前の1940年6月、脱走兵ガブリエルとラウール、機動憲兵隊曹長のフェルナンとその妻アリス、いかさま神父デジレなど、戦火にもてあそばれる人々による息もつかせぬ群像劇! 『天国でまた会おう』『炎の色』に続く第3部堂々完結!

 

 

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ルイーズは異父兄ラウールが収監されているというシェルシュ=ミディ軍事刑務所に面会に出かけるが、面会は中止だと言われた上に移送させられることを知る。移送先が南、オルレアンかも知れないと聞いたルイーズはジュールさんと共にパリを脱出を図る。しかしその道中は同じようにパリ脱出を図る市民でいっぱいで……

 

 

一方、「移送」は悲惨を極めていた。オルレアンまで来たは良いが、そこには受け入れる余裕が無いから更に進めと言う。ただでさえ命令は錯綜し、囚人同士でもギスギスしている。ラウールは脱出を企てるが、なかなかチャンスを掴めない。ましてや自分たちは兄妹だと告げたルイーズのせいで頭の中は混乱している……

 

 

囚人たちの搬送を担ったフェルナンはその途中遂に囚人たちの処刑命令が下る。フェルナンはガブリエルを撃つことが出来ず、ついにラウールはガブリエルを連れて脱出する。ガブリエルの脚の怪我を治療すべく道を進む。

 

 

混乱の中、ルイーズはジュールさんとも別れ、何故か女の子と双子たちと道連れになった。もうバスの行方など分からない。ルイーズは本当に異父兄ラウールとお互いを知る機会を得ることは出来るのか、ガブリエルとラウールの道は救いと真実を知る道に続いているのか、フェルナンとアリスは再び逢えるのか、詐欺師で神父のデジレはどうフランス国民を救うのかーーー

 

 

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(中略)どこまでも続く葬列のようだ、とルイーズは思った。それはわたしたちの痛みと敗北を映し出す、巨大な鏡なのだ。ーーー本文より。

 

 

「われらが痛みの鏡・下」です(・∀・)

異父兄ラウールに会うためパリを脱出、バスを追いかけます。ルイーズは前々のアルベールやマドレーヌのように犯罪行為をしないので←そのドキドキは無く、ひたすら果たしてラウールに逢えるのか、そして他の皆も各々持っている願いを叶えられるのか、という願うに尽きます。パリ陥落という大戦敗北にも等しい恐ろしい状況が近付く中でも人は人たらしめる。ひとえに人間らしい非合理で感情的な願いを持っているから。だから彼らから少しも目が離せなかったのです。そんな中でも人間は変わることが有るから、ラウールみたいに。

 

 

最後、一行はある場所で一堂に会するという凄い奇跡に出会しますが、この時「ああ、このためにデジレは登場したのだな……」と思いました。詐欺師だった、嘘つきだった、犯罪者だったかも知れなかった。でも彼が神父として教会を守らず、そこにたどり着いた人たちを護らなければルイーズを始め、誰も幸福なハッピーエンドにたどり着けなかった。という事実があるだけで良い。アリスの最後の言葉がぴったりですね。というかなんかデジレの物語が出来そうな最後ですけど……

 

 

第一次世界大戦から始まり、名前のある無しに関わらず沢山の人たちが激動の時代を生きて死んで、死ぬことに抵抗するように生き延びた。これはあの時代に紛れもなく生きた、彼らの分身である誰かの為の一種の鎮魂歌で有るように思う。

そうだ、「炎の色」、映画化決まったんですよね。公開決まったら観に行かねば。しかし本作が決まったらどうなるのか。ルイーズ、アルベールと一緒に行っちゃうよね。まさか半分舞台変えてやるんだろうか。無謀過ぎないか?? まぁ、良い。決まったら決まったで喜ぶだけだ。

 

 

「われらが痛みの鏡・下」でした(・∀・)/ 

次はまた川上弘美に戻ります(*^o^*)/