言葉によって、私は他者になる。現代に蘇る異類婚姻譚ーーー
◇犬婿入り◇
多和田葉子
多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。
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1.ペルソナ
2.犬婿入り
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「犬婿入り」です(・∀・)
来週まで多和田葉子作品とその他でお送りしま〜す。
多和田葉子作品、3冊目は芥川賞受賞作品を含めた2作をお送りします。1はドイツ、ハンブルクを舞台に能面をつけることで初めて「日本人である」と認識できたのに顔を無くすことで何者かを喪失する根源的な話。アジアに対する偏見的な差別が気になりますが、当時の世相だったのかも。また外国に住むようになると「日本」を失うと言うことはこれを突き詰めれば国境を突き破れるような気がする。
2はうってかわって異類婚姻譚もの。「南総里見八犬伝」でも有名な「犬婿」説話が現代に蘇りました。突然やって来た「太郎」はいきなり現れたようにいきなりいなくなる。塾講師のみつこ先生も終いにはいなくなる。北区、南区という共同体に留まることは出来ないけれど、好きな時に何処にでも行ける彼ら。幻想とは言わないが、何処か不思議でおかしい。それが隣にある、近くにあるというのはその「何処か不思議でおかしい」共同体がわたしたちが属する共同体のもの凄く近くにあるからでしょう。その2つの共同体を近いにしたのはみつこ先生の塾に通う子どもたちの親であり、失踪したイイヌマさんの家族なのです。
……しかしこれが芥川賞とは。分かりにくい話だし、当時の選考委員は揉めたでしょうね……
「犬婿入り」でした(・∀・)/
次はまたドイツが舞台です(*^o^*)/