A・A・ミルン◇赤い館の秘密◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




TwitterもといX: 「https://twitter.com/KYoCaTHouWoR
エブリスタ: https://estar.jp/users/153193524

田舎のお屋敷で起こった殺人事件に素人探偵ギリンガムが挑む!

 
 

 
◇赤い館の秘密◇ -The Red House Mystery-
A・A・ミルン 山田順子 訳
 
 
田舎の名士の屋敷、赤い館で銃声が轟いた。死んだのは、15年ぶりに館の主マークを訪ねてきた兄。発見したのはマークの従弟と、館に滞在中の友人に会いにきた青年ギリンガムだった。発見時の状況からマークに殺人の疑いがかかるが、肝心のマークは行方不明。興味を惹かれたギリンガムは、友人をワトスン役に事件を調べ始める。英国の劇作家ミルンが書いた長編探偵小説、新訳決定版。
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆ 
 
 
とある田舎にある赤い館の主人、マーク・アブレットはその日の3時にオーストラリアからやってくる兄のロバートの訪問を受ける手筈になっていた。マークと違って乱暴で粗野な男。ところが2人が事務室に入ってすぐに1発の銃声が! マークの従兄弟で館の管理人であるケイリーは駆けつけてしきりにドアを開けるように叫ぶ。と、そこに謎の男が現れて一緒にそのロバートの銃殺体を見つけることになる……
 
 
ロバートは撃たれている。殺人? いや、というかマークは何処に行った? マークが撃って逃げたのか? まさか! 彼はそんな男ではない。混乱するケイリー。とりあえず事件発生時、館の客人たちは皆、ゴルフに行っていててんで関係は無い。客人は皆、ロンドンに帰るが1人ベヴァリーだけ残ることに。
 
 
というのも謎の男ギリンガムはベヴァリーの友達だったのだ。ギリンガムは今までこういった事件に突っ込んだことは無かったが、頭の回転は良いし、なにより事件に全く無関係で利害も無い。素人探偵としてはうってつけだ! ギリンガムは赤い館に滞在し、ベヴァリーをワトスン役に捜査を始める。ギリンガムは鍵の問題からケイリーの動向に注目していた……
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆ 
 
 
「赤い館の秘密」です(・∀・)
本当は4月なので復刻イベ! と称して既に読破達成をしているセイヤーズを読むつもりだったのですが頼んでいるものが来ないので仕方なくこちらを……だってこんなご時世、国会図書館に行くのも嫌です。というか本当に来るのか。
 
 
本書は「くまのプーさん」で世界中お馴染みのA・A・ミルン(1882-1956)の唯一の長編ミステリーと言われています。この人もクリスティーやセイヤーズと同じように黄金時代世代なのでこの時代、ミステリーを書くことは作家のステータスだったとも言えます。「チップス先生」シリーズのヒルトンもたった一作でミステリー界に名を残しましたしね。
 
 
本書は江戸川乱歩がベスト10に入れるぐらいの名作です(8位)。田舎のお屋敷で起こる殺人事件でどことなく牧歌的な雰囲気が漂います。
その中に飛び込んだのはたまたまその赤い館に泊まっていた友人に会いに来たアントニー・ギリンガム。人の良さそうな青年ですが、非常に頭の良い青年です。素人探偵と書きましたが、本当に素人探偵です。だって今まで探偵経験ゼロ! 本当に素人です。ある意味真の素人探偵!?
 
 
さて読んでみると……かなり無駄なところが無い、シンプルな作品です。まず出来る限り容疑者を排除しています。事件発生時点で容疑者はたった3人しかいません。マークとケイリーとまさかのギリンガムです。もちろんギリンガムの訳が無いので(フィルポッツみたいなことになってしまう)残るのはマークとケイリーです。そうなると……しかし……と捻っているのがミルン。どのように事件が起こったのかを突き止めるギリンガム……ミルンはもしかしたら犯人よりも「何故そうしたのか?」「あの時何があったのか?」を重きに置こうとした最初のミステリー作家かも!?
 
 
突っ込むところといえば本当にそのトリックは成り立つのか!? ですかね。だって……なんで死体を見た時に分からなかったのか……変じゃないですか? 日頃見ているはずなのに? またマークの性格にしてもベヴァリー1人だけに語らせても説得力が……そりゃベヴァリー良い人ですけど……そこもなぁ……館の招待客の何人かはほんの端役というのも残念です。とはいえ、ギリンガムとベヴァリーが一緒に歩き回って捜査したり、池に潜ったりして推理を組み立てるところは面白かったです。
 
 
「赤い館の秘密」でした(・∀・)/
次はちょっと前に話題になったミステリーを読んでみようと思います(*^o^*)/