イーデン・フィルポッツ No.11◇極悪人の肖像◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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4人の命を奪った稀代の極悪人はどんな顔をしているのか?

 
 

 
◇極悪人の肖像◇ -Portrait of a Scoundrel-
イーデン・フィルポッツ 熊木信太郎 訳
 
 
稀代の“極悪人”によって語られる犯罪物語。いかにして完全犯罪は成し遂げられたのか。名のみ知られたフィルポッツの未訳長編、待望の邦訳! 「プロバビリティーの犯罪をハッキリと取扱った倒叙探偵小説」(江戸川乱歩・評)
 
 
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広大な領地ファイアブレイスは準男爵家テンプル=フォーチュン家が治めている。その家は息子が3人。長男で現当主のハリー、次男ニコル、そしてわたし、三男アーウィンだ。しかしハリーは尊大な俗物でニコルも病弱ゆえの卑屈な俗物だ。いつしかアーウィンの胸中には「殺人」という恐ろしい企みが生まれた。
 
 
ファイアブレイスを手に入れるーーーアーウィンはまずハリーの一人息子と乳母を殺し、ハリーを自滅させる。次にニコルを診察ーーーと見せかけて余命いくばくもない身体にさせて自滅の船旅に促すが、なんとニコルは救出され、身体になんの異常もないことが分かってしまう。そこはなんとか誤診ということにしてみせたが、ニコルを救出した実業家の娘ジェラルディンと婚約してしまう。ニコルに結婚されたら困る。アーウィンはニコルを強盗に見せかけ殺害する。こちらの事件も迷宮入りし、アーウィンはかくしてファイアブレイスを手に入れたがーーー
 
 
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「極悪人の肖像」です(・∀・)
前回は怪奇小説風味でしたが、今回はがっつり推理小説ですミステリーです。それも倒叙ものです。老いた犯人がいかに計画を練り、過去の「完全犯罪」をいかに成し遂げたかを回想するスタイルです。
 
 
フィルポッツの犯人像は型があります。つまり過去にもアーウィンみたいな殺人者がいたのです。わたしは彼らをたびたび「こいつ怖い。狂ってる」と恐怖しました。あの話もあの話もやろうと思えば倒叙ものにできたのでは……
 
 
さっきから倒叙もの倒叙ものと言っていますが、この作品は探偵も出てこないし、結末が従来の推理小説のそれではないため、厳密には倒叙ものではないそうです。事実最後に行くにつれて全てを手に入れたが、決定的に独りになった男の運命小説とも言えます。前半と中盤は善人の面して裏で冷酷に殺人計画をたてるアーウィンにかなり恐怖しましたが、終盤の病に蝕まれ、全てを手に入れたも無意味だったことに気がついてしまった時の決定的な孤独感と静かな絶望感は忘れられない……
殺人って何かを手に入れるのに最悪な手段だと改めて思い知った次第でした←
 
 
「極悪人の肖像」でした(・∀・)/
次は久しぶりのデンマーク・ミステリーです(*^o^*)/~