偶然に長命を得た一族たちはどこへ向かうのか？
◇メトセラの子ら◇ -Methuselah's Children-
ロバート・A・ハインライン 矢野徹 訳
医学がどれほど発達しようと、人間にとって決して逃れられぬ運命－－死をまぬがれた人々がいた。しかも、その不死性は何ら意図的なものではない。死をもたらすと同じように運命が彼らから死をとりあげ、不死の遺伝子を与えたのだ。だが、ひとたびそうした長命族の存在が普通人に知られたとき、全世界はねたみと憎悪のるつぼと化した。そして、長命族は対立を避ける唯一の道、大宇宙への恒星間飛行へと旅立った！
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長生きの男女が何代にも渡って血を繋げた結果、死の遺伝子が消え、代わりに長命の遺伝子が与えられ、長く生きる人たちが生まれた。それが長命族の財団ハワード・ファミリーだ。彼らは100歳、150歳と生き、しかも老醜を晒さず、若さを保つのだ。
設立当初は狂乱の時代だったが、今は自由の時代だ。今まで長命族の存在を秘匿していたが、今なら大丈夫かもしれないーーー
その考えは甘かった。短命族の普通の人たちは自分たちよりも遥かに豊かに人生を享受できる長命族を妬み、憎悪した。遺伝子だけで長寿などあり得ない。何か秘密があるはずだ。そう考えた短命族は顔が分かっているハワード・ファミリーのメンバーを次々と拘留し始めた。
もう地球に長命族の居場所はない。ハワード・ファミリーの最高齢(213歳)ラザルス・ロングは対立を避け、かつ全員が生き延びるために大宇宙に旅立つことを決める。ハワード・ファミリーはーーー行政長官のフォードも一緒にーーー遠く遠く、永住できる惑星を目指すが……
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「メトセラの子ら」です(・∀・)
実はこの作品、かなり前から知っていて、読むのを楽しみにしていました。
というわけで「メトセラの子ら」です。長生きを切望した男の野心から生まれた長命族たちの流浪の物語です。
長命族というから「実は先祖は異星人だった」云々を想像してしましたが、長生きできる、という点を除けば彼ら、普通の地球人なんですよね。うわー……確かにこれは憎まれる。だって長生きだから人生経験豊富だし、頭も良いし、時間かけて財産も築けるし、何よりなんでもできる！ そんな長命族を、あっという間に死んでしまい、成熟するにも時間がかかる短命族を決定的に公私共々締め出すことは容易であってーーーしかも長命族はなんとなく短命族を下に見ているところがあるし(「羨ましい」という感じは上から目線だと思う)、相容れないわなぁ……
本書はそんな長命族が永住できる場所を求める話ですが、意外に早い段階で宇宙に飛び出すことに驚きました。地球でもっと奮闘するのかと思っていました。あくまでもわたしの見解ですが、アシモフだったら多分そうしたと思うし、クラークだったらラザルスとフォードを中心に両者が分かり合える策を模索したと思う。長命族も短命族もお互いを理解しあえないとハナから決めてかかっていたし、そこが残念でした。しかも最後は色々すっ飛ばしているし、それでいいのか。
同時に183歳という長命族の中でも比較的長く生きている長老女性メアリーを通して長生きできることの意義とは？ を問いかけています。平均寿命がどんどん伸びている今日、この問いは他人事ではないでしょう。それどころか今世紀中に「メトセラの子ら」生まれそうだ……というかメアリーの最期が衝撃でした。それってある種の「安楽死」？
本書は「月を売った男」以来の〈未来史〉シリーズでしたが、なんとラザルスを主人公にした〈未来史〉作ごあることが判明しました。なんてこった！ エピローグにはハインラインらしく「とりあえず今はなんとかなったけど、まだまだこれからだ」感満載だったのでラザルスの生きる姿を見られることは嬉しいです。ラザルスが登った樹の上で何を見、何と出逢うのか楽しみです。
「メトセラの子ら」でした(･∀･)/
次は名探偵エミールの2作目です(*^o^*)/~