アーナルデュル・インドリダソン No.1◇湿地◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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突発的で、杜撰で不器用。そんな典型的なアイスランドの殺人はこの上なく悍ましくて残酷な真実へ導くーーー

 
 
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◇湿地◇ -Myrin-
アーナルデュル・インドリダソン 柳沢由実子 訳
 
 
北の湿地にある建物の半地下の部屋で、老人の死体が発見された。金品が盗まれた形跡はなく、突発的な犯行であるかに見えた。だが、現場に残された三つの言葉のメッセージが事件の様相を変えた。次第に明らかになる被害者の隠された過去。衝撃の犯人、そして肺腑をえぐる真相。シリーズは世界四十カ国で紹介され七百万部突破。グラスキー賞を2年連続受賞、CWAゴールドダガー受賞。いま最も注目される北欧の巨人、ついに日本上陸。
 
 
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レイキャビクの半地下アパートで老人が殺された。金品が盗まれた形跡はなく、凶器は灰皿。杜撰なアイスランド的殺人事件のように見えた。ーーー3つの言葉が残されたメモがなければ。
 
 
それに墓の写真が残されていた。墓の主はウイドルという名前の女の子で40年前に4歳で死んでいた。なぜ、独り暮らしの老人の家にそんな写真が?
 
 
事件を捜査するエーレンデュルのところにかつての指導官マリオンから電話が入った。殺された男ホルベルクの素性が判明した。ホルベルクは女性暴行犯だった。ウイドルはその暴行の末に産まれた子だったのだ。暴行された女性コルブルンはウイドルを愛したが、ウイドルは突然死んでしまった……
 
 
ホルベルクはなんらかの遺伝子疾患を持っていた? ウイドルを再度解剖に回すが、なぜか脳だけなかった。なぜ? その一方でホルベルクに暴行された女性が他にいるのではないかとエーレンデュルたちは動き始める。
 
 
ホルベルクの忌まわしい過去と遺伝子疾患。狭いアイスランドでの血縁と遺伝子がエーレンデュルたちをこの上なく残酷な真実に導く!
 
 
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「湿地」です(・∀・)
 
 
はい、ついに来ました。まだアガサ・クリスティーを読んでまだ間もない頃、とてつもなく惹かれていたアイスランド・ミステリーだーと安直に手に取った結果、大トラウマを植え付けた北欧ミステリーがついに本ブログに上陸を果たしました。
 
 
いやー、あの日のことは今でも覚えてます。3年前の良い天気の小春日和。図書館で読んだら一気に自分の周りの空気だけ、温度がどんどん下がって、目をそらしたくてもそらせなくて、読むのをやめることもできず、気がついたら呆然としましたよ。
 
 
この頃ーーー今でもそうですがーーーアイスランドにものすごく惹かれていたんです。その熱ったらすごくて、「自分もアイスランドを舞台にしたミステリーを描きたい!」はもちろんのこと、「もはや住みたい!」と思うほど。アイスランドには男女平等、世界1位、治安も良い、幸せ度No.1のイメージしかなかったため「湿地」のダメージは計り知れず、北欧ミステリーから遠ざかったわけです。北欧ミステリーが社会派ミステリーという重いジャンルに属すると知ったのはそれから間もなくでした。
 
 
あれから3年。それなりにミステリーを読んでいる。SFだって読んでいるし、文豪作品も読んでいる。細々と北欧ミステリーにも関わった。そろそろトラウマを克服しよう。今、ちょうどアイスランドを舞台にミステリー書いているし、実地取材だと思えば良い。それに9月にエーレンデュルシリーズの4巻が出る。
 
 
今のわたしはあの頃のわたしとは違う! 
 
 
……と意気込んで読みました。やっぱりエグい。エグすぎる。
どうしてホルベルクだったのか。どうして非情な悪人のホルベルクがそれを持って生を受けてしまったのか。
読んでいてこれしか出ない! もうホルベルクの被害者の運命が悲し過ぎて涙すら出ない。特にコルブルンの運命が悲惨すぎる。40年前のアイスランドって男女平等じゃなかったんだな……警察の対応が酷すぎる。
 
 
狭いアイスランドでは見知らぬ他人ですら血縁者である可能性があります。その血と遺伝という逃れられないものに殺されたウイドルも犯人も悲し過ぎます。
 
 
本書は性暴力のシーンが非常にリアルに描かれています。当時これが堪えたのが北欧ミステリーを敬遠した1番の原因でしたが、解説のアーナルデュル自身の説明を読むと理由に納得します。「魂の殺人であり、残酷過ぎるからこそ、なかったことにされてしまうことは終わりにしなければならない。故に表現軽減は許されない。全て描き切る」 
これは全ての男性ーーーを通り越して全ての人類が肝に銘じることだと思います。
 
 
また主人公のエーレンデュルも複雑でして、都会風になれない、米国風を嫌う昔のアイスランド人。私生活も悲惨で妻とは20年前に離婚し、子どもとの関係を断ち切られ、やっと会えたと思ったら息子のシンドリ=スナイルはアルコール問題で少年更生施設に度々世話になり、娘のエヴァ=リンドは薬物中毒を抱え、父親の分からない子どもを妊娠中。おいおい、アイスランドの家庭って……つくづく北欧の家庭に夢を持てなくなってきた……
 
 
とはいえ、事件を調査する上で惨めで辛いこともしなければならないエーレンデュルは気持ちを吐露するにつれ、エヴァ=リンドとはだんだん蟠りが解けていきます。エヴァがエーレンデュルを抱きしめるシーンと「病院行ってよ、遅いんだから!」と怒るシーンと最後の名付けのシーンは泣きそうになります。
 
 
次は息子も出ますかね。というかエーレンデュルをひたすら憎悪する些かアメリカナイズな妻は一体何者なんでしょうか。まさか稀に見る悪妻なのか!?
 
 
トラウマを克服した……とは言い切れませんが、この勢いで9月にエーレンデュルシリーズの4巻が出る&アイスランドを舞台にしたミステリーを書いて出すことに決めたことを記念して、アイスランド・ミステリー特集を「文豪ストレイドッグス制覇計画」と交互に実施しようかと思います。しばらくズーンと重くなるかもしれません← 
あとこれを機にニックネームを変えることにしました。詳しくはプロフィールをご覧ください。
 
 
「湿地」でした(・∀・)/
次は久しぶりのマーロウです(*^o^*)/~