エジプトに送る放電管を乗せた輸送列車が狙われた!? 英国に潜むドイツスパイを一網打尽にせよ!
◇列車の死◇ -Death of a Train-
F・W・クロフツ 高橋豊 訳
第二次大戦中期、ドイツ軍の猛攻撃により英国軍は後退を余儀なくされていた。英国政府は緊急閣議を開き、急遽、極秘の物資輸送を決定した。ところが、その輸送列車のわずかな故障によって先行した旅客列車が轟音と共に転覆したのだ! 破壊工作の跡から輸送計画の漏洩に気づいた政府は、ロンドン警視庁に捜査を命じた。フレンチ警部はスパイ組織壊滅の密命をを受けたが、巧妙を極めた犯罪の隠蔽工作の前に捜査は一進一退の状態だった。突破口を開くべくフレンチは一計を案じたが……巨匠が該博な鉄道知識を駆使して描く本格推理巨編!
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第二次世界大戦中の英国。ドイツ軍に苦戦する英国軍と政府は極秘の物質輸送を決めた。あらゆる装備に欠かせない放電管を海岸地帯に送ると見せかけて実はエジプトにいる英国軍のところに送るという超極秘作戦だ。その列車はレンディングを経てプリマスに行くーーーはずだった。
超極秘輸送列車は小さな故障で後の列車に譲らざるを得なくなったのだが、その譲られた列車がいきなり転覆してしまったのだ!
現場は破壊工作の跡が残されていた。情報が漏れた!? 情報漏えいは英国内にドイツスパイがいることを指す。早急に対処しなければならない。しかしおおっぴらに動いてはスパイたちに気づかれてしまう。そこで運輸省の役人失踪事件をでっち上げ、それを調査する名目で警察官を派遣することに。
今や英国全体の命運はフレンチ警部にかかっていた!
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「列車の死」です(・∀・)
前回に引き続き、戦時中の話です。ただし話の焦点は殺人ではありません。スパイの特定と捕獲です。主要人物は誰も死なないのでひたすら破壊された(=殺された)列車の殺人犯=スパイを追い続けます。
何これ、戦争小説とスパイ小説!?
前半は超極秘の作戦を成功させるために上は政府、下は件の輸送列車を走らせる鉄道会社の機関士らまで自分の使命を全うしようとする姿が描かれ、後半は英国軍を助ける任務を背負っていた列車の死を解明しようと殺人者たるスパイらを一網打尽にすべく奔走するフレンチ警部らの姿が描かれています。
前半は前線ではないけど裏方で欠かせない働きをする補給部隊の奮闘を描いている戦争小説のようだし、後半はスパイを相手に工作を暴くスパイ小説のようだし、推理小説を読んでいるのに戦争小説とスパイ小説と3つ楽しめます。
国の一大事にロンドン警視庁も動きます。しかし大っぴらには動けないという大きな足枷があります。人柄が良いフレンチ警部は重責もあってなかなか苦戦します。特に最後、自身の命かスパイの一網打尽か強烈なジレンマに襲われますが、その苦労は報われました。昇進おめでとうございます、フレンチ警視。
スパイたちの正体ですが、あー、そうくるかぁ……とちょっとがっかりしました。運輸省や軍需省は有り得ないし、鉄道会社に裏切り者がいると思っていたので……となるとその人物は売国奴ということになってしまい、英国としてはその存在を是認したくはないよね……でもそれならさぁ……いや、これ言ったらネタバレだよぉ。
「列車の死」でした(・∀・)/
次はラーマ! ついに! 最終作!