アン・ペリー No.1◇見知らぬ顔◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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記憶のない自分には鏡に映った自分の顔も見知らぬ誰かーーー事件の調査と失う前の自分を手探りで探るモンク!

 
 
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◇見知らぬ顔◇ -The Face of a Stianger-
アン・ペリー 吉澤康子 訳
 
 
夢も見ない眠りから覚めたとき、彼は病院の寝台に横たわり、すべての記憶を喪っていた。自分がウィリアム・モンクという名の刑事だと知らされた彼は、病状を隠して職場に復帰したが、そこで割りふられたのは、万全の態勢で臨んでさえ解決困難と思わせる難解な殺人事件だった……! 十九世紀ロンドンに孤立無援の警部が展開する、自分探しと真相究明の旅。時代ミステリの決定版。
 
 
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目が覚めた時、自分にはなにもなかった。どうして自分がこんな病院で寝ているのか、何があって病院に担ぎ込まれたのか、それどころか自分が何者なのかすら分からなかった。覚えているのは目が覚めた後の記憶だけ。
 
 
医者の言葉から自分は馬車の転覆の事故に遭い、ウィリアム・モンクという名前で、ランコーンという名の警察官が自分を見知っているらしいと聞く。ランコーンの言葉から自分はお尋ね者ではなく、警察官であると感じ、記憶喪失を隠して職場に復帰する。
 
 
早速割り振られたのはクリミア戦争帰りの傷痍軍人殺害事件。新しい部下エヴァンと2人で取り掛かるが、上流階級のしがらみが絡んで捜査は難航する。さらに記憶を失う前の自分が野心が強く、上司のランコーンでさえ陥れかねない嫌な男であることに薄々気づいてしまう。
 
 
モンクが事件を調査するごとに記憶も朧げながらも思い出していく。モンクは事故に遭う直前まで手がけた事件があったことに気がつく。その事件が今回の事件に何らかの関わりがあることに気がついた時ーーー
 
 
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「見知らぬ顔」です(・∀・)
コミック「エマ」にどハマりした時に「ヴィクトリア王朝時代を舞台にしたミステリはないのかー!?」と検索して探したのがこのウィリアム・モンクシリーズです。それからずーっと気になって1990年に出版された本書を神保町を梯子した末についに見つけました。捜索期間約1年。いやー、あると信じたもん勝ちですね←
 
 
作者、アン・ペリーは最初は歴史作家でしたがなかなか認められず、時代ミステリで成功した女流作家です。あと少女時代にニュージーランドで友人と2人で殺人を犯したという衝撃的な過去を持っています。それを映画化した「乙女の祈り」は未聴ですが、それなりに高評価だったのでしょうかね。過去を悔やみながらも、しっかりと前を向いているその姿は強く見えます。というかすごいな。国を出たことが大きいのか。
 
 
さて、本書行きましょう。
本書は歴史ミステリーーーというか時代ミステリというジャンルに入ります。ディクスン・カーも書いていますね。懐かしい(笑) 
カー先生と違うのはこちらはその時代に生きた人間を主人公にしていることです。タイムスリップとか悪魔と契約とかなしで← ヴィクトリア王朝時代の慣習、思想を魂に刻み込んだ人たちが登場します。
クリミア戦争直後の雰囲気が良く出ています。貴族・上流階級(ジェントリ)とそれ以外の空気、会話や仕草がリアルです。まんま「ダウントン・アビー」の世界です。ちょっと時期違うけど。バイオレットおばあさまはこんな時代に伯爵家に嫁いだんだろうな。
 
 
ヴィクトリア王朝の1人、ウィリアム・モンク警部。
記憶を全て失った警察官です。主人公の中でも変わり種です。
まず事件云々以前に療養しろよ! って感じですが、この時代、働けなくなるとまっすぐ救貧院行き。文字だけ見ると美徳らしく聞こえますが、実態はかなり悲惨だったようで、救貧院に行きたくないばかりに罪を犯す人もいたぐらいです。モンクも救貧院行きになるぐらいならと記憶喪失を隠して職場復帰。事件調査を行います。
 
 
事件調査と自分探しの旅です。
モンクはクリミア戦争帰りの軍人殺害事件を手がけることになります。その調査をしながら自分の記憶を徐々に思い出し、自分が何者なのかに気付くことになります。自分がいかに横柄な男だったのかーーーモンクは打ちのめされます。でも今の自分はあまりにも何も持っていないーーー記憶を失う前の自分と記憶を失った後の自分。あまりにもギャップが大き過ぎます。本書以降記憶は戻るんでしょうか。そして戻った後、モンクはどうなるんでしょう。サイドストーリーが魅力的です。
 
 
そして推理小説としても良くできています。
記憶を失う前の事件と失った後の事件ーーー所謂「クリミア戦争帰り軍人殺害事件」がリンクする様が実にいい。「まさか……まさか!? えっ!?」と手に汗を握らずにはいられません。いやー被害者に騙されました← 一時、「嘘だろ!?」と思いましたが。モンクー!
 
 
そして、ナイチンゲールと共に看護師として働いた元看護師のへスター。記憶を失う前のモンクが手がけた最後の事件の関係者。モンクとは初対面最悪、会うごとに印象はーーー微々ですがーーー改善されますが、竹を割ったような様子は変わりません。頭は良いのでモンクのいい討論相手になりそうです。恋愛フラグは両方によって折られました← 次巻出ると良いなー。
 
 
このモンクシリーズは今、4巻まで翻訳されています。シリーズそのものはかなり出ているので翻訳を気長に待とうと思います←
 
 
「見知らぬ顔」でした(・∀・)/
次もモンク警部登場です(*^o^*)/~