名前も職業も経歴も正体は分からないその老人、事件を語り、推理を説く。
◇隅の老人の事件簿◇ -The Casebook of the Old Man in the Corner-
バロネス・オルツィ 深町眞理子 訳
隅の老人は、推理小説史上でも類稀な、名前のない探偵である。本名が判らないだけでなく、経歴も正体もいっさい不明の人物だった。ノーフォーク街の《ABCショップ》でチーズケーキをほおばり、ミルクをすすっている痩せこけたこの老人は、紐の切れ端を結んだりほぐしたりしながら、女性記者ポリー・バートン相手に得意の推理を語って聞かせる。 その代表作十三編を収録した。
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エラリーかブラウン神父か!? と見せかけてまさかの隅の老人です←
すみません、先に隅の老人をお招きしていたことを忘れてました←
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1.フェンチャーチ街の謎
(The Fenchurch Street Mystery)
……ABCショップで新聞を読んでいた新聞記者ポリー・バートンはいきなり謎の老人に絡まれる。ポリーがいま新聞で読んでいたフェンチャーチ街事件で意見があるらしい。これがポリーと謎の老人ーーー隅の老人との出会いだった。
2.地下鉄の怪事件
(The Mysterious Death of the Unerground Railway)
……隅の老人はポリーにある男を観察させた後、未解決に終わった地下鉄での怪事件の話をする。おかけでポリーはボーイフレンドとの約束をすっぽかすことになるのだ。
3.ミス・エリオット事件
(The Case of Miss Elliott)
……人々の尊敬を集め、聡明なエリオット女医が遺体で発見された。自殺か、他殺か? まもなくエリオット女医に好意を持っていた男が容疑者となるが……
4.ダートムア・テラスの悲劇
(Tragedy in Dartmoor Terrace)
……死んだ金持ちの老婦人、ユール夫人は実の息子を勘当する代わりに養子を迎え、その養子に遺産を相続させるつもりだった。死の直前に息子夫人らしき女性が尋ねてきたり、容疑は息子にかかる。
5.ペブマーシュ殺し
(The Murder of Miss Pebmarsh)
……死んだペブマーシュ老嬢は姪のパミラととある手紙のことで確執があった。果たして彼女は犯人だと告発され、どんどん不利な立場に立たされていく。彼女は本当に犯人なのか?
6.リッスン・グローヴの謎
(The Lisson Grove Mystery)
……隅の老人がいきなり警察裁判所に行くと言い出した。前々からリッスン・グローヴの怪事件の行く末に興味を示していたのだ。表面的にしか知らないポリーはまたも隅の老人の講義を傾聴する。
7.トレマーン事件
(The Tremarn Case)
……フランスで耳の下から下まで真一文字に刺された死体が発見された。死体の身元は分からず、事件は迷宮入りされたかと思われたが、英国でも同じ死体が発見された。事件の始まりはトレマーン伯爵家にあった。
8.商船〈アルテミス〉号の危難
(The Fate of the "Artemis")
……日露戦争時、マーカム大佐は<アルミテス>号のジャットランド船長に秘密の書類を手渡す任務を任された。ところが、書類を渡す前日、マーカム大佐が襲われ、書類が入っていた宝石箱ごと盗まれてしまった。
9.コリーニ伯爵の失踪
(The Disappearance of Count Collini)
……コリーニ伯爵が失踪した。それこそ海の底に呑まれてしまったかのように。しかし隅の老人は完全に失踪するのは不可能だと断定する。1人の女を愛した、2人の男。失踪の真相とは?
10.エアシャムの惨劇
(The Aysham Mystery)
……ニュートン爺さんと呼ばれる老人が殺された。娘のメアリはかつて男と手に手を取って出奔した過去があった。ニュートン爺さんは娘の相手から慰謝料を分取るつもりだったと見えるが?
11.《バーンズデール荘園》の悲劇
(The Tragedy of Barnsdale Manor)
……《バーンズデール荘》で金持ちのマダム・ケナールが殺された。容疑はその甥夫人に向けられた。バーンズデール卿夫人は賭け事が好きで、その前日、ひどく負けたのだ。果たして、真相は?
12.リージェント・パークの殺人
(The Regent's Park Murder)
……リージェント・パークの広場で殺人があった。その被害者コーエンは賭博クラブ《ヘアウッド・クラブ》の会員だった。やがて容疑者に彼に1500ポンドもの借りがあるアシュリー青年が指されるが。
13.隅の老人最後の事件
(The Mysterious Death in Percy Street)
……ポリーは隅の老人と事件の話をするのが楽しみになってきた。しかし肝心の隅の老人地震のことは何も分からない。ポリーは今回、パーシイ街のオウエン夫人殺害事件の話を振るがーーー
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全13編です。
ブラウン神父かエラリーか!? ときてまさかのそのどちらでもないと来て、詐欺られた感が半端ないですが、この隅の老人は推理小説に大きく名を遺した探偵の1人です。
なぜならこの人は名前も職業も経歴も、何もかもが分からないからです。
分かっているのはノーフォーク街の通称《ABCショップ》でミルクとチーズケーキを食べて、紐に難しい結び目を作ったり、解いたりする癖を持っているだけ。
この何もかもがUn knowーーー不明だらけなこの人の正体に読者は好奇心と推理心を膨らませ、なお、離しません。
もう一点は彼は最初期の安楽椅子探偵であるということです。
安楽椅子探偵とは椅子に座って、話を聞くだけで、または机上の理論だけで推理する探偵のことです。定義から見ると確かに隅の老人は安楽椅子探偵かもしれません。
ですが、この老人はシャーロック・ホームズのライバルと言われる1人なので、
彼も天才的に頭が冴えている超人の位置にいるかもしれません。
さて、隅の老人はミルクとチーズケーキと紐を傍らにポリーという女性記者に推理講義をします。
事件そのものは単純ですが、文が読みやすいおかげか(笑)、すんなり頭に入ってきます。わたしは2、4、8、11が好きです(°∀°)b
聞き役? ポリーは女性記者で、職業柄、事件に対しては大いに関心を持っています。当然、隅の老人の推理講義には興味津々で、時々デートの約束をすっぽかします(苦笑)
そして、あともう1点、突筆しなければいけないことが本当はあるんです。これはかなり恐ろしいことで、ポリーもとうとう口に出すことができませんでした。
隅の老人その人に大いに関わりがある、すごい事実です。
これは隅の老人の正体も仮説がたてることができるし、この結末は後々に影響を与えました。本当です。
一気に怖くなってしまったので←、作者の話をしましょう。
作者はバロネス・オルツィと言いまして、ハンガリー出身の貴族で後に英国に帰化した女性です。
バロネスとは女男爵のことで、れっきとした貴族でした。
バロネス・オルツィは紅はこべで名を馳せました。「スカーレット・ピンパーネル」です。スカピン。このシリーズはかなり人気で続編、先祖の話、子孫の話までできたそうです。
ミュージカルも小説も両方、拝見しましたが、面白かったです。「ゼンダ城の虜」と同じ味がします←
「隅の老人」です(・∀・)/
次回は! エラリーです!(*^o^*)/~