後輩警官は何故渦中のバスの中に居たのかーーー地道な聞き込みが始まる!
◇笑う警官◇ -Den Skrattande Polisen-
マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー 柳沢由美子 訳
市バスで起きた大量殺人事件。被害者の中には殺人課の刑事が。若き刑事はなぜバスに乗っていたのか? 唯一の生き証人は死亡、刑事マルティン・ベックらによる、被害者を巡る地道な聞き込み捜査が始まる――。
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11月3日の夜、外は雨。ストックホルムはベトナム戦争反対のデモ隊が闊歩している。それでも殺人課のマルティン・ベックと気心知れた相棒コルベリはなんとチェスを打つ時間があるぐらい暇があった。……しかし一方では殺人事件が起こっていた。それも8人が死ぬ大量殺人だ。
そのバスを見つけたのはーーーというよりもそのバスに最初に入ったのは無線パトロール警官のクリスチャンソンとクヴァント。そのバスは殺人現場だった。運転手を含む8人が銃に撃たれて死んでいた。しかも犠牲者の中には警察官が。オーケ・ステンストルム。まだ新人だったがベックやコルベリと同じ殺人課の警察官だった。
何故ステンストルムがこのバスに? 恋人オーサと住んでいる家とは違う方面に行くバスに? しかもステンストルムは拳銃を携帯していた。なんらかの目的があってこのバスに乗った? 乗客の誰が、その人物だ? 乗客全員に用があったとは思えない。犯人は乗客の1人の為に他の7人を巻き添えにしたのだ。
乗客には生き残りが居たが、謎の言葉を残して間もなく死亡。コルベリはオーサと話し、ステンストルムが独断行動を取っていたことを知る。一方で、死亡者の中には1人、顔の損傷が激しく身元が分からない男が。ストックホルム最初の大量殺人事件の真相は同時に思わぬ副産物を手に入れたーーー!?
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「笑う警官」です(・∀・)
題名とは裏腹に全く笑わない警官マルティン・ベックが主人公の4作目。この作品はかなり評価が高く、72年度のエドガー賞長編部門を受賞し、日本でもこの作品が最初に紹介されブームを巻き起こしました。
1960年代〜1970年代という冷戦激動期に起こった大量殺人を捜査すると同時に犠牲者になってしまった仲間の謎と秘密を追いかけます。
今までよく知らなかった後輩、彼は日頃何を考えて職務を遂行していたのか? 彼は何をそんなにあくせくと働いていたのか? ベックの相棒コルベリとオーサの会話が印象的でした。
マルティン・ベックシリーズはベック以外の警察官も沢山登場しますが今回はそれぞれの活躍が際立っています。口の悪いラーソン氏はいけ好かないけど最後の言葉には犯罪が多発するスウェーデンと世界全体に対する警告か。
本書は外国人が多くなり犯罪が多発多様化するスウェーデンに対する警鐘、犯罪とは犯罪者とは? が、警察官と容疑者への地道な聞き込みの中で多く問われたところがエドガー賞にも通じた理由なのかも知れない、と思いました。
「笑う警官」でした(・∀・)/
こんなタフな男、見たことがないーーー(*^o^*)
