~2話~ 花澤 恵南
左隣の席の人の顔を見たとたん、私は何とも言えないような感情を覚えた。まるで、自分が海の中にいるようで、息が苦しかった。目の前が白くかすむ。
「・・・杉野!」
その人が先生に呼ばれた。あぁ、杉野って言うんだ・・・。
ぼんやりしていると杉野君がこっちを向いた。目があった。いつの間にか杉野君を見入ってしまったのか、と恥ずかしくなったが、正面から顔を見た時自分の口からこぼれた言葉に驚いた。
「・・・、お兄ちゃん・・・」
~3話~
『お兄ちゃん?』
頭の中で、右隣の女の子が口から漏らした言葉が響いている。先生が何か言って曖昧に返事をし座った後もその言葉が頭をはんすうする。
なんで『お兄ちゃん』なんだ・・・?
俺は『お兄ちゃん』って言葉ほど、あの思い出がよみがえることはないと思う。
あの思い出・・・
今もあの色がよみがえる。海の青より深く、夜の空より淡い。あの毛月色に包まれて、俺は・・・。
「がくん」、肩をたたかれる。後ろを振り向くと、顔の整った男子が「よっ」と言った。
「おっ、よろしく」
俺は相手の目を見ていった。
「タクヤ」
一瞬誰が言った言葉か理解できなかった。頭の上に?が浮かんでいたのだろう。男子が俺の目を見返す。
「鈴木拓也」
そいつがもう1度言った。あぁ、タクヤってこいつの名前なんだ。
「俺は杉野奏。タクヤって呼んでいい?」
教室が俺らと同じ様に自己紹介し合い、ざわざわしている中で俺は少し大きめの声で言う。
「いいよ。じゃあカナデってよぶわー」
タクヤもいきなりタメ。ここで敬語なんか使っちゃいけない。お互いそのことを暗黙のルールで理解している。俺らは似た者同士かもしれない。
良い友達になりそうだな、タクヤ!
という気持ちを込めて俺は二カッと笑った。
~続く~
はい!
今回は2話と3話をお送りいたしましたが、どうでしょうか?
続きが気になりますね~♪
次の4話からは、またまた新しい登場人物が登場します!!
恵南がつぶやいた『お兄ちゃん』とは!そして拓也と恵南の関係とは!?
次回もお楽しみに☆
by お月見&お花見