「薔薇王の葬列」

著 菅野文


「月刊プリンセス」(秋田書店)にて連載中の歴史・ファンタジー漫画。

現在5巻まで発売されています。

シェイクスピアの史劇「ヘンリー6世」と「リチャード三世」を原案として描かれています。



ヨーク家とランカスター家が王位を巡って争う薔薇戦争。

ヨーク公爵の3男であるリチャードは、生まれつき両性具有だった。

そのため、母親から疎まれて育ったリチャードは、自分を愛してくれた父親を深く愛し、父が王になる事を望んでいた。

また、自身が王である事に嫌気がさし、穏やかに暮らしたいと願っていたランカスター家の王ヘンリーは、リチャードの父とある約束を取り交わす。


以下、ネタバレ含みます。

























現王であるランカスター家のヘンリーは、絵に描いたような(実際そうなんですが)オトメン。

穏やかで争い事が嫌いで、権力を維持するよりも羊を飼って静かに暮らしたいと考えています。

しかし、ヘンリーの妻マーガレットは、夫の権力に執着し、何とか王位を守ろうと色々画策するのです。


色々あって、次期王の座をヨーク家に奪われてしまったマーガレットは、リチャードの父を殺してしまいます。

最愛の父を失ったリチャードは、ランカスター家への憎しみを募らせるのですが、そんな中、そうとは知らずにヘンリーと出会い、二人は互いに惹かれ合っていきます。


また、父の死により王位を継いだヨーク家の長男エドワードは、その無類の女好きゆえに、ランカスター派の女エリザベスを妻に迎え、長年の忠臣ウォリックの反感を買います。

エドワードは王にふさわしくないと判断したウォリックは、エドワードを王座から降ろそうと画策を始めるのです。


王位を巡って裏で色々駆け引きをしているのは、主にマーガレットとウォリック。

二人はヨーク家とランカスター家の人間でありながら、時に協力し、相手を利用しながら、色々暗躍します。

この話、権力の所在がわりと頻繁に変動するので、ちょっとややこしいのですが、とても面白いです。


絵も非常に上手い。

特に目を引くのが、主人公リチャードのヴィジュアルです。

美形なのですが、普通の美形ではなく、どこか不気味な感じのする美形。

いわゆる男装の麗人とはちょっと違う、かといって、可愛い系でもない、まさかの不気味系ヒロイン(両性具有なので厳密にはヒロインという書き方は適さないのかもしれませんが、少女漫画の主人公ということで、ここでは、ヒロインという書き方をしておきます)。

たしかに美形なんですが、ギラギラしてて、どこか不気味な雰囲気を持っている。

こういうビジュアルのヒロインは、よほど画力が自信がなければ描けないと思います。

一歩間違えれば、美形でなくなってしまう、かといって、ただ綺麗なだけでもダメ。そんなギリギリのところで絶妙なバランスを保っている。


個人的に好きなのは、ヘンリーの息子のエドワードですね。

リチャードの兄もエドワードというので、ちょっとややこしいのですが、ヘンリーにもエドワードという名前の息子がいるのです。

このエドワードがひょんな事から、リチャードに恋をしてしまいます。

エドワードは父と違って比較的好戦的なのですが、父に負けず劣らずのオトメン。

恋するピュアな中学生男子のような少年です。

このエドワードが一生懸命リチャードの気を引こうとする様が、なんとも可愛い。すごく応援したくなります。


権力争いと恋愛模様が縦横に交錯する、絢爛豪華で贅沢な織物のような物語です。

とても面白いのでおすすめします。


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