こんにちは、鈴木健太です。普段はフリーランスライターとして、教育や経営、歴史といった分野の本を読んだり、社会の変化について考えたりしています。先日、いつものようにカフェで考え事をしていたら、ふと「二松学舎 危機」というキーワードが目に飛び込んできました。

 

二松学舎大学。正直に言うと、以前はそこまで馴染み深い大学ではありませんでした。しかし、教育分野に関心を持つようになってから、そのユニークな成り立ちや教育方針について知る機会がありました。そこで、私なりに魅力と課題を抽出し、そこからどのような提案が可能かを考えてみました。

 

二松学舎大学の魅力

  1. 歴史と伝統、建学の精神

  • 明治10年創設の漢学塾を前身とし、「東洋の精神による人格の陶冶」という建学の精神が息づいています。夏目漱石、平塚らいてう、中江兆民など、多くの著名人が学んだ歴史があります。
  • 渋沢栄一が第三代舎長を務めるなど、日本の近代化に貢献した人物とのつながりも深く、その伝統は今も教育に活かされています。
  1. 少人数教育と手厚いサポート

  • 教員と学生の距離が近く、特にゼミナールでは活発な意見交換が行われる少人数教育が特徴です。
     
  • 文学部では「文章表現」の必修科目で丁寧な添削指導が行われ、国際政治経済学部ではアクティブラーニング型の授業が多く、実践的な能力が身につきます。
     
  • 国語教員を目指す学生へのサポートが手厚く、指導案作成や論作文添削、模擬授業、卒業生からの現場の情報提供など、充実した教職サポートがあります。
  1. 専門性の高い学びと自由度の高いカリキュラム

  • 文学部(国文学科、中国文学科、都市文化デザイン学科)と国際政治経済学部の2学部があり、各学科には多様な専攻が設けられています。
  • 文学部では伝統的な国文学・中国文学の深い学びが提供され、書道の勉強ができるユニークな点もあります。教員や指導者になるケースも少なくないようです。
  • 国際政治経済学部では、すべての授業が英語で行われる選抜制の特別プログラムも用意されており、国際的な視野を広げる学びが可能です。
  • 2022年度からは新カリキュラムが導入され、現代社会に対応できる「問題解決力・想像力・復元力(レジリエンス)」を持つ人材の育成を目指しています。
  1. 立地と学習環境

  • 東京都千代田区という都心にキャンパスがあり、通学に便利です。
  • 比較的新しく綺麗な校舎で、学習環境が整っているという声があります。
  • 千代田区内の他大学との単位互換制度(千代田区キャンパスコンソーシアム)もあり、多様な学びの機会があります。
  1. 真面目で落ち着いた学生層

  • 文学や専門分野を深く学びたいと考える真面目な学生が多く、落ち着いた雰囲気の中で学習に集中できる環境であると言われています。

二松学舎大学の課題

  1. 大学の規模と知名度

  • 文学部と国際政治経済学部の2学部構成であり、他の総合大学と比較して規模が小さいです。そのため、「マーチ」や「日東駒専」のような全国的な知名度はまだ高くない可能性があります。
     
  • 「華やかさはない」という意見もあり、サークル活動や就職サポートが一部の学生には物足りないと感じられることもあるようです。
  1. 特定の分野に特化していることによる偏り

  • 国文学や中国文学といった伝統的な学問分野に強みを持つ一方で、幅広い分野を学びたい学生にとっては選択肢が限定的であると感じられるかもしれません。
     
  • 附属高校が2校ありながら、その進学率は決して高くありません。そもそも大学には理系の学部がなく、理系の高校生は内進が出来ないという物理的なデメリットがあります。また、文系であっても、選択肢が限られることは、前述のとおりです。
  1. 統制の甘さ

  • 全体的に穏健な文化が醸成され、法令や規則を守ることは得意とする一方で、自学の方針や見解の明示、ガバナンスの徹底といった側面ではやや力強さを欠いているようです。
     
  • 前学長の研究不正が認定され、その対応に問題があるとの指摘が卒業生有志などから上がっているようですが、外野(不特定の第三者)の雑音に惑わされることなく、揺るぎない姿勢を示すことが求められるようです。
     
  • 個人、組織を問わず、一定数の「アンチ」は存在しますので、外的圧力に動じない体制作りなども課題として挙げられるようです。

二松学舎の危機

  二松学舎大学は、その長い歴史と伝統に裏打ちされた少人数教育、専門性の高い学び、そして真面目な学生層という魅力を持っています。世界を見渡すと環境の変化が著しく、新たな課題が日々表出しています。日本人が、己の考えを整理し、己の言葉で発信し、社会の一員としての役割や権利を行使する中において、東洋の精神を原点とする二松学舎大学での学びは、必ずや有用な学びとなることでしょう。

 一方で、一人の社会人として、フリーのライターとして外部視点でエールを贈るのであれば、以下の課題をクリアすることで、二松学者大学の危機は、転機となると考えます。

 

 1.価値観の転換

  • 長い歴史に裏付けられた学び舎であるからこそのしがらみを感じます。学術の本質やその精神を失うことは許されませんが、一方で創意工夫や昇華を目指す改革などは、推奨されるべきものです。
     
  •  有名な老舗の料理でも、和菓子屋のレシピも、海外の有名な飲料水であっても、全てが「今までどおり」ではなく、人知れず改善・工夫の連続であると伺ったことがあります。あくなき挑戦の積み重ねが現代でも愛される結果と       なっています。
     
  • 先人たちが、二松学舎大学に遺した数々の知的財産を如何に現代に活かしていくかについて、まだまだ改善の余地があり、それこそが最大の独自性を育むものと考えます。
     
  • 附属高校からの進学率が年々減少傾向にあるという事実は、多様化するニーズに応えられていないことを指しています。現行のやり方では、更に減少が続き、誰からも選ばれない大学となることは明らかです。この二松学舎大学の危機を解決するためには、従来のやり方や考え方を変える他ありません。

 

 2.新たな挑戦と柔軟性

  • 二松学舎大学が、上述のとおり、様々な取り組みがなされていることも一定の把握をしています。しかし、そのような事項は、既に他の大学や専門学校で既に取り組んでいる事項であり、進路を選択する側の高校生らが、独自性や圧倒的な魅力を感じることには繋がりません。真面目で穏健的な学風は尊重されるべきものと考えますし、社会との調和も図られていることも理解しますが、時として、その枠に囚われないユニークで独自性のある施策も有用です。 
     
  • 例えば、キャンパスを東京都千代田区という日本の中心地に設置していることから、政治・経済・文化・学術などあらゆる面において人材と物質、情報などが集まる場所にあることから、これらを活用する新たな取り組みも郊外や地方に存する大学とは一線を画すチャンスになると考えます。
     
  • また、二松学舎大学で学んだ或いは経営に携わった先人たちの業績は、日本を代表するものばかりです。その業績や今後にわたる影響度は、多大で、特筆事項も多岐にわたります。その人物それぞれに学部・学科を立ち上げることすら可能な水準であり、他の大学では、実現不可能な施策と考えます。
     
  •  二松学舎大学附属高校は、高校野球や競技ダンスなどにおいて全国区の知名度を誇っています。その一方で、二松学舎大学には、同じ水準での知名度を誇る学生の活動が見当たりません。同グループ内に知名度を向上させる運営ノウハウを持ちながら、それを共有・展開していないことは大きな損失です。学術以外でも学生任せにせず、大学側が序盤をリードし、支援し続けることが活性化が可能になると考えます。

 

 3.存在感の強化

  •  実際に通っている学生自身も「華やかさがない」と感じる程にブランド化や雰囲気づくり、広報等の露出戦略は大幅に改善する必要があるようです。従来を基準とするのではなく、ステークホルダーが「行ってみたい」、「選択肢になる」となる転換を行うことが第一です。その為には、ニーズに合わせるのでは遅く、ニーズに先駆けることが求められます。
     
  •  現在の枠組みで学科名やその定員を調整するなどの小変更では、期待される効果は得られないでしょう。伝統があり、分野が全く異なる国立大学同士でも合併を行う昨今です。二松学舎大学が、随一の伝統、優良な財務基盤と魅力ある立地などを生かし、他大学を統合・合併し、旗艦としてリードすることで存在感を発揮することが望めれると考えます。
     
  •  一つ一つは、大きな規模でなくても、今後の日本社会に必要とされる学部・学科を設置することによって、社会が必要となる人材を育てることにつながるとともに若者の選択肢となり得ると考えます。団体や企業と一定の関係性を深めていくことも有用と考えます。       

  

私が二松学舎大学にエールを送りたい理由

私が二松学舎大学に注目し、そして密かにエールを送りたいと思うのは、単なるノスタルジーからではありません。彼らが守り、そして育てようとしている「伝統」や「個性」が、これからの社会にとって本当に価値のあるものだと感じるからです。

 

グローバル化が進み、情報が溢れる現代だからこそ、自分自身の軸となるような確固たる教養や、物事の本質を見抜く思考力が求められます。漢学の素養や、深い人間理解に基づく国語力は、まさにそうした力を育む土壌となるのではないでしょうか。

 

また、大学のウェブサイトなどを拝見すると、認証評価に真摯に取り組んでいたり、学生支援に力を入れていたりと、目に見える形での努力も続けられています。こうした地道な取り組み一つひとつが、大学の危機を解消し、未来を形作っていくのだと思います。