いや、裏切ったつもりはないのだけど、あのとき相手はそう思ったかもなぁ、みたいなやつね。いや、ちゃんと確認してないので本当のところはわからない。
40代の頃に一ヶ月ほどちらっっっとだけお付き合いした方がいた。なんというか、私としては軽い気持ちで。別れる前提があっての話。既婚者の方だったのでね。私はそもそも結婚願望が皆無だし。
別れるタイミングは私が決めていい、別れたら元の関係に戻るということで。
ところが、自分の母親に会わせたいから一緒に故郷へ行こうと言われたのだ。
え????なんで????
待って待って、なぜ私がお母様に面会を?
結婚しようなんて話してないし、だいたいあなた結婚してるし、なにがどうなって?いや、奥さまとあまりうまくいってないのも聞いてるし、いつか離婚しようと思ってるってのは聞いてたけど、のろけも聞きましたよ?
いったいこの人のなかでどんなストーリーが出来上がっているのか。私との話し合いなしで。
ーと思考停止するくらいに困惑し、私はそっけなく答えたのだ。
「行かないけど…。結婚考えてないし。
さらに言えば、もうお別れしてますけど」
そうなのだ。お別れした後の話なのだ。私は元の友人関係に戻ったつもりでいたのだ。
いろいろ突っ込みどころはある。数数のそれは置いといても、結婚という人生における大きなイベントが私の介入なしに展開されていたことに驚いた、が、彼は彼で呆気にとられていた。
私は知らなかったが、その人のなかでは盛り上がっていたのだ。私がそんな返事をしたことに驚いていたし、ショックを受けていた。
彼は私が同じ気持ちだと思い込んでいた。
一緒に生きていくパートナーがいると、母親に紹介して安心させたかったらしい。
おそらく、裏切られたような感覚を持っただろうと思うのだ。少なくとも期待は見事に裏切った。
と、まぁ、そんなことをふと思い出して、やっぱり解せんなと思いつつ、これも母との関係の焼き増しのはずだから、関連するものがあったはず。
母は人の気持ちを察することができないので、実のところてんこもりなのだが、一番近いのはどれだろうかと。
ああ、と思い出したのがこれ。
私が20代の頃だったろうか。
「あんた私の介護のとき有利になるから介護資格とるでしょ?」
「…とらないけど。」
「え…?」
この、私が大きく関わっているにも拘わらず、私が完全にスルーされているこの感じ。
これだ。たぶん幼い頃にもいろいろあった。
まぁ、概要だけわかればよい。
この、期待に反するであろう返事をしたときの、期待を裏切った小さな痛みを解放。
一応ここにある尊重されない感じとか、疎外感、寝耳に水の困惑あたりも解放。
コミュニケーションの不足を上書き。
自分の気持ちを素直に伝える許可。
相手がそれをどう受け取ってもよいという許可。
自分もどこかで勝手に思い込んで勝手に傷ついた、そんな自分にそれでよいと許可。
傷つく気持ちを解放。
ついでに全然勘違いしてたー!も解放。
こんなとこかなーーー。