首都高速都心環状線 C1 外回り


中速から超高速のコーナーが複雑に絡み合う


聳(そび)え立つ超高層のビルに囲まれ


東京 都心を周回する宙に浮いた天空のコース


道は継ぎ接ぎだらけで


継ぎ目の鉄板は走る者を疑心と恐怖心の壁で


否応(いやおう)にも阻もうとする


1Lapとて同じ状況は生まれない


一般車両はまるで障害物かのよう


ここで幾人の人生が奪われたのだろうか・・・


サーキット・峠・湾岸


全てのセオリーが通用しない


首都高とは・・・


今日はバイト・・・。ドーナツ屋さん


小さな町の小さなドーナツ屋でバイトをしていた。250ccのヤマハでいつものように夕方になると


店の前にヤマハを停めてバイトに行った。


町は小さくても活気に満ち溢れている。ドーナツ屋に来るカップルや大学生風の女の子や男の子。


みんな笑顔で幸せそうだった。


・・・でオレはと言うと。


表面は笑顔を振りまいてテンション高いし。でも顔を逸らした瞬間しらけ顔で。軽く Sigh ・・・。


偽りの体裁だけの鎧。


自分はどこへ行ったのか。


ちょっと格好良いと言うだけで、ちやほやされて。とっかえひっかえ女の子がドーナツ屋


へ来て遊びの誘い。


軽くOKしてバイトの終わる時間を教えている。


バイトの先輩が皮肉っぽく。


「100番目の女がカウンターでオマエを呼んでるぞ!」って・・・。


「ちッ皮肉野郎だな・・・ふんッま、いいか!」


胸の谷間が見え見えのミニスカートの女の子がこちらに手を振っている


「おぅ!どうした!今日も可愛いね・・・。スカートからパンツ見えてるよ!」なんて冗談いって


「相変わらずHだよね!」なんて言われて


「今日は○○ちゃんが友達と飲みだから遊ぼう」と彼氏居るのに誘いを掛けてくるこの子は


ただのお財布でしかない。(オレって最悪だぁ~)でも利害は一致してるし!


別に楽しくないけど、可愛い子だし。 金は持ってるし。何よりやっぱり女の子と話していると


何故か落ち着くし。オレって昔からそう!いつも女の子とばかり遊んでた。(決してカマじゃね~)


でもね。よこしまだけど、また誘ってくる都合のいい女の子とは、頻回に遊んでた。



ハァー・・・。どうしようもない奴ってオレの事かな・・・。



首都高速都心環状線C1

ここにたどり着いた時。マシンとの信頼関係は崩れて、ただ乗らされている・・・。

そんな不安と疑心の仲のマシンとオレの疎通はまるで、相互に投げ出されたナイフのように。
互いのインフォメーションを受け取る事が出来ない。

箱崎を過ぎ江戸橋を通り過ぎる。道が解らない・・・。

僅かにカント(傾斜角)がついているであろうコーナーは、普通に車のspeedにあわせては、あまりにも曲がり
過ぎる。

その事に気づくまで、一周14.2kmと言う異常に長いコースの環状線を2Lapほど周回してからだった。

何か違和感を感じるが「初めて走るコースだ。気にするな」と自分に言い聞かせ、無声の自問を払拭していた。

あまりにも時間を要したLapは、コースを外れないように走行するだけで精一杯だった。

環状線(C1)は1号線から7号線まであって、注意しながら走らないと何号線かへとコースを外れてしまう。

「何て解りずらいコースなんだ」

「でも・・・他の走り屋がいない」

C1内回り・・・

ぎこちない走りで、手探りなLap

「ダメだ。全くコースレイアウトが解んねぇ」

500周は必要かな!でもサーキットとは違い時間の制限もない。

才能なんて無い。ただ速く走りたいだけ。誰よりもコーナーを速く・・・



本当にコースアウトしないで、走るので精一杯で。

やっと、なんとか元の7号線に入れた。

「やれやれ!攻めるなんて、格好良い事考えててこれか!」

「ふんッざまぁ~ねぇや!」

There is such a day, too.

月は苦笑いしながら優しく送ってくれた。まるで宥(なだ)めるように見えない手で

僕の肩をそっと撫で下ろしたようにも感じた・・・情けねぇ~

小松川ランプでプルアウトした。

マシンを停めた。疲れた・・・

縁石にもたれタバコに火を点け。今日の首都高を振り返っていた。

少しガスった空気はひんやりとして、オレンジの街灯がガスった霧状の煙を映し出し。と同時に
静寂さをも映しだしていた。

「首都高・・・」

「ここのコースを熟知するまで、いったい何ヶ月。何年掛かるんだ」小さく呟いた。

路面は荒れている。鉄板の継ぎ目が走っている。カントの付いているコーナーと付いていないコーナー。

中速から超高速まで幅広いコーナーがあり、Up/Downがある。

日本のサーキットで似たようなレイアウトがないかと考えた。

自分でも知らぬ間に頭の中が首都高で満ちていた。

この感覚は初めてかも知れない。

何もかもがいままでの自分とは違う。この首都高に辿り着いた事で安心感さえ感じた。

無事にC1から帰ってこれた事の安心感じゃなくて、まるで幼子が母の心音を聞いて落ち着く

のと同じような安心感さ。そして

このとてつもなく長いコースの近くに住んでいる事に誇りさえ感じ始めていたかも知れない。

Metropolitan Tokyo ・・・。

ここに生まれ育った事の意味を見つけ出したかった。