三年身籠る/唯野 未歩子 | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


三年身籠る (文春文庫)


※ネタバレふくみます。

めっちゃつらいじゃん。

2000グラム超えたあたりで、もう出てきてくれないかなってくらい重いのに、
いや、7月に入るまでは出てこなくていいんだけどさ、
生後2ヵ月の赤ちゃんが5キロあるとかで、抱っこするのも大変そうなのに。

二十七ヵ月ってなんだよ。
「母体が危険です!」って、それ十七ヵ月前に言うやつだからな。

ふつう予定日を数週間も過ぎた時点で帝王切開だろって、
そんな無粋なツッコミはなしね。私は全力でツッコんだけどね。

冬子は姑獲鳥でもなければエース(ONE PIECE)の母でもなく、
「この子が自然に出てくる時を待つ」と泰然としている。
地味ながら自然に沿って丁寧に暮らしている女性なのね。

小川糸さんの『喋々喃々』や
梨木香歩さんの西の魔女が死んだ』の空気感を思い出す。

スティックシュガーがけおにぎりは…どの季節でも無理だけど…

妹の緑子とは正反対の性格のようで、実は似てるよね。
繊細でいて、自分が作った(偏執的な)ルールに忠実なところとか。

緑子のほうが気丈そうに見えて、冬子のほうが芯がどっしりと太い。
自分と一緒にいる時に、夫が他の誰かがいないことを淋しがるなんて、
耐えきれない!彼女とか作ってんじゃねーよ!思春期かよ!

『心もとなくて、全然ぴんとこない、なにかと自信のもてないもの。
   それが、かつての冬子の日々だった。』

でも、妊娠したことによって、何かがハッキリしてくる。
その感じ、すごくわかる!私は冬子ほどぼんやりはしてないけど。
冬子ほど変な男とばっかり付き合ってないし。ろくでもないのは同じだけど。

あと、雨の日は風景にあるすべてが懐かしく見えるっていうのもわかる。
あのなんでもない喫茶店のシーン、好きだな。

へんてこでいてしっとりとした、不思議な家族のお話でした。


喋々喃々 (ポプラ文庫)