神去なあなあ日常/三浦 しをん | Bon livre –いつか最良の一冊と出会う–


神去なあなあ日常 (徳間文庫)


※ネタバレふくみます。

11月になって神様たちが帰っていった島根県の出雲に
日常が戻ってきたよって話かと思ってたらぜんぜん違った。

チャラい男が自然(と仕事と恋)の力で成長し心を入れ替える、
大雑把なストーリーをいえばありがちだけど。
林業を題材にした小説は初めて読んだから、興味深かった。
(川端康成の『古都』にも林業にふれるシーンがあったっけか)

枝を切ったり、草を刈ったり、雪を落としたり、
そうやって共存していくものなんだなぁと深い感銘を受けた。
勇気と同じで、「木を切り倒す」って自然破壊のイメージしかなかった。

山と呼吸をあわせて、木の状態を読んで、仕事を進める。
数十年、数百年という、長い年月をかけて育ってきた樹木を相手にして。

体力ゼロだし寒がりなので、林業をやりたいとまでは思わないけど。
読んでるだけで疲れちゃうし、勇気に同情もしたわ。

ダニとヒルの箇所なんて、全身に鳥肌がたってかゆくなった!

緑と蝉の声に囲まれて、川遊びする夏なんて最高だけど。
村人が集まるお祭りも、自然に即した生き方も素敵だけど。
「私も神去村みたいなところで暮らしたい」っていうのは
やっぱり嘘になるから言えないわ。

男の人が読んだら、なにか燃えたぎるものがあるのだろうか。

私はやっぱり家で待ち、彼らを見守る女目線でしか読めなくて、
大変だなぁ、怖そうだなぁ、自分だったら逃げるなぁ、
でもオオヤマヅミの時の男衆はかっこいいなあ!ってひとごとになっちゃう。

でもなんか、自分も神去村にいるような気分になって、どんどん読んじゃう。

清一さんがモテるのはすごくわかる。
あの人の前じゃ、勇気に1ミリも男の魅力を感じないもの!

でもさ、中村林業の仕事ぶりは確実にかっこいいし、
「メドの特権」を行使しなくても、振り向かせることはできるよ、いつか。
すくなくとも、秒速で1億稼ぐ男よりも、
30年で1本の杉を育てる男に私は惚れるね!