トリトン(Truchock)の、映画日記帳

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のんびり更新の映画日記。
感想や細かい分析よりも、自身の感じたものをつらつらと。。。

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Billie Eilish: The world's a little blurry/ビリー・アイリッシュ世界は少しぼやけている」


"王冠を被った私を見るべきよ"


自分勝手な推測だったのだけど、彼女の楽曲やSNSの発言を見ていて、彼女の生い立ちが複雑だったりBillie Elishという世界を形成する経過で酷く傷付いたことで成熟した女性なのかな?と思っていた。

これは偏見とかではなく、彼女が魅せてくれる世界観が、あまりにも今まで出現してきたアーティストとは違う"何かを持っているような気がしたから。

その性質は違うけれど、初めて宇多田ヒカルを見聞きした時の感覚に近いもの、新人類の登場した感。


ただ、今回このドキュメンタリー映画を観ていて目の前にあったのは、朗らかな愛で優しく包み込む父と強い愛で彼女の背中を押し続ける母と、諦めずに笑いながら励まし寄り添う最強のパートナーであり最高の兄の愛によって支えられている、"普通の19歳の女の子"だった。

音楽の世界の至宝であるグラミー賞をかっさらい、SNSの発言で議論を起こし、世界中にムーブメントを巻き起こしたアーティストは、ジャスティン・ビーバーを前にして、赤面して文字通りモジモジして、ハグされて嬉し泣きしちゃうような"普通の19歳の女の子"だった。


なんて魅力的な19歳なんだろう。


仮免許を受かって超喜んだり、彼氏と会えなくて寂しくて携帯投げたり、脚が痛いのにリハビリとトレーニングだるがったり、周りからの印象に極端に怯えてみたり。。。

だけど、自分の歌声が気に入らずに凹んだり、みんなが絶賛したパフォーマンスにも納得いかずぐずったり、MVの出来が気に入らなくて、この次からは自分でディレクションするわ...と怒って、実際に次作からやり切っちゃうあたり、やっぱり天才としか思えないような。

この映画では、世界を変える19歳の様々な側面が、コロコロと変わりプリズムのように輝く。

もちろん面白いポイントも満載で、ハグする相手がケイティ・ペリーだったりするスケールの大きさはもちろん、横にいるオーランド・ブルームに目もくれず気づかなかった件は爆笑しました。


そんなビリーを心配しながらも、その美しくて自由な羽根を奪わないように、なんとか大人へのステップを支えていく両親の愛が素敵。

テキトーな晩御飯食べながら、狭くて物がごちゃごちゃある兄貴の部屋で、2人で喧嘩したりギャハギャハ笑いながら作った曲が世界を変えてしまうなんて、本当に音楽は夢で溢れる。


13歳の頃にサウンドクラウドにアップした「Ocean Eyes」が一夜で大爆発ヒットしたことを家族で大喜びするシーンが、その時からはもう何年も経って、遠く離れた日本の人もまばらな映画館の片隅の僕に、一緒にはしゃいでるようなそんな気持ちにさせてしまうような、そんな最高のシーンだった。

大森靖子に思いっきりケンカ売るつもりで言うけれど、音楽は魔法だよってつくづく思う。


忘れられないシーンがある。

グラミーを獲ったビリーに送られた、ジャスティン・ビーバーからのメッセージ。

本当に泣けた。


君は特別を超えている、今夜はありがとう。(今日のことは)僕にとっても、君と同じくらい意味のあるものだった。あと、もうひとつ伝えたいことがある。これは僕にとってまさに昨日のことのように感じられる。ほんのちょっと前まで僕は15歳で『One Time(ワン・タイム)』を歌っていた。それが今や25歳であれから10年の月日が過ぎた。ここまでくるのはあっという間だった。だから、11秒、すべての出来事を楽しんで。すべてを受け入れて、自分は偉大だと信じて。でも、誰よりも偉大だと思ったらダメだよ。」


もう一度言う、音楽は魔法だよ。

夢を叶え、世界をひっくり返せるんだよ、散らかった部屋で作られたものでも。


140分間、彼女が喜んだり悲しんだり凹んだり浮かれたりモジモジしている姿を見ていて、シンプルに優しい涙が流れた。

音楽を愛せてよかったし、彼女の音楽に触れることができてよかった。


何より彼女の創る音楽を愛せる自分を少しだけ誇れるような、そんな美しくて逞しい作品だった。


彼女は19歳にして世界一の王冠を被り、世界を震わす音楽を作ってるんだろう、散らかった兄貴の部屋から。


だから、、、

you should see me in a crown‼︎‼︎