(きっと誰かの受け売りだろうが)Bがボソッと言った言葉に、ハハァーンあの女と別れたんだなと私は察した。
Bの女性遍歴はだいたい知っている私だが、国際色豊かで、日本人を除けば同じ国籍の女とは2回付き合っていない。
何年も前だが、オペラ歌手を目指す声楽科の女学生と付き合っていたことがある。日本人だ。なかなか可愛い娘だったが、天然なのとオペラのことしか頭にない娘だったので、他の人間と会話にならず、仲間内の評判は悪かった。おまけにBまでその女に感化されてオペラにハマってしまった。
私と一緒でBは音楽についてはオープンマインドで、なんでも聴く派だ。あれよあれよという間にオペラ通になって、私に講釈を垂れるようになった。
その女学生と別れた後は、オペラがきっかけでイタリア娘と付き合い始めた。街を歩いていても人目をひくモデル級の女だった。Bもぞっこんで、着慣れないイタリアンスーツなどでめかし込んでいたが、半年も経たずして別れてしまった。
それとともにオペラ熱が冷めて、しばらくブルースばかり聴いていたような気がする。
こうした現象は女と付き合ったり別れたりする毎に起こる。
最近までBはスティーブ・スワローにハマっていた。カーラ・ブレイとのデュエット作品をよく聴いていて、自分のスタイルとはかけ離れたベース・プレーから何かしらアイデアを盗もうとしているようだった。普段は指弾きなのに、ピックで弾き始めたのもその影響だろう。
実は少し前に、今付き合っている女が美しいピアノ弾きだということを教えてくれた。女の容姿が美しいのかピアノスタイルが美しいのかわからないが、私にはどうでもよかったので聞き流していた。が、今思うと、カーラ・ブレイとスティーブ・スワローを自分達と重ね合わせていたのかもしれない。だとすれば女の美しさは容姿ではなくピアノスタイルの方だが、Bもピアノとベースのデュオをその女とやりたかったのかもしれない。
が、どういうわけか、ごく最近になってBはまたブルースを聴き始めた。ピックも捨てた。
