「○○○○ を活用するための ○個 のヒント」
こういう文を見かけました。原文には "tips" が使われているようです。
外国企業のHPがローカライズされたものには、こういうのがたくさんあります。
実際、マイクロソフトのランゲージポータルで"tip"を検索すると、訳語として「ヒント」が出ます。
自分だけかもしれませんが、この「ヒント」にすごーく違和感があるんですよね。
普通に生活していて、日本人がこういう使い方をするんだろうか。
自分が子供のころから耳にしていた「ヒント」には、たとえば、クイズのヒントのように、直接の答えではないけれども、それを暗示するような、示唆するような意味が含まれていました。
でも、上の文には、そのような意味は含まれているのかな~。
「○○○○」を活用する方法をこれから教えてくれるんだろうと、読む人は期待するだろうに、「ヒント」と言われると、何かもったいぶったような印象を持つのは私だけでしょうか?
「ヒント」を辞書で引いてみると、
(物事を解決したりわからせるための手掛かりとなる)暗示。示唆(大辞林より)
なっていました。やはり、「暗示。示唆」ですよね。つまり、「それとなく」かな?
"tip" を引いてみます。
useful piece of advice about how to do something ~ (Longman Activator)
(ちなみに、同義語は "advice")
また、COBUILDで引くと、
A tip is a useful piece of advice.
他にもあたってみる必要があるでしょうが、"tip" には、日本語の「ヒント」のように暗示や示唆を示す意味(indirect)があるのか疑問です。
では、英語の "hint" はどうでしょうか。
A hint is a suggestion about something that is made in an indirect way. (COBUILD)
となっています。ありますね、"indirect"。
ただし、最後から2番目の語義として、"tip" と同じような意味が載っていました。
A hint is a helpful piece of advice, usually about how to do something.
つまり、
英語では、tip も hint も、"advice" と同じ意味で使われることがある。
ただし、hint には、indirect の意味を含む用法もある。tip にはない。
これに対し、日本語の「ヒント」には暗示や示唆の意味がある。
例文のような「ヒント」の使い方は市民権を得ていて、自分が知らないだけかもしれません。
確かにこの「ヒント」の使い方はよく目にします。でも、特に翻訳文書によく見られる印象がありますね。少なくとも、日本語で書き起こすときにこんな使い方はしないなと思います(自分は)。
異論のある方もいるでしょうが、自分だったら、最初の例文の"tip"は「ヒント」ではなく、「秘訣、コツ、ポイント、ノウハウ」などと訳しますね。