皆様、こんばんは。

の前に、言わなきゃいけないことがありましたね。

長らくご無沙汰してて、すみませんでした。

その空いた期間中何してたかと言いますと、相も変わらず書けないと四苦八苦しつつ、コロナワクチン接種を済ませたりしておりました。

一応2回ちゃんと打ったから、これで一安心ですわ。

重症化対策という点に関してだけですけど。

まあそんな中どうにかこうにか書けたこの異世界もの、よかったら読んでやってくださいませ。

あ、前に書いた通り当分の間話未満でお届けしますので、今回も拍手ボタンは付けておりませんよ。

 

 

 

流行になんて乗るものじゃない

 

 

 

【 『魔物栽培』、この言葉を知らない人はまずいないのではないでしょうか。

そう、今一番のトレンドは自分好みの魔物を一から育てることですからね。

でもやってはみたいと思いつつも、どうしたらいいのか分からないと躊躇されてるそこの貴方。

そんな貴方におススメなのがこの、『魔物栽培キット』です。

キットの使い方は至極簡単。

中にある種をご自身が用意したプランターに植えて付属の栄養剤をかけたあとは、生えた植物に成った魔物入りの実が育ちきるまで水をやるだけ。

たったこれだけの作業で、夢にまで見た貴方に従順な魔物が手に入ります。

し・か・も!今申し込まれた方にはさらに、生まれた魔物との触れ合い手引書なんかもセットでお届けしちゃいますよ。

こんなお得なチャンスは今だけ!今だけです。

もし少しでも興味を持たれたならまずこちらにお電話を。

電話番号 0△△0-・・・・・・ 】

 

まるで日本でよく見られるような広告の一文。

それがばら撒かれたのは、1家に1匹どころか1人が1匹ないし数匹の魔物を飼って当たり前という、異世界である。

そんな地球とは価値観などが違うそこでは、最近革新的といえる出来事が起こっていた。

何と、今までは無理とされてきた魔物の一からの人工飼育に成功したのだ。

この出来事に人々はかなり沸いた。

まあそれも無理はない話だろう。

途中からよりは最初から己の手で育てた方が当然懐きがいい上に、感じる愛情も段違いなのだから。

ちなみに我々からしたら未知なる魔物、そいつが宿るのが卵ではなく実であるということに関しては、そういうものなのだと納得してもらう他ない。

なんて世界別の常識云々はともかく、こういった背景のせいで飼い主馬鹿続出中の現在、新たにそれに加わらんとしてる人物がここにも1人・・・。

 

 

「魔物~魔物~私の初めての魔物はとんな子かな~。

しっかりお水をあげるから大きくな~れ~・・・って、もう十分な気がするんだけど・・・。」

 

水やりをしつつ調子はずれな鼻歌を口ずさむは、まだ10代後半の年若い少女。

つい最後に訝しげな視線を送ってしまったものの、すぐ笑顔に戻ったその少女、キョーコはまたも話しかけだす。

既に自身の背丈を追い越した植物の、直径1m近くはあろう存在感抜群な大きさの実に向かって。

 

「初めてで加減が分からないんだし、こんなものなのかもね。

それにしても、あなたは何の魔物になるのかな。

私としては出来れば猫系がいいけど、贅沢は言っちゃダメか。

うん、どんな姿でもいいから早く出ておいで。

そうすればママが全力で愛し守ってあげる・・・って、何?!

急に動き出して、もしかして孵るの?」

 

言葉通り、小刻みに動き出した実は徐々に割れていき、切れ目から黒っぽいものが這いずり出てくる。

全体が見えてやっと判別出来たそれはまさかのレア種の竜で、キョーコと目が合うや否や人化し、にこやかに口を開いた。

 

「待たせてしまったようでごめんね。

でも実際は後もう少しかかる予定だったのをこうして早めて出てきたんだから、許してほしいな?」

 

「・・・は?いや、えっとアナタ・・・竜・・・・・・成人・・・。」

 

いきなりとんでもない技能を見せられ、その上さらりと聞き捨てならないことを言われはしたものの、今はそれどころではない。

己の育てた魔物がレア種なのはもちろん、期待してた子供の姿じゃなかったショックが大きすぎたせいで思考停止状態のキョーコに構うことなく、黒竜は笑顔でのたまうのだった。

ある種ぶっ飛んだというか、己に都合のいいことを。

 

「ああ、竜種はそこそこ成長してから孵るものなんだよ。

まあそれはともかく、こうして出て来たんだから早速有言実行してもらおうか。

確か全力で愛してくれるんだったよね、母上殿?」

 

そんな発言の最中醸し出されたのは、壮絶なる色気。

数少ないながらいる人化した魔物は総じて美しいものだが、中でもこの黒竜が抜きんでているように思えるのは間違いなどではないだろう。

まるで神が贔屓して作ったと言っても過言ではない美形のその魔物は、その色気によって益々混乱中の主人を上手いこと誘導して自身に蓮と名付けさせた後、抱き上げた彼女と今日から一緒に暮らす部屋の中へと入っていく。

至極ご満悦な様子で。

しばしの静寂の後ようやく漏れ聞こえてきたキョーコの声はというと、

 

「信じられないっ!

詐欺よこんなの、流行になんて乗るんじゃなかった!!」

 

だったそうな。

 

・・・何事もたやすく手を出すと痛い目に合うこともあるので、その辺くれぐれもご注意を・・・。

 

 

 

おわり

 

 

 

蓮様、主に色々やらかすの話でした。

ちなみに気になってる方の多そうな人化後の蓮様の着衣問題については、お好きなように妄想していただいてOKです・・・私の想像の中の蓮様はちゃんと着てましたよ、裸のままだと目のやり場に困りますからね(笑)

なんて戯言はこのくらいにしときましょうか。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

また更新した時にはよろしくお願いします。