日本人の間違った常識 NO3
(2020年1月17日)
 
米国は日本を守らない安保条約第5条とNATO条約第5条の比較
 
●日本の主要な与野党は愚かにも、有事には米軍が日本を守るために戦ってくれると信じている

自民党の外交と安全保障政策政策の基軸が日米安全保障条約に基づく「日米同盟」であることは間違いない。これは、最新の綱領である「2010年綱領」には、日本の現状について「日米安全保障条約を基本とする外交政策により永く平和を護り、世界第2位の経済大国へと日本を国民とともに発展させた」とし、2019年の参議院選挙の公約でも、安全保障策として「日米同盟をより一層、強固にし抑止力を高めます」としていたことからも疑えない。

また、野党第1党の立憲民主党も、安保条約を日本外交の基軸と評価していることは、同党HPの「外交・安全保障政策」で、「基地負担軽減を進め、日米地位協定の改定を提起する」★1と主張し、また「健全な日米同盟を軸とし、アジア太平洋地域、とりわけ近隣諸国をはじめとする世界との共生を実現する」と「健全な」と形容することで条件付きであることを示しつつも、「日米同盟を軸」にすると明言していることからもわかる。

更に、国民民主党も、同党HPのニュースで、日米地位協定は「改定する必要がある」としながらも、「在日米軍は日米安保の基盤であり、日本の安全保障の根幹である」としているので、国民民主党も安保条約を日本外交の基軸と評価していることは間違いない。
 
このように、日本の主要な与野党は愚かにも、中国やロシアのような核兵器保有国との有事でも、米軍が日本を守るために戦ってくれると信じて、安保条約(日米同盟)を日本外交の基軸と評価している。★2

立憲民主党の外交・安全保障政策
https://cdp-japan.jp/policy/foreign_and_security

国民民主党 「治外法権」を解消し、真の主権を確立する =日米地位協定の改定案=
https://www.dpfp.or.jp/article/200982

●米国には核兵器保有国と戦っても日本を守るという国家意思などない

米国は安保条約の第5条を守ると言っているだけで、米国は日本有事に米軍の軍事力で「日本を守る」と明言したことは一度もない。日本の大半の政治家や、マスゴミで発言する学者や軍事専門家たちは、この米国の「第5条を守る」とか、「第5条を適用する」という発言を、勝手に日本有事には米国は軍事力で日本を防衛すると解説しているが、米国には日本を守る気などない。

外務省は日米安条約第5条の条文、つまり「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」の「いずれか一方に対する武力攻撃」に対して、日本と米国が「共通の危険に対処するように行動する」と明記しているから、米国は集団的自衛権を行使して日本を防衛する義務を負っていると解釈し、米国は日本を守ると解説してる。

しかし、米国の大統領には、あくまでも短期的戦争で、しかも緊急に派兵しなければならい場合の権限しか無い。米国では宣戦布告の権限は議会にあり、核戦争にエスカレーションする可能性がある深刻な戦争まで行う権限は大統領には無く、議会が核保有国との戦争は反対する場合もあり得る。
 
というか、日中戦争の場合なら、米国議会は中国の約100発のICBMを恐れて、戦争を拒否する可能性が極めて高い。要するに、日本側が<米国は日本有事に米軍の軍事力を行使して日本を守る>と、日本に都合が良い解釈をしているだけだ。★3

●日米安保条約の第5条は、北大西洋条約(NATO条約)の第5条と全く異なる

このことは、下記の日米安保条約の第5条と、北大西洋条約(NATO条約)の第5条を比べれば誰でも明白に理解できる。

☆日米安保条約の第五条
 
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

外務省HP:日米安全保障条約(主要規定の解説)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku_k.html

☆北大西洋条約(NATO条約)の第五条
 
 締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。したがつて、締約国は、そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第五十一条の規定によつて認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する。
 
 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

北大西洋条約(NATO条約)
データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所
[文書名] 北大西洋条約
http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/docs/19490404.T1J.html

●外務省の説明は、安保条約第5条の「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」という記載を無視している

外務省HPは、日米安保条約の核心である第5条について、『第5条は、米国の対日防衛義務を定めており、安保条約の中核的な規定である』としつつ、『この条文は、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」としており、我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には、両国が共同して日本防衛に当たる旨規定している』として、日本の有事には、米国は核兵器保有国と戦っても日本を守ると解説している。

そして、この戦争は、あくまでも国連安全保障理事会が『国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの暫定的な性格のもの』と主張し、国際法上の合法的な措置としている。
 
しかし、実際の日米安保条約の第五条には上記のように、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」と書かれているが、NATO条約の第5条には、このような敢えて規定する必要が無いことは記載されていない。

●安保条約第5条の「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」という記載の真の意味

通常は、当たり前で当然なこと、常識的なこと、つまり前提的なことを敢えて表現すると、その意味は変わる。伝える必要がない常識的なことは出来るだけ省略して、簡潔にするのが話し言葉や書き言葉の「ルール」。そうでなければ、やたらと長い話になったり、長文になったりして、逆に主旨が伝わらなくなる場合もあるからだ。だからこそ、敢えて常識的なことを話したり、書くことは表現の意味を微妙に変えてしまうのだ。

たとえば、友人を旅行に誘った場合に、旅行の前提は健康であることなので、普通は「体調が良ければ」などの当たり前のことは省略して言わず、単に「参加する」とか「参加できない」と返事をする。しかし、「体調が良ければ参加する」という返事をされた場合は、<参加したいのだが、最近は体調が良くないので参加できない場合もある>という不確定な意味の返事になる。

欧米諸国は立憲主義国だから、どの国の政府も自国の憲法上の規定及び手続に従って軍事行動することは当然の大前提。NATO条約の第5条には、「憲法上の規定及び手続」という当然のことは規定されていない。つまり、NATO条約は確定的であり、加盟国を守ると相互に保障している無条件の条約である。

ところが、日米安保条約の第五条の場合は、「憲法上の規定及び手続」という当然のことが書かれている。ということは、あくまでも第5条は、憲法上の規定及び手続を経て、議会が日本への軍事支援を認めれば、という「条件付き」であること、つまり、議会が認めなければ支援しない場合もあることを示しているので、安保条約は、必ず日本を軍事的に支援すると約束した条約ではない。★4

●中国やロシアはもちろん、米国も無意味な核戦争はしない

そもそも、総力戦的な核戦争になったら、「核の冬」で人類自体が滅ぶとされている。だから、総力戦的核戦争が起こる確率は低い。しかし、万一、日中や日露の戦争が起きた時、米国が日本側に参戦して勝ったとしても、限定的核戦争であれ、米国の本土も中国やロシアのICBMで、開拓前の荒地に戻ってしまい、EUやインドなどの無傷の第三者に覇権が奪われてしまうので、戦いは無意味となる可能性が高い。

それで、既に米国のシンクタンクの専門家から、<米国は台湾と手を切るべき>という提言が出されている。中国の台湾の再領土化の意思は本物である。中国は時と場合により、武力を行使しても、台湾を取り戻そうとするのは間違いないので、現状のままでは米国が核兵器を保有する中国との本格的な戦争に突入してしまうリスクがあるからだ。

また、中国やロシアの側も核戦争のリスクは同じなので、核大国の米国や中国、ロシアの正規軍同士が核戦争に発展する可能性がある戦争などするわけがない。戦争が始まってしまえば、「核兵器は使わない」とか、「本土は攻撃しない」という合意が成立しても、どうなるかは誰にもわからないからだ。

しかし、絶対に起きないとまでは言えないのも確かなので、戦いが避けられない場合には、恐らく当初は「核兵器は使わない」という合意での戦争となるか、核戦争の場合も、お互いに「本土は攻撃しない」と合意して戦うことになる。
 
すると、この場合の主な戦場は、日本や台湾、フィリッピンと、その周囲の海ということになり、日本は焦土と化すし、最悪の場合、日本列島に住む日本人はほぼ全滅する。

●日本を見捨てると信頼を失って西側陣営は崩壊するから、米国は日本を見捨てない?

日本のエセ軍事評論家や嘘つき学者には、米国が日本を見捨てたら、米国は世界中の親米国家の信頼を失い、西側陣営は崩壊するから、日本有事に、米国が日本を見捨てるようなことはしないと楽観する者もいる。

しかし、米国には、日本を見捨てても他の親米国の信頼を失わない施策がある。それが、自衛隊に弾薬やミサイルの備蓄を制限させる策だ。

●2週間で弾薬が尽きて終わる奇妙な軍隊

航空自衛隊は、2~3日全力で戦うと弾薬やミサイルが尽きて開店休業となる。海上自衛隊は、航空自衛隊の上空援護無しでは戦えないことは先の大戦で実証済み。それで、海上自衛隊も2~3日で日本を逃げ出して、ハワイにでも避難するしかない。また、陸上自衛隊も2週間で弾薬が尽きて終わる。結局、自衛隊は2週間程度で抵抗力を失い、日本は降伏するしか選択肢が無くなる。

なぜ、2週間かと言えば、米国本土から、部隊や武器・弾薬を日本に送り込む輸送船は、最短でも2週間掛かるからだ。日本有事が起きても、中国やロシア、北朝鮮のような核保有国の場合、核戦争になる可能性があるので米国の大統領は即応できない。米国の宣戦布告をする権限は議会にあるから、議会が核戦争にエスカレーションする可能性のある事態を検討して結論を出すまでには時間が掛かる。そこで、日本が降伏するまで結論を出さなければ、米国が参戦を決めても手遅れとなり、米国は戦う必要が無くなる。

すると、米国は「日本が中国軍の攻撃をもう少し耐えたなら、米軍の援軍が到着したのに」と敗北の責任を日本側に擦り付け、日本を見捨てたことを隠蔽できる。つまり、日本を見捨てても、米国は安保条約を守ったことになり、他の親米国家の離反を防げる。だから、日本の宗主国である米国は日本に、2週間分の弾薬・ミサイルしか備蓄させない。★5

●「東アジア平和条約」の締結がベスト

このように「通常兵器のみで」とか、「本土は攻撃しない」という合意形成が可能な場合でも、米国は日本を守らない。戦争が始まると予想不可能になり、核戦争になる可能性があるからで、実際には「米国の核の傘」などは幻想なので、日本は全ての国際問題を話し合いで解決すると定めた「東アジア平和条約」を締結し、戦争の脅威を無くすべきだ。

しかし、中国やロシア、北朝鮮の「脅威」が無くなると日本は米国に頼らなくなり、米国離れ=独立して元の主権国家に戻ろうとする勢力が増大する。だから、米国は日本政府がこの「東アジア平和条約」締結を呼びかけて推進することを許さず、マスゴミが「東アジア平和条約」を提唱することも「禁止」していると思われる。中国との軍事的な緊張が高まっても、テレビに登場するエセ専門家らは、誰も「東アジア平和条約」を提唱しないからだ。

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★1:米軍の巨大な基地がある日本やドイツ、イタリア等の先の大戦で米軍と戦った3国の中では、日本だけが米軍の国内での地位を定めた「協定」を一度も見直しせず、日本だけが「治外法権」状態のままで放置されている。

★2:普通の日本国民は、米国が日本を助けないことぐらいは皆気付いて、気付いていないのはネトウヨぐらいかもしれない。この件は考えても答えが見当たらないので、思考停止となっているのが、今の日本人かもしれない。しかし、国際紛争は武力ではなく、話し合いで解決すると規定した「東アジア平和条約」を締結すれば戦争は防止できる。

★3:1960年に締結された安保条約は、米国が日本の防衛を支援する代わりに日本側は米軍に基地を提供するという内容の条約だった。しかし、2005年、この条約に基づいて設置された日米の協議会で「合意」された「日米同盟:未来のための変革と再編」は、選挙で日本国民に問うことなく決定された事実上の「新安保条約」であり、日米の関係を相互に防衛し合う「軍事同盟」に変質させてしまった。これが安倍政権による2014年の集団的自衛権を部分的に認める解釈改憲の強行として現実化された。

★4:日本国憲法の9条も、これと同じであり、日本は9条で自衛権も放棄している。というのは、国際法では、国家に自衛権があることは常識なので、普通の国なら、敢えて憲法で自国には自衛権があると規定する必要は無い。

しかし、日本国憲法の前文で、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」とか、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と謳っている。

また、9条で、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とか、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と書いて、敢えて自衛権について規定している理由は、日本は普通の国家とは異なり、自衛権も放棄したことを示すためと解釈するしかない。

だから、自衛隊は自動小銃や装甲車程度の装備しか持たない治安維持用の警察軍に改組し、海自の艦船は破棄するか海上保安庁に移管し、戦闘機や護衛艦などは放棄するか、改造すべきだ。警察軍や海上保安庁の艦船なら、9条が禁止している国際紛争用の軍備ではないからだ。

というのは、憲法9条の件もあるが、むしろ、こうした軍備を保有することが他国から警戒され、時には戦争の口実として利用されるからだ。また、万一軍事的に侵略された場合に、ストライキ等の平和的手段で抵抗することが出来ず、武力で追い出す場合でも、ベトナム戦争やアフガン戦争で実証されたように、姿を隠したゲリラ軍の方が、重装備の正規軍よりも強いからでもある。侵略軍の武器の方が何倍も優れていても、敵がどこにいるかわからなければ使い様がないからだ。
 
戦闘機などの軍備で日本を守るなら、米軍や中国軍、ロシア軍と同等か、上回る装備が必要となる。しかし、既に、購買力平価でGDPが日本の約5倍となった米国や中国の正規軍並みの装備を保有するのは、日本には不可能であることも明白。
 
また、現在のように米国、あるいは中国やロシアと日本が2国間だけの軍事同盟を結んだ場合、日本は相手の同盟国の政治的属国となるのも明白。更に、IT技術では日本は米国よりも先行していた領域もあったが、米国に妨害されて、現在の日本のような二流国に転落した。経済や技術面で日本が同盟国(覇権国)を追い抜くと、同盟国は日本に覇権が奪われると危惧するからだ。

それで、無力な乳幼児に暴力を振るうことは、どのような屁理屈でも正当化できないように、むしろ武装しないことで、他国の軍事力行使を防いだ方が得策である。他国を脅かす軍事力が無い国に、軍事力を行使することは正当化できないから、現代では非武装の方が、むしろ安全なのだ。
 
★5:万一、日本が米国の支配に反抗して「独立戦争」を起こした場合でも、2週間しか戦えない自衛隊であれば、米軍の脅威にはならないという利点もある。それで米国は2週間分の弾薬やミサイルしか認めない。日本の首相が2週間分以上、備蓄したいと米国に願い出た場合、日本は同盟国である米国を信頼しないのかと怒られ、「謀反」さえも疑われるだろう。