義勇兵問題の続き(殺人罪、殺人未遂罪の国外犯処罰規定) | パレ・ガルニエの怪爺のブログ

パレ・ガルニエの怪爺のブログ

ブログの説明を入力します。

  過去に政府は「海外で傭兵(ようへい)として活動し、殺人を行った日本人が日本国内に戻った場合、わが国で処罰することは可能だ」と国会で答弁しているそうです。

 この「可能だ」というのは、間違いではないことは当然ですが、法律を知らない人をミスリードしそうな表現です。

 

 政府としては、ロシアとの外交関係がややこしいことになるので、ウクライナに義勇兵は行って欲しくないようですので、おそらく、上記の国会答弁のようなトーンでの対応を続けるものと思うのですが、法律問題について、正確な情報を発信せず、「可能だ」というような曖昧な説明でミスリードするのは適切ではないと思います。

 この方向で進んでゆくと、ロシアのように、ウクライナへの侵略が現在進行形で進んでいることさえ、報道を禁止して国民に伝えない体制になることさえ「可能です」(?)。

 

 刑法3条では、日本国民が、国外で、一定の重大な犯罪を犯した場合に、日本の裁判所が、それを処罰できることを規定しており、同条6号に、殺人罪と殺人未遂罪が挙げられています。これが、前記の「可能だ」という政府答弁の根拠です。

 しかしながら、侵略者であるロシア軍からウクライナの国民の生命・身体・財産等を守るため、義勇兵として戦闘に参加した場合、その戦闘状況によっては、正当防衛(自分及び同僚であるウクライナ兵、各国からの義勇兵、ウクライナの国民や各国の報道関係者その他のの生命・身体・財産を守るために攻撃してきたロシア兵に対して反撃するなど)や緊急避難(自分や他の者の生命・身体・財産を守るために攻撃者以外の第三者の生命を含む権利利益を侵害せざるを得なかった場合:正当防衛・緊急避難は刑法と民法とで規定の仕方が異なるので、一部修正しました。)が認められて犯罪不成立となる可能性が十分にあります。これは、単に「可能だ」という程度の話ではなく、現実的に、相当、ありそうな話です。

 

 なお、法律論的には、「自招の危難」といって、自らその危険を招いている場合、正当防衛や緊急避難は成立しないことがあるとされており、法律の素人からすると、わざわざウクライナまで出かけていって侵略者ロシア軍と対峙することになる義勇兵の行動は「自招の危難」めいてみえるのではないかと思いますが、国際法に違反して侵略しているロシア軍が攻撃してこなければ、又は、攻撃態勢を採っていなければ、戦闘にならないはずなので、「自招の危難」のように見える行動は、正当な権利、利益を守るための行動であり、「自招の危難」」とはいえない、と私は考えます。

 PKOとして自衛隊が海外派遣された際に、正当防衛であれば、反撃してよいという方針が採られましたが、安全なところに行くのであれば、武器を携行する必要はないので、武器を携行して行く以上、自分自身や同僚の生命・身体に危害が及ぶ状況があることを事前に認識していることは否定できません。このような危険な派遣先に行くことが「自招の危難」に当たるなら、「正当防衛」が成立せず、反撃した自衛隊員は,殺人罪・殺人未遂罪によって処罰されることになりかねませんが、こうした解釈はおかしいと思います。

(法律論は、いろいろな見解が成り立ち得るもので、最終的には、裁判所で判断してもらうほかなく、この結論が絶対正しいというつもりはありません。)

 

 仮に「自招の危難」の議論がクリアされたとすると、日本国が義勇兵を殺人罪、殺人未遂罪で起訴するためには、日本の検察官は、その義勇兵が殺人、殺人未遂を行ったことを合理的な疑いを残さないところまで、立証しなければならないだけでなく、正当防衛や緊急避難が成立しないことも、合理的な疑いを残さないところまで立証しなければなりません。

 国外で行われた戦闘中の行為について、そもそも、その義勇兵が殺人、殺人未遂に関与した日時、場所、方法、被害者、共犯者等を立証する証拠の収集自体、極めて困難である上、それに加えて、正当防衛や緊急避難が成立しないことが合理的な疑いを残さないところまで明らかであるという立証は明らかに不可能です(サッカーの試合のヴィデオ・アシスタント・レフリーのように、敵味方の状況をいろいろな角度から撮影していたヴィデオ映像があるような場合は別ですが、まあ、そんなことはないでしょうね)。

 従って、法律論として、義勇兵を殺人罪、殺人未遂罪の国外犯として処罰することは「可能」ですが、現実論としては、実際上「不可能」なのです。

 

 義勇兵に賛同するか、しないかというそれぞれの政治的見解と、殺人罪・殺人未遂罪の国外犯処罰の可能性、現実性という法律論は別の問題であり、義勇兵に行かれると困るから、ミスリーディングな「処罰は可能だ」という程度の説明で止めるというのは、私は褒められたものではないと思います。

 なお、私の政治的見解は、既に見え見えだと思いますが、映画「カサ・ブランカ」、「誰がために鐘が鳴る」でも出てくるスペイン内戦のときのように、全世界から義勇兵が、ファシストを通さないために、駆け付けてほしいと心から願っています。

 もっとも、軍事的には、必ずしも高度の練度が期待できない市民からの義勇兵より、無人軍用ドローンMQ9リーパーやクルーズ・ミサイル、プレシジョン誘導弾のような高度科学技術兵器や訓練を受けた民間庸兵会社の要員の方が役に立つことは明白なので、 バイデンさんに何とかして欲しいと思います。キエフの北の道路にロシア軍の軍用車両が渋滞しているらしいので、MQ9リーパー10機程度を、24時間、反復運用して、道路上にヘル・ファイアのレッド・カーペットを敷き詰めて、最大限の歓迎を・・・。