高3の夏,体育館に全校生徒集められて生徒会選挙が行われた。壇上に一人ずつ候補者が上がって演説し 事前に配られたプリントの候補者名に◯をつけて役職を選ぶという…毎年お決まりの…皆が前後の人とお喋りして終わるだけの恒例イベントだ

そう…誰が生徒会長になろうが僕達の高校生活には関係がない


生徒会長に立候補してる二人くらいの演説が続いたが、相変わらず興味を持てなくて僕は前に座っている親しかった友人とお喋りしていた。内容は覚えていない……ただ この退屈な時間を凌げるだけの内容だったのだろう、僕だけでなく他の人も皆同じようにやり過ごしていた


前の友人と話してる間も微かに候補者の演説が入ってくる。それは、どこかかしこまって、ひどくありきたりな、退屈な時間をより一層 そうさせるものであった

誰が会長になろうが誰が書記になろうが僕達には関係がない、ただ なりたい人の為だけの時間だ。だから退屈なのだ。…また声が聞こえてきた


「私がこの度  会長に立候補したA子です。

私が当選した暁には




 女子のブルマを廃止し… 短パンにします」

…………………………




………………僕達男子生徒は一斉に振り反って壇上を見た


「(な…何を…言ってるんだ…コイツは…)」


次の瞬間二年女子の一角が 口々に囃し立て歓喜の声を上げていた。「やった~短パン~」「A子ナイスーーー」おそらくこの候補者の娘も二年なのだろう。僕らは呆気にとられ声も出せず  ただそこにいた


他の候補者が「より良い高校生活にします」だの「過ごしやすい環境~」だのを謳っている最中、この娘だけは「ブルマやめて短パン」という具体的かつ、本来僕達には関係がないはずのこの選挙を全くもって当事者にさせるという爆弾を急にブッ込んできやがったアーーーーーーーーこの女ーーーーーーー(涙)



「フ………フザケルなーーーーー💧俺は お…お前のブルマ姿が見たいんじゃねー。可愛い娘のブルマ姿が見たいんだよっ、俺達の体育の楽しみを奪うんじゃねーーーーー,俺達がブルマを見る権利は憲法で保証されてんじゃーーーーーッ」

隣のクラスの不良っぽい男子生徒が急に立ち上がり吠えた



憲法では保証されていないが僕達の心を概ね代弁してくれた

「(そう……男子はブルマが見たいのだ。……いや太腿のつけねまでを見たいのだ)」この候補者の女子や二年生女子の主張によると、ブルマ姿は太腿のつけねまで見えて恥ずかしい為、男女平等の短パンで隠したいのだそうだ



しかし現在はブルマ…太腿のつけねまでを晒すというスタイルだ。これは そこまでを見ても良いという認められた、ある意味 先人達が勝ち取ってきた権利なのだ。いわば国境と同じなのだ。このラインまで認められてきたものが後退するということは………一度手に入れた国土、国境を手放すことと同じである



一度手に入れた領地(つけね)を手放せば二度と元には戻らないだろう。これは 単に在校生の僕達がつけねまでを見たいとかいうスケベ心だけでなく、将来この高校に入ってくる人達の未来(ブルマ)を守る戦いである。絶対に負けられない戦いなのだ………………


…………しかし、僕はふと思った
「(…短パンって…どれぐらいの丈なんだろう?💧)」もちろん当時にも短パンが存在していたが今程普及していなく、また短パンと一口に言っても丈が長いものやダボダボな物まで様々である。もし仮に……この女子達が取り入れようとしている短パンがダボダボであり

三角座りした時に…………もしも……もしも……空いたスペースからラッキースケベ的なものが見れる代物であるのなら…………それはもはやブルマ以上である。だが、候補者の女子は短パンと主張するだけであり肝心の丈や大きさなどには言及せずブルマ廃止を訴えるのみ


…………リスクを負って……短パンをとるか…………安全なブルマをとるか……

僕の心は揺れていた

(…………いや、丈が分からない以上短パンは危険だ。それに小学生女子じゃあるまいし高校生女子がそこまで隙をつくるとは思えん💧ここは安全に……保守的にいこう💧)


僕達 男子生徒は概ねブルマ死守で一致したが、僕達は焦っていた。というのもブルマ死守という考えで一致はしたものの 誰がどの候補者に投票するかなんて分からないからだ💧ブルマ廃止を訴えるA子さん以外に投票はするだろうが会長候補だけでも五人近くいた


いかんせん先の候補者達の演説をきちんと聞いていなかったせいもあり票が割れる危険性が出てきたのだ。一方 A子さん含む二年女子は事前に結託していた為か、組織的にA子さんに投票する動きを見せ,それがより一層僕らの不安を掻き立てた。向こうはまとまってるが、こっちは誰に投票していいか分からない


僕は記憶を辿って A子さん以外の先の二人の会長候補者の演説を思いだそうと足掻いていた。この二人のうち…どちらがより マシなことを言っていたか…どちらがより当選しやすそうか?他の男子達もきっと同じことをしていただろう


無駄に一票を投じてはいけない。絶対に勝てる,もとい 短パンを阻止できる人に投じなくては意味がないのだ


……カツーン…………カツーン…………

カツーン…………


壇上に上がる その男は 酷く痩せ細っていて、分厚い眼鏡をしていた…………


いかにも…………な…………冴えない男であった



「僕がこの度 会長に立候補したB男です。

え~~~僕が 会長に当選した暁には…………




女子のブルマを死守しますっ」




男達「メシアきたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ」