素晴らしい講演と対談でした。
平和をつくる力のあるSW学院大学のサテライトキャンパスに相応しいイベントで、心から感動しました。
第一部 考古学者大塚初重さんの「人は苦境に陥った時こと真価が問われる。」
第二部 五木寛之さんの「強い生き方弱い生き方」
第三部 トークセッション「弱き者の生き方」

 私達への生き方に対する助言に溢れていました。大塚さんも五木さんも勇ましくはないけれど、死に直面する経験を通して、真に強く優しい人々であることが良く分り、たくさんのパワーを頂きました。大塚さんは80歳とは全く思えない気に溢れた人。対照的に、五木さんは淡々と生きている感じなのですが、その中に生きるパワーに満ちた人。僕はどちらかと言うと大塚さんタイプだと思うのですが、どちらもとても好きです。
 そして奇遇ですが、僕とお二人とはNHKのラジオ深夜便で繋がっているようです。
 第一部で、大塚さんがお話してくれた、寿山丸で経験した、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思わせる壮絶な体験。大塚さんは戦友の分まで、必死で生きておられるのだとそのパワーの源が分ったような気がしました。その後の苦労も面白可笑しく話して頂き、前向きに生きることの大切さを再確認しました。
 第二部で、五木さんが話してくださった生き方は、好対照なのですが、いろいろな啓示に満ち溢れていました。
 五木さんは戦争体験から何でも否定的に考えるそうです。「でも何とかなる。そして、上手く行った時の喜びが大きい。」
 また、五木さんは「自分の生きてきた道(歴史)を思い出し語ることが大切で、これが明日への希望に繋がる。」とおっしゃいました。それから、敗戦後の辛いことを思い出したくないので、「ちょっとした楽しい思い出」にオレンジ色の光を見出し、気持ちを和らげること、生きていること自体に価値があること、などを語って下さいました。
 黒木瞳さんの名付け親としての裏話や、「愛の水中花」の作詞を大塚さんがとても羨ましがっていたのもとても印象的でした。それに、五木さんが私と同じく「呼吸法」を健康の秘訣とされていることを知り、親近感を覚えました。
 お二人のお話を聞き、お姿を見ていて、私もお二人のように年を取りたいと思いました。経験した苦労は、お二人の何十分の一かも知れませんが、優しい心とパワーは共通するところがあると思いました。
 それから五木さんが、「自分は日一日変わっているのだから、3年、10年、30年後に読む本は、自分にとっては全く違う本である。」と本の再読を勧められました。僕も五木さんの本をもう一度読んでみようと思います。
 とても心地よい午後でした。


山口実