本日の西日本新聞のコラム「潮流」にロナルド・ドーア(英ロンドン大学政治経済学院名誉客員)氏のエッセイが掲載されています。その副題は「ナショナリズムの波に乗り政権維持」でした。

 その中に、私が日頃から訴えている話が幾つかありました。

「『強く出ること』『毅然とした市政を崩さないこと』『毅然とした姿勢を崩さないこと』だけを是とする、自己主張的なナショナリズムは小人のナショナリズムである。君子の愛国心ちは違う。」

「 英国のナショナリズムを鼓舞して、翌年の選挙に大勝したサッチャー氏をみて、ホンモノの愛国心は何か、英国人としての私は、英国の何を誇りにしていいか、英国という国に対する帰属意識を感じさせている要素は何なのかと自問・反省させられた。 結局、BBCや高級紙などのジャーナリズムの質や、国家医療制度など、社会格差の拡大を防止する諸福祉制度だ。それが私のわずかなる愛国心の根拠だという結論に至った。 外国人の私が感心して、日本人だったら、誇りに思うだろうことは、いっぱいある。文学、美術、工芸や、思いやりを重んじる人間関係など。しして、協力を基調として、株主も経営者も一般従業員をあまり搾取しようとしない企業形態を築いてきたことも。 そのような企業形態が最近、アメリカ型企業形態へ移行しつつある。先日の参画合併簡易化の決定が、その以降を促進するに違いない。外交面ではナショナリズムを貫徹しながら、そのような決定をする安倍政権にどこか矛盾を感じないだろうか。」

 私達日本人にとって、偏狭なナショナリズムに捉われず、もう少し大らかな気持ちを取り戻して、自然を愛し、芸術を愛し、お互いに助け合う平和な農耕民族の精神に回帰することが、日本人としての誇りや自信を取り戻す唯一の方法であろうと考えます。


山口実