http://www.cnn.co.jp/showbiz/CNN200701310009.html
89歳と言う事ですから、正に大往生と言うところでしょうか。合掌。
日本ではアカデミー出版が超訳とか言って、読みやすい本と言う事で評判になり、10数年前日本でもベストセラーを連発しました。
私も何冊か読みましたが、一番記憶に残っているのは、イラクの人質になり水力発電所に連れて行かれる途中に読んだ、「明日があるなら」。私の「人間の盾」言う手記(もうお読みになった方もいらっしゃると思いますが)から、その部分と前後を紹介します。(毎日新聞の写真、真ん中のヒゲのおっさんが私です。)
記
8月25日午前9時半、いよいよ出発。この先何が待ち受けているのやら。日本大使館の人間は誰も来ていない。「これでは、何処に何人連れて行かれたのか、把握のしようがないではないか。」(結局JALのスチュワーデスを除いた邦人全員が各人質先へ連行されたが日本政府は何も把握していなかった。これは当時のラジオ放送や新聞で確認している。)移送用のバスの中には、米英仏独人もいる。彼らは車で炎天下数日かかってバグダッドまで連行されており、疲労の色が濃い。それでもミネラルウォーターを用意していて、私達に分けてくれようとする。とても良い奴らだ。
バスはサダムフセインハイウェーを北上する。一緒に連行された邦人の中には「ひょっとしたらこのままアンマンに向うのでは。」と期待する者もいる。しかし、1時間位走ったところで出くわした左はアンマン、右はシリアと言う運命の別れ道、あっさり右に曲がって万事休す。ユーフラテス川沿いの道を一路北へ。これには皆、本当にがっかり。
バスの中は暑い。物凄く暑い。エアコン付きだが、とっくに壊れたボロ車で、窓も開かない。外は多分摂氏55度位。バスの中は70度近いと思われる。2時間程走ると、皆くたばって声も出ない。バスに乗った当初から「We shall overcome」を口ずさんでいた私は、急遽景気付けに「兄弟仁義」。「親アのォー血をー引ーくゥー、兄弟ィーよりィーもォー。」邦人の誰かが、「山口さん、歌が暑いからやめて下さい。」そう言えば、演歌は真冬向き。
仕方が無いので、持って来た本を読み出す。シドニーシェリダンの「明日があるなら。」これがまた酷い。本の粗筋は「亡くなった夫の経営していた会社を引き継いだ母が、詐欺師に騙されて会社を乗っ取られ、その上横領の罪を着せられる。『何とかその汚名を晴らそう。』と娘のヒロインは釈明文を書かせるべく詐欺師の家に行く。『真実を告白してくれ。』と拳銃で脅すが、もみ合いとなり、詐欺師を傷つける。詐欺師は、ヒロインが『家に押し入って絵を盗もうとした。』と虚偽の証言。ヒロインは強盗傷害事件の犯人として逮捕、起訴される。ヒロインは町の有力者の子弟である婚約者に助けを求めるが無視される。挙句の果て、雇った弁護士の『罪を素直に認めれば、刑が軽くなる。』と言う言葉に騙されて、懲役15年の判決を受ける。」
前編を読んで、「なんや。これは今のわしらと一緒やないか。」最悪な気分になり、本をほおり投げる。(後で気がついたが、後編は警察署長の娘を救助したヒロインが減刑となり、出獄して関係者に復讐をして、大泥棒になると言うもの。そんなん知らんがな。)
それにしても暑い。バスに乗ってから4時間半、もう殆ど脱水状態。さすがの私もダウン寸前となる。「何とかしてくれ。もう死ぬ。」と思った時、ようやく収容先に到着する。(今でもサウナに入るとこの時のことを思い出して、5分といられない。)
山口実
注:全文をお読みになりたい方は、下記のURLをご参照ください。