今週のサンデー毎日、岩見隆夫のサンデー時評に秀明大学教授、マークス寿子さんの新著『日本はなぜここまで壊れたのか』の内容が紹介されています。ここは私のコメントなしに下記を読んで頂き、皆さん一人一人が考えて頂きたいと考えます。
〈通常は、個人の場合でも民族の場合でも、自分が幸福ならば、あるいは希望を持って生活しているならば、「恨みや怨み」は完全に消えてしまわないまでも、人々を過激な行動につき動かすほど強くはならないものである。
ところが、私たちの常識での理解を超えた犯罪は間違いなく増加している。それは、いかに将来に希望がない若い人、自分はダメな人間だと考えている少年及び大人が多いかということを示していると考えるべきであろう。ダメだダメだと思いつめていき、ダメな理由を遠い過去の中に探ったり、他人の幸福をねたんだり、あるいは、せめて悪いことをすることで有名になりたい、テレビに出たいなどと考え、それを心の中で生きるための炎とするのかもしれない。・・・・・〉
〈「平和で豊かな国」という日本のキャッチフレーズ、イメージがここにきて急速にかわってしまった。・・・・イラクに派遣されていた自衛隊員に万一死傷者が出ないようにと慎重に準備し、他国の軍隊に守ってもらう手続きをした政府や政治家たちが、自分たちの足元で起こる殺人や自殺には大した対策も取らないでいるのはなぜだろう。
皮肉に言えば、国や政府のために一人には一人でも死んではいけないが、市民生活で死んだりするのは、政府や政治家の問題ではないと言っているみたいである〉
「それも確かだろう。政府が頼りにならない。隣の人がだれだかわからない。家庭もこわれている。不安がつのるのが当たり前の社会になってしまった。
かつて存在した安心社会は簡単に取り戻せそうにない。それでも、私たちは自分の足元でできることを直ちにやらなければ、状況はますます悪くなる、とマークスさんは警鐘を鳴らしているのである。」
「直ちにやる、ということで、思い出される一つの情景がある。六年前、毎日新聞が企画した〈お徒歩ニッポン再発見〉という旅シリーズで、宮崎県下を三日間あるいたときのことだ。
朝、町でも、行き交う子供たちが、例外なく、「おはようございます」と声を掛けてくる。なんのてらいもなく、ごく自然体で。『やあ、おはよう』とおうじながら、こんないい気分を味わうのはいつ依頼だろうか、と思ったものだ。
旅の途次、当時八十二歳の老知事、松形祐尭さんの話を聞くことができた。
『二千年の歴史と文化、人情があるから、だれしも人見知りしないんです。外国のお客さんもほっとする。朝起きて散歩してみてください。子供たちもみんなあいさつしますから、自然にね。いま失なわれつつある日本人の心が、日向には残っている。おおらかですよ、宮崎は』と松形さんはとつとつと郷土のほまれを語った。
日向に学ぼう、と私は声を大にして言いたい。これなら直ちにできる。」(岩見隆夫さんのコメント)」
山口実