「イラク:バグダッド連続テロ 死者215人、負傷257人」
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20061125k0000m030097000c.html
今のイラクの問題は、複雑になり過ぎて、簡単には解決できません。もつれた糸を一つ一つほぐすように、現存する多くの問題を解決していくしか方法がありません。
1)想像力の欠如
一番の問題は、シーア派とスンニー派、それにクルド族(トルコのと関係も含む)、そして石油の利権、軍需産業の暗躍など、宗教、部族、利権問題が複雑に絡みあった国のたがを安易に外せばどうなるか、容易に想像出来たにも拘わらず、太平洋戦争後の日本の占領パターンを模範として占領政策を進めようとした、超大国の指導者の想像力の欠如がこの悲劇を生んだ一番の原因と思われます。それを支持した日本を含めた有志連合国やその国民にも大きな責任があると考えます。また、それが石油や軍需産業の利権のために意図的に行われたのであれば、最悪と言わざるを得ません。
イラク問題を解決するためには、やはり「これを行えば、どんな結果が出るのか」という想像力が不可欠ですし、その想像力に基づいたVisionの再構築が不可欠だと考えます。
2)大国のエゴと石油利権
イラク攻撃の大義名分たる独裁者サダム・フセインや大量破壊兵器の存在を創り出したのは何かと言うと私はイランのイスラム原理主義革命による湾岸の石油利権の喪失を恐れた大国(フセインを祭り上げたのは、米国であることは否定できない事実です)のエゴに因るところが大きいと考えます。この問題は大国のエゴを取り除かないと解決しません。
大国のエゴは、まさとま君も指摘されるように、歴史的な問題でもあります。
3)軍需産業の利権
石油利権の他に軍需産業の利権もこの戦争に大きく関わっています。今回の戦争と混乱でイラクは、所謂核兵器を除く、その他のあらゆる兵器(劣化ウラン兵器を含む)の実験場と化しています。儲けているのは、各国の軍需産業であり、指導者達はその資金に頼っているのが実情です。現時点では難しいでしょうが、武装解除と武器使用の禁止の努力が重要だろうと考えます。(今更言っても仕方がないのですが、これは湾岸戦争終了の際に可能だったのではないかと思量します。)
4)宗教対立
キリスト教とイスラム教の宗教対立、シーア派とスンニー派の対立が上記の利権問題を含めて複雑に絡まっています。それぞれの原理主義者が決めツケを行い、対立を深めそれぞれの国民や国際社会が、それに乗せられています。
お互い宗教の本来あるべき姿を冷静に考え、対立による武力の使用は憎しみと破壊しか生まないことを肝に銘じるべきです。
5)民族対立
この地域では、クルド族の問題があります。また、歴史的に部族社会ですから部族間の対立多くありました。これが、利権と絡んでいるのですから、解決は容易ではありません。(私は、部族間の対立を収めるためにも、預言者モハメッドが生活の規範をコーランの書き記したのであろうと考えています。)
民族対立を解消するためには、連邦国家の建設しか方法がないように思われます。
6)憎しみ
イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争とその後の占領により、多くの人々が死にました。それに因る憎しみは増大しており、その憎しみは占領軍、特に米国軍に対するものとなっており、その鬱憤を晴らすために弱いものが犠牲になっている面が大きいと考えます。所謂プロのテロリストと憎しみに因り報復や抵抗を試みるものの区別がなくなっているのが、問題解決をより難しくさせているのです。
私は、有志軍は一旦撤退すべきだと考えています。その上で、状況を見て国連軍の派遣を考えるべきだと思量します。手遅れの感も強いのですが、イラクの人々の手に国の行方を任せるべきです。
7)格差と貧困
貧困が暴力を助長しているところがあります。イラン・イラク戦争前は中東で最高の外貨準備高を誇っていたイラクの人々が貧困に喘いでいます。その主たる原因は度重なる戦争です。莫大な戦費と再建費用が、本来富んでいるべき国民を貧困で苦しめているのです。
ご存知の方も多いと考えますが、私は上記のことをイラク戦争の開戦前から考え、戦争回避を訴えていました。実際には、湾岸戦争以降同じ考えを持っており、世の中の人々に色々な形で訴えていました。
対立が憎しみを生むことは容易に想像できます。武力の行使が破壊や憎しみの増幅を生みます。また、それに因る浪費が貧困を生み、紛争に輪をかけます。この地球に住む人間一人一人が、もう一度互助の精神に立ち戻って、非暴力平和主義を貫くべきだと考えます。その実現を難しくしているのは、私達の想像力の欠如と意志の弱さであることを肝に銘じるべきだと考えます。
現状の責任の多くは、利権や権力に執着する一部の指導者達にありますが、その指導者たちを頂く私達にも十分責任はあります。イラクの現状が他人事でないことをしっかり認識することがこの問題の解決には不可欠です。
山口実