安部晋三官房長官が「自民党総裁選で日中関係改善を目指すことを柱とした『戦略的アジア外交』を提唱する方針を決めた」との事です。http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006082301004338.html
もっともなようですが、少しピントはずれの気がします。なるほど外交戦略は必要不可欠なのですが、その前に必要なのは互いの信頼関係です。日中関係は、信頼関係の再構築なしには、お互いの一方的な主張を繰り返すだけで、解決の道は開けません。
言い換えれば小泉首相の好きな「心の問題」を分かり合うことが大切です。残念ながら、この数年間お互いの「心の問題」は話し合われず、放置されて来ました。「心の問題」があるなら、言葉を尽くしては説明し、話し合うことが不可欠であったにも拘わらず、両国のトップ同士がそれを行って来ませんでした。そしてそれは、中国の一方的な都合と言って放置するには余りにも大きな問題でした。
アジア外交で重要なのは、胸襟を開き合って話し合うこと、相手の懐に飛び込んで信頼を得ることです。民間は苦労しながらもそれをやって来ました。なぜ政府や外務省がそれをやれないのでしょう。
相手が不快に思うのが明らかなことを「心の問題」とか「反日教育」とか言うone phraseで片付けて、繰り返せば、どんな外交戦略を駆使しても関係は改善されません。留学生の受け入れ枠を増やさなくても、既に多くの留学生が来日しています。また、民間の経済連携も図られています。
今必要なのは日中政府首脳の信頼関係の再構築です。その為の話し合いの場を作るためには、どうすれば良いのか、聡明なリーダーなら理解しているはずです。
山口実
P.S.先日、中国の方とのトラブルの話を聞きました。「相手が話を聞かず、ホテルのフロントでわめいている。」との事でした。しかし、良く話を聞くと、支払い上のトラブルの原因がこちらのコンピューターシステムの不具合にあり、その解決策もこちらの都合に合わせたもので、その説明も十分ではありませんでした。相手が怒るのは当たり前で、話は平行線になっていましたが、ちょっと相手のことを考えるだけで解決しました。もちろん、外交上のことは表面上の面子もあるし、こんなに簡単ではありません。また、相手が本当に理不尽な場合もあります。しかし、お互いに大切な隣人であることを認識し合い、言葉を尽くせば、必ず解決策は見出せます。