額賀防衛庁長官や安部官房長官や麻生外務大臣が日本の敵国に対する先制攻撃に関するコメントを述べています。また、国連安保理での制裁決議でも、日本の強硬姿勢ははしゃぎ過ぎのように思われます。久しぶりの外交舞台で興奮の絶頂なのでしょうが、ここは冷静に考えることが肝要です。
16年前、湾岸危機の際、当時の中山太郎外務大臣がイラクを除く中東諸国を訪問した帰途に、ストックホルムで「日本は自衛隊を派遣する事を検討する」と発言しました。私には初の晴れ舞台でのはしゃぎ過ぎた言動に思えました。そして、この直後にクウェートの日本大使館で篭城していた私達はイラク軍に包囲され、仕方なく出て行ったバグダッドで人質として拉致されました。その際、パスポートを取り上げられイラクの秘密警察官と見られる人間に「自衛隊を送る日本は敵だ。お前達は人質だ。」と言われました。
ミサイル発射をさも戦闘行為であるかのように公言し、先制攻撃の議論を進める事が、北朝鮮の暴発を惹起させる大きな危険を生む事を私達は良く認識し、覚悟すべきです。(覚悟がないなら、少なくとも公の場での勇ましい言動は慎むべきです。) また、現状では(おそらく将来的にも)北朝鮮が本気で日本を狙ってミサイルを発射した場合、それを完全に打ち落とす事は出来ないことも良く認識すべきです。
一方で、私は国連で中国を追い詰める形になっていることに大きな危惧を覚えます。私は北朝鮮の政権に外交的に引導を渡せるのは中国のみだと考えます。もちろん、米国が武力を行使すれば、体制を転覆する事は出来るかもしれません。しかし、その場合はイラクの二の舞で、北朝鮮の国民のみならず日本・韓国も含めた他国の国民に多大な犠牲を強いる事になるでしょう。制裁を行うにしても5カ国がしっかりとした結束の元に行わなければ、形だけで意味がありません。
従って、強攻策一辺倒ではなく、中国やロシアを上手く巻き込む形の対抗策を打つ事が不可欠だと思量します。
ここは日本政府も国民も、飽くまでも冷静に!
山口実