期待通りの素晴らしい講義でした。もっともっと聴いていたいお話でした。

物事を多面的に考えられるセンスと、映画で自分の考え方を表現する情熱・努力は、やはり秀逸な監督さんであると大変感銘を受けました。

 学生や教授からの紹介などで、1時間位の講義になってしまったのが、申し訳ないと言うか、とても 残念でしたが、若者だけでなく私達にも複眼的な視点を与える啓示に満ちたお話でした。感銘を受けた主なものを紹介すると、

)自分達でお金を集めて映画を作り配給することは、骨の折れる仕事だがやりがいがある。報道などで伝えられない、メッセージや感動を伝えることが出来る。

)映画業界には著作権協会のようなものがなく、作品が使われても権利に対するロイヤリティーが入らない。

)超大作と言われる作品も、制作費の中にその三分の一の宣伝費が含まれている。

)Film で映画を撮るのが一番きれい。日本の映画業界だけが、7~8割ハイヴィジョン・デジタルカメラで映画を撮っているが、勘違い。喧伝されているジョージ・ルーカス監督が使った6倍速デジタルカメラは、その映画のためだけに作った特殊仕様のカメラである。(日本映画だけがデジタルビデオを多用している事を嘆く監督の姿は、生音に拘る角松ちゃんと合い通じるものがありました。)

5)白い船の航路は博多―直江津間。

6)白い船で航海をした時、船長から聞いた「海運が日本の総輸送量の4割強。海外はそれ以上だ」という話。また、雨が少なく台風も来ない島根のリゾートのような夏が一般では寒いと思われていること、島根の海はコバルトブルーなはずがないとの指摘されることなど、既成概念にとらわれてはいけないと思った。情報社会で私たちが得ている情報は2次、3次、いや4次情報かもしれない。

7)まずキャステイングありきで、資金や配給までテレビ局に頼っている多くの映画は儲かっているとは限らない。連日テレビなどで見て、私たちがヒットしたと思い込んでいる。

8)昔は、メッセージを伝えていた日本の映画は、現状では娯楽ビジネスになっている。9)映画業界自体がビジネススキームを暗中模索中であるが、テレビで大量のCMを打たずとも、口コミで13週目の売り上げがピークを迎えた映画「白い船」は新しいビジネスの形。

10)ミラクルバナナの撮影秘話。

   ・インターネットでハイチと検索すると、その数はハイチオールCが出てくる。

・穴ぼこだらけの道路に失業率70%の人々がたむろする。水道のインフラも駄目。

AIDSの施設で会った少年から、「60年前戦争でボロボロになった日本が、ロボットの犬を飼うようなハイテク国になった。どうやったらそうなるのか?」と聞かれた。彼は自国を憂い、自分より不幸なストリートチルドレン達のためにどうすれば良いかを聞いてきた。

・日本の戦争直後はハイチや隣国のドミニカより酷かったが、40年で国は逆転した。

・ハイチはフルーツジュースがとても上手いし、野菜は甘い。電気や水道な

いので、日が昇り、日が暮れるまでを楽しむ生活である。それでもハイチの人々の表情は豊かだ。食べ物が美味しく、空気のきれいなハイチに比べ、食料自給率40%の日本は果たして豊かなのだろうか。

・5ヶ国語を操り、国連の親善大使を務めたアドゴニーが、一緒に出雲に行った時子供達が深夜コンビ二にたむろしているのを見て、「やっぱり監督、日本には田舎はない。しかる親も、おじいちゃんもいないし、コンビにも従業員も怒らない。」

コンビ二に島根のものはない。足元が崩れていることが、分からない。

11)そのほか、教えない映画塾の話(私も講師として参加できるかも知れない。)や新しい映画「うん、何?UN-NAN? やまたのおろち伝説~」のお話も聞きました。

もっともっとお話を聞きたかったです。今度は2コマですね。(笑)

夕方夕食を長浜のざうお(以前紹介しました)で鈴木プロデューサー3人一緒に食べて、熱く語り合いました。とても幸せ! もちろん主題歌smileと音楽は監督のお気に入り。


山口実

P.S.じっくりお話するのは2度目でしたが、鈴木プロデューサーも本当に素晴らしい人。監督共々、惚れちゃいました。