1)改憲の理由
a)自主憲法の制定:
改憲論者の多くが「今の日本国憲法は米国に押し付けられたものであるから、自主憲法の制定が不可欠である。」と唱える。しかし、一方で日米軍事同盟の強化を唱え、米国の世界戦略をサポートするための改憲には概ね肯定的である。今、米国政府は日本の海外派兵と武力行使を可能にするために、非常なる改憲圧力をかけて来ている。それに追従するのは、改憲勢力の大いなる自己矛盾である。
b)自衛隊の合法化
また、改憲論の中に、「自衛隊の存在を合憲とするために、改憲(9条の改定)が必要である。」と言う。しかし、憲法制定の精神を考えれば、現状に合わせて改憲すると言うのも本末転倒に思える。この60年間、日本が平和憲法に守られて、色々な紛争に巻き込まれず発展してきたことを否定する人はあまり多くはないだろう。自国の防衛は、独立国にとって当然の権利である。しかし、海外に自衛隊或いは自衛軍を派兵し、紛争に巻き込まれたり、現地の人々を紛争に巻き込むことは平和憲法の精神反する。
c)時代に合った憲法の改定
本日の西日本新聞に福岡在住の外国人の若者の改憲に関する意見が掲載されており、概ね「時代に合わせた改憲」に肯定的であった。しかし、憲法の定義や意味の理解があいまいであるように思えた。憲法は通常法ではない。従って、時流に媚びて変えるものではな いし、簡単に変えられるべきものではない(逆に言えば、一度変えると再度変えるのは大変難しい)と考える。
d)邦人保護
「今の憲法では、危機に陥った邦人の保護も出来ない。」と言う意見を聞く。これを「全く間違いだ。」とは言わないが、その前にやるべきことはたくさんある。まず、現地での情報(或いは諜報)ネットワークの構築である。紛争が起こる前には必ず前触れがある。その情報を的確に把握していれば、殆どの危機は回避できる。しかし、外務省には情報収集能力が殆どない。これを改善することの方が、改憲よりずっと重要である。また、不十分な情報に基づいて自衛隊(あるいは軍)を送れば、邦人の生命の危険が逆に増すことは論を待たない。
また、現地にしっかりした体制を強いておけば、紛争時の邦人の避難ルートや方法は確保出来る。それで、もし万一人質になった場合でも、警察力で対応は出来る。これらの方法で解決出来ないことは、私の経験から言って、軍隊を送っても解決は出来ない。今のイラクの状況を見れば良く分かる。
2.理想の現日本国憲法
私は、憲法はその国が理想とする全ての根幹となる法律であると考える。
また、移り変わる「時の政権」の暴走を抑制するものであり、現状に合わせて変えるべきものではない。現状が憲法に合わぬなら、時間をかけてでも憲法に現状を合わせるというのが、私達が本来やるべきことである。私は、今の日本国憲法を守ることが日本の将来を守ることになると信じて疑わない。憲法論議を深めることは大切である。それは今の日本国憲法の素晴らしさを私たち自身が理解することに繋がるからである。しかし、改憲を前提として議論をし、重箱をつついたり、平和憲法の精神を踏みにじるようなことが、絶対にあってはならない。
山口実
P.S.参考までに、各新聞の憲法に関する記事をお読み下さい。
東京新聞:http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060503/col_____sha_____001.shtml
西日本新聞:(この社説は教育の憲法と言うべき教育基本法について書いています。): http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20060503/20060503_001.shtml
神戸新聞:http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0000025885.shtml
河北新報:http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2006/05/20060503s01.htm
毎日新聞:http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060503k0000m070146000c.html
読売新聞:http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060502ig91.htm
(これは小沢民主党への改憲論議の呼びかけ)
残念ながら、朝日新聞は憲法に関する社説を掲載していません。