昨日の西日本新聞の朝刊に「在日米軍再編最終報告の全文」が掲載されていた。

今後充分検証し、議論して行く必要があるが私たち国民が認識しなければならない大きな問題があるので、内容を引用しながら指摘したい。


1.日米軍事同盟の更なる強化と日本の肩代わり

 共同発表の文言の中に

「この同盟関係は世界の安全保障環境における変化に成功裏に適応してきており、引き続き、将来の課題に対応するため、より深く、より幅広く発展していく必要がある」とうたわれている。これは、「米国ブッシュ政権の新保守主義に基づく海外派兵を日本が全面的に支持してきたこと、今後その支持・協力を強化・発展させること」を意味する。更に、

「この文脈で、閣僚は、変化する地域及び世界の安全保障環境において、確固たる同盟関係を確保すると共に、さまざまな課題に対応するよう同盟の能力を向上するために、安全保障・防衛協力のあり方を検討する重要性を強調した。」と書かれている。これは、「日米軍事同盟を更に強化し、日本が『米国が考える世界の安全保障』を推進する為に、憲法を改定し、海外派兵を勧めて行く。」と言う風に読める。

 つまり在日米軍再編は、米軍の再編だけではなく、日本の自衛隊(或いは自衛軍)が米国の世界戦略の尖兵として組み込まれることを意味する。

 こんなことをいつ私たち国民が承認したのであろうか。


2.在日米軍再編に関わる施設整備費用の青天井の負担

 最終報告には「これらの案の実施における施設整備に要する建設費その他費用は、明示されない限り日本国政府が負担するものである。米国政府は、これらの案の実施により生ずる運用上の費用を負担する。」と明記されている。

 これは、米国が必要とする施設整備の費用は制限なしに日本が負担することを意味する。金額を入れない日本政府保証の小切手を米国政府に渡したことになる。

つまり、3兆円掛かろうが、4兆円掛かろうが米国政府の言いなりになると言う事だ。そして、上記1に示される通り、この再編は極東の防衛に留まらず、米国の考える「世界の安全保障」のためであり、そのための設備整備の費用は日本が全て持つと言うことである。

 事実、ローレス国防次官の会見後、「3兆円は米国国民向けの数字」との報道や安部官房長官のコメントがあったが、今は「3兆円」が既成事実のように報道され、政府は如何に負担するかと言う議論に入っている。


これらにより、大変危惧されることは日本に対するアジア諸国やイスラムの人々の反感の増大である。日本人や日本施設に対するテロの危険は今までになく増大するであろう。

同時に、大増税の波も押し寄せてくるであろう。昨日、ガソリン代がまた上がった。そのガソリン代やその原油の輸入に既に高額の税金が掛かっていることを国民は気づいているのであろうか。また、昨日第3のビールも増税の対象となった。毎年、毎年、いろいろな形で税金が増え、社会保障費が削られ、「世界の安全保障」の前に、多くの国民が重税にあえいで生活の安全さえ確保できない社会になるのではなかろうか。


 上記を考慮すれば、中国や韓国との対立を煽る外交と北朝鮮の核問題や拉致問題に冷徹な政府のやり方は、なし崩し的在日米軍(と言ってもグアムは米国なのだが)再編の費用負担や日米軍事同盟強化の為の伏線であったと言って間違いないだろう。

 

何と一般市民が住みにくい世の中になったものだ。そして、それに未だ気がついていない国民が多いと言うことに底知れない悲しみを覚える。


山口実