この5年間「改革」と言う言葉がもてあそばれて来た。

果たして「改革」とは何ぞや?

三省堂の大辞林によれば

(1)基盤は維持しつつ、社会制度や機構・組織などをあらため変えること。
「役所の機構を―する」
(2)よりよくあらためること。
「お花は家政の―を名として/姉と弟(お室)」


改革とは「基盤を維持しつつ、社会制度や機構・組織などをより良くあらためる変えることである。」

改革と破壊とは違う。よりよい制度や機構・組織に就いてのヴィジョンがなければ、単なる破壊に過ぎない。つまり、このヴィジョンのなさが、現政権の致命的な欠陥と言える。また、「官から民へ」と言いながら、「官僚」を守り、それに頼りきっている点も大きな問題である。

しかも「改革の仕上げ」が、公務員を5年間で5%削減と言うのだから、「改革」が聴いて呆れる。(40年で定年を迎えるとしても、計算上自然減だけで2.5%の自然減がある。民間の多くはただ呆れている。)

この5年間の問題点を少し考えてみよう。

A)外交

・外務省改革はどこへ行ったのか?概ね自分達のことしか考えず、情報収集能力と行動力のない「外務省」のお役人達とその組織の改革はどこへ行ったのか?もし、素晴らしいリーダーがいたとしても、入って来る情報が間違っていれば、判断は間違う。

・国連安保理常任理事国入りの問題はどうなったのか?あれだけ札びらを切り、各国駐在日本大使達を招集し、総動員体制をかけながら失敗したのだから、そのことに就いてのしかるべき説明が国民にあって当然である。そう、小泉改革のもう一つの欠陥は国民に対する説明責任を果たしていないということだ。

・ギクシャクした外交は大きな問題である。東アジア諸国との関係、イスラム諸国との関係は最悪と言える。米国との関係にしても、ブッシュ政権が崩壊すればどうなるか分からない。特に、極端な対米追従が日本の外交の貧困を招いていると言える。

・安保政策 しっかりしたヴィジョンのない対米追従の安保政策が、更なる財政負担を招いている。

・テロ対策に名を借りて、国際紛争の火種をばら撒く米国をひたすら支持すればどうなるのか、国民の立場に立って考えるべきである。

B)内政

・税制の不平等 大企業ばかり焼け太って、国民には重税を強いる。税制の不平等を改革することなくこの国の再生はない。

・金融政策 これまた大企業やサラ金のような儲かる会社を優遇する銀行を野放しにし、外資に頼る(or 外資を助ける)金融政策は大きな問題である。

・不良債権の処理はまあ良しとしても、残った国の債務はどうするのか。デフレ脱出を叫ぶが、利上げになった場合の国債の利払いは大きな負担となる。

・社会保障 世界に有数たる経済大国が社会保障は欧州の諸国にはるかに及ばない。改革は社会保障を充実させることから始めるべきである。

・労働力の確保 将来の少子化への対策が殆ど取られていない。付け焼刃の給付金を払うだけでは快活で着ない。女性の社会進出、中高年の労働力活用、外国人労働者の雇用対策、どれをとっても不十分としか言えない。

・治安の悪化 この問題も改善すべき非常に重要な問題である。

・環境問題 地球温暖化の問題で、日本は米国と中国の首に鈴をつける役を果たすべきだ。

・役所の改革の問題、看板だけ民営化しても、実質的な改革がなければ、組織の温存でしかない。道路公団しかり、郵政しかり。ヴィジョンの描けぬ「改革」は、改革にはならない。

・自己無責任 自己責任を云々する前に、行政は自己責任を果たせ。保身の為に、国民にその責任を果たさぬ役人は"公僕"としての原点に戻れ!


まだまだ問題はあるが、ことほどさように改革のやり方を間違ってはいけない。もう一度言うがヴィジョンのない「改革」は破壊でしかない。5年間小泉内閣が、破壊を進めたことだけは認めよう。

山口実