彼は天才です。異星人と呼ばれることもあります。しかし、今回のWBCの活躍で、彼が努力の人で、何より野球を心から愛している人間だと言うことが世の中に知れ渡ったことでしょう。
イチロー選手にはいろいろな逸話を聞きます。私はその全てを信じていますし、尊敬しています。彼が追求していることは、野球道と言って過言ではないと思います。それは、宮本武蔵が剣の道を極める為にその生涯を捧げたような崇高な世界です。
私が見聞きしたイチロー選手の逸話のいくつかを紹介します。
・ イチロー選手は小学校時代、チチローとバッティングセンターに通い、出来るだけ早い球に対応する為に、バッテイング・ポジションを前に前に移動していたら、最後は1/3のところで打っていた。(これが、大リーグの投手の速い球に対応できる素晴らしい動体視力を作ったのでしょう。多分彼には猛スピードで通り過ぎる電車に乗っている人の顔が見えるのではないでしょうか。)
・ 愛知工業大学名電高校の時の平均打率が6割を超えていた。(彼は高校時代から「ヒットならいつでも打てる。」と公言していたそうです。
・ 高校からドラフト4位でオリックスに投手として入団。(彼もレーザー・ビームと呼ばれる肩は、投手時代の投げ込みから来ているのでしょう。日本のオールスターでも投手として登板したことがあります。140KM の後半を楽に出すらしい。)
彼を見出した三輪田さん(残念ながら、後に新垣投手のスカウト問題で自殺されましたが)は素晴らしいスカウトです。イチロー選手は今でも感謝しています。
・ オリックスで当時の土井正三監督に干されて2軍にいた頃の打率は5割を越えていた。
(多分「ヨイショ」が下手で干されたのだろうけれど、仰木彬監督に一軍に引き上げられ、名前を鈴木一朗からイチローに変えてからの活躍はご存知の通り。http://www.lun-lun.com/nagae/itirou/in.htm
今回の活躍は昨年なくなった仰木さんの追悼の意味もあったと思います。)
・ 試合前後での野球道具の入念な手入れは今でも欠かさない。(まさに剣豪の世界)
・ 豹をイメージした走塁。(今回最終回に追加点を取った後、福留選手の単打で2塁か らかえって来た姿は豹そのもの)
・ 彼は記憶力が良いので、CMでのNGがない。(一般にスポーツ選手のCMはNGだらけ)
・ 大リーグで1941年以来の4割打者を実現できる選手がいるとすれば、イチローのみ。
(日本プロ野球でも、大リーグでもいろいろな記録を塗り替えて、WBCでも勝って、次の彼の目標は4割とピート・ローズの安打記録でしょう。)
こう書いていくと、何でこのブログでイチロー選手の話を一生懸命書くのかと疑問に思う人がいると考えますので、一言説明します。
今回の活躍で、彼のにわかファンになる人も多いと思うのですが、彼が野球の天才である前に努力の人であること、道具と技術を大切にする職人であること、いつもファンサービスを心がけている本物のプロであること、それから何より国境を越えて野球ファンに夢を与える素晴らしい野球選手であることをしっかり噛み締めながら、彼の今後の活躍を祈って欲しいと思うからです。間違えても、彼の崇高な求道精神やファイティング・スピリットを日韓問題(日韓双方が)の道具に使ってはならないと考えます。
山口実
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060322k0000m050083000c.html