いろいろ書いているが、私は個人的に米国を嫌っている訳ではない。海外で一番長く住んだ(5年以上)国であり謂わば第二の故郷であるからとても好きな部分も多い。しかし、一方で歴史的、文化的に考えて私たち日本人が近いのは米国人ではなく、東アジアの人々だと思う。言い換えれば、「私たちが米国人の真似をすることが私たちにとって良いことなのか?」と言う疑問を持っっている。
私が米国を好きな理由の一つに懐の深さがある。懐の深さにはいくつかの理由がある。1.国土が広大で豊かである。2.歴史的に移民で作られた国であり、そのための苦労を味わってきた国であるから、国際的民主主義的許容力がある。3.色々な文化を受け入れ、その良い部分を取り入れている。4.自立心が強い。5.しっかりした2大政党制がある。5.ジャーナリズムの独自性が強い、など。
今日は最後の「ジャーナリズムの独自性」に就いて少し考えてみようと思う。私はこのことが米国の民主主義を支えてきた最大の要因で、残念ながら日本には欠けている点ではないかと考える。もちろん、米国も9.11以降に愛国的傾向が強まり、ジャーナリズムもそれを煽った。しかし、ようやくその呪縛から解放されようとしている。
このジャーナリズムの独自性はどこから来るのかと言うと私には持論がある。それは、各都市・地域の新聞が独自の論戦を張って来たことが大きな理由であるとの考えである。ニューヨークタイムズ・ワシントンポスト・シカゴトリビューン・ロスアンジェルスタイムズなどなど、日本の人々にも親しみのある新聞社が独自の考えを打ち出して来た。日本の読売新聞や朝日新聞のような圧倒的な購読者数を誇る全国紙がない分、読者に媚びる記事を書かなくても良かった。私はこの米国の独特の地方新聞の経験と実力が米国民主主義の根本ではないかと強く感じている。
一方、日本はと言うと商業紙では読売と朝日の2大新聞が購読者獲得争いをしていて、どんどん似通って、ジャーナリズムの独自性を失っている。テレビも国営(公共)放送と新聞社系列の放送局で同じ論調の報道を流している。
私は、以前から周りの人々に地方紙を読むことを勧めている。最近のインターネットの発達で、手軽に地方紙を読むことが出来る。西日本新聞、中国新聞、神戸新聞、中日新聞、河北新報、北海道新聞等々、それぞれ独自の特色を持っていて、とても面白い。また、読み比べるとより真実に近い情報が得られる。
皆さんにも、出来るだけ地方紙を読むことをお薦めします。そうすれば、もう少し民主主義が分かったような気持ちになれますよ。
http://www.st.rim.or.jp/~okbys/tihousi.html山口実
P.S.全部読むのは無理ですが、疑問に思う報道があれば、その関連ニュースを数誌読み比べてみるとか、主要問題に就いての社説を読み比べてみるとか、すると結構勉強になります。