ムナーリの創造の小径

このブログは、ブルーノ・ムナーリの作品をあれやこれや取り上げ、発想の独創性と、その着想が結実した作品のユニークさを探る、ショートトークです。

 

『赤と白の読めない本』(1954)

ここに『読めない本』という奇想天外な本があります。イタリア語の原題は、Libro illeggibile(読むのが難しい本)となっています。日本語訳では『赤と白の読めない本』としました。

なにが奇想であるかというと、冒頭から最終頁まで、この本には一つも文字がありません。本は、文字が印刷されていて、読むものという常識を退けているからです。

中身は、赤い紙と白い紙が交互に綴じられていて、赤い紙も、白い紙も、さまざまなサイズで切り離されています。頁をめくるたびにサイズの異なる紙と色の組み合わせで、人はイメージを掻き立てられます。言葉による説明では分かりにくいですが、添付の画像を見ると、すぐわかります。

この本は、理性ではなく、感性で読む本です。白い紙と赤い紙が織りなす万華鏡と言えるでしょう。ムナーリの《天外的な》発想の奇抜な作品です。

アメリカの小説作家、リンド・ウォードに、挿絵だけで、文字のない『狂人の太鼓』(1930)という奇抜な小説があリますが、ムナーリの発想の原泉とは異なるものです。