飛行機に乗っていた。
プロペラエンジン四基の小さい飛行機。
恐らく国内移動のつもりだったのだろう。
搭乗して窓側の席につく。
乗客は定員を二割ほど下回るほどしかいない。
エンジンが唸り機体が滑走路に向かって動き始めた。
シートベルトの確認をするCAが俺にそっと囁いた。
「実は今、谷川機長が管制塔と協議中なんですけど、まだどの滑走路を使うかで意見が分かれているんです」
俺はそれにこう応えている。
「普通はCだよね、ここのコンディションなら」
CAも俺の言葉に頷いた。
AとBは滑走路が長く主にジェットエンジン機用に使用される。
それに対してC滑走路は短く、機体の小さなプロペラエンジンの場合、通常ならCを指示される。
それがまだ協議中ということは、考えられるのはただひとつ。
何らかのアクシデントがC滑走路に起こっている。
「管制塔は何て言ってるの」
俺はどうやらこの航空会社の関係者らしい。
俺の問いにCAは眉を顰めた。
「AかBを使えと」
「タイミングが難しいね。ジェット機がバンバン離着陸している中じゃね」
結局機長の判断で俺たち乗客は一度降ろされターミナルに戻ることになった。
安全を最優先すればそれが妥当なところだろう。
俺は気持ちを切り替えて、ターミナルにあるうどん屋に向かった。
軽く何か腹に入れておこう。
そう思い、きつねうどんを注文した。
出されたうどんは明らかに乾麺を湯戻ししたらしきもので、しかも茹で過ぎたせいか柔らかかった。
出汁はインスタントの味がした。
食べ終えてレジに向かうと、店員が俺にこう言った。
「有り難うございます。三千七百円になります」
耳を疑いながら五千円札を出したが、やっぱりお釣りは千三百円であった。
「これ、間違ってないか。俺が食ったのはきつねうどんだよ」
そう言うと店員は怪訝そうな顔をして一度店の奥に入り、店長らしき男を伴って現れた。
「お客様、どうされましたか」
「別にどうもしてないさ。茹でた乾麺のきつねうどん一杯が三千七百円って、おかしくないかなと思っただけだ」
驚いた顔でレシートを睨みつけた店長は俺にこう言った。
「お客様、誠に申し訳ございません。金額が間違っておりました」
「だろうね。で、本当はいくらなの」
「はい、三万七千円になりなります」
驚愕のあまり何も言えない俺の代わりに店員が言った。
「店長、どう考えてもこの店は価格設定がおかしいですよ。うどん一杯が三万七千円なんて、そりゃお客様も驚かれますよ。だから私、勝手に一桁下げたんですよ」
俺は店内に貼り付けてある値段表を指差した。
「あそこ、三百七十って書いてあるんだけど」
そう言うと店長は満面の笑顔でこう応えた。
「はい、確かにそう書いてあります。三百七十、ドルと」
このやり取りを聞いていた他の客が仰け反っている。
彼は天ぷらうどん定食を注文しており、その値段は千五百。
つまり十五万円。
「こんな法外な値段つけやがって。必ず問題にしてやるからな」
そう言いながら俺は渋々クレジットカードを出した。
そして目覚まし時計が鳴り、夜中の三時に俺はこの悪夢から解き放された。
夢で良かった。
きつねうどん一杯で三万七千円もふんだくられるなんて、例え夢でも許せない。
しかしどこかでは、いずれそんな日が来るのかも知れないという不安を感じている。
さ、サッカー見ようっと。
