~ 日本経済低迷の根本原因も少子化
~
「極度の悲観論」=世界経済がクラッシュする=は後退したが、依然として景気回復が世界的な政治課題だ。しかも世界同時不況とは別に、日本経済は長期的な低迷から未だ脱しておらず、まさに内憂外患だ。
世間一般でははっきり認識されていないかもしれないが、少子化と日本経済のトレンドは表裏一体だ。少子高齢化こそが日本経済の構造的・根本的な欠陥だからだ。より正確にいうと、労働人口の減少が問題だ。
坂道を転げ落ちる日本経済とは対照的に、これからの50年で世界を引っ張ると期待されているBRICs諸国、ブラジル・ロシア・インド・中国はすべて人口大国だ。グローバリゼーションが進行すれば、人間の潜在能力に大差がない以上、一人当たりの生産力は自然と均衡する。技術の進歩と拡散速度のバランスにおいて、拡散速度が上回れば、国力を決める要素として人口がより重要になるのは、歴史的に繰り返し見られてきた現象だ。
先進国=日米欧=の中では、アメリカだけが人口が増え続け、経済大国として存続すると言われている。移民の流入と、最近入ってきた移民=ヒスパニック=の出生率が高いからだ。逆に人口が減少に転じる日本には、誰もが相当悲観的だ。
~ 少子化問題の解決は即効性のある景気回復策 ~
無論、こんなものは単に今のトレンドを無理無理将来に引っ張ってみた荒っぽい予想にすぎない。だが、経済活動とはすべて予想に基づいて行われるものであって、「萎びていく」というレッテルを貼られた国に投資しようなんて誰も思わない。そんな国には新しいオフィスビルも、ショッピングモールも、道路も、何もかも不要ということになる。そうなると足下の就労機会もなくなってしまう。つまり不況になる。
ではもし日本の少子化が止まり、人口一億二千万人の均質な国家が長期にわたって持続可能であると言うことになったらどうなるか。これは少なくともここ20年で一番の「ポジティブサプライズ=うれしい驚き」で、世界の日本に対する評価は劇的に変化する。日本を無視、あるいは撤退していた資本が日本に戻り、それだけで相当の経済押し上げ効果を期待できる。しかもそれは一時的なものだけではない。
ここで重要なのは、日本の少子化が止まったと多くの人が確信することである。「今年は出生率がなぜか上向いた」というような話では、意味がない。また、現実に少子化がとまったと確認するには、少なくとも10年程度、出生率が2.1を上回るなど、長期的な観察が必要であるが、経済活動は予測に基づいておこなわれるので、多くの人がそれを「確信」すれば十分だ。つまり少子化問題が解決可能と思えるだけの社会的な仕組みをつくれるか、それを維持推進する政治的リーダーシップがあるかがポイントとなる。
~ 移民の受け入れは少子化対策の代替にならない ~
労働人口の維持が、経済規模の維持、つまり持続可能な経済につながる、として、主に財界の代弁者から大規模な移民の受け入れという解決策が提唱されている。世界人口は増えているのだから、数字だけでいえば、他から連れてくれば「日本列島に住む人間」の数を維持することは可能だろう。
しかしこれは歴史・社会に対する洞察を欠いた安易きわまりない暴論で、あたかも皮膚炎にステロイド剤を塗りまくるのと同じ、つまりそのときは良くても取り返しが付かない結果を招くだろう。1500年前、まだ民族概念が確立されていなかった飛鳥時代に帰化人を大量に受け入れて以降、日本は大規模な移民を受け入れたことはない。移民政策は人口維持と引き替えに大混乱の種を蒔くことになり、少子化を止めた場合のような日本見直しには必ずしも繋がらない。
~ 少子化問題の解決は子供を育てるライフスタイルの確立 ~
少子化問題について、主要政党はそれぞれマニフェストで対策をうたっているが、見れば分かるように、基本的にばらまきだ。
・自民 3~5歳児の幼児教育無償化
・民主 子ども手当創設と出産一時金拡充
・公明 幼児教育無償化と児童手当の拡充
・共産 公的保育充実と子どもの貧困克服
・社民 医療費無料化と子ども手当創設
ばらまき政策は、せいぜいやらないよりマシという程度であり、ここから少子化問題の解決までの戦略=ストラテジーは見えてこない。
少子化問題を解決とは、国民の一人一人が、子供を育てるライフスタイルを確立するということだ。子供がいる人生といない人生では、時間の使い方、お金の使い方はもとより、自分の一生の価値をどこに置くかという点からして大きく異なる。子供がいる大多数の人は、結局の所、人生に使えるリソースのかなりの部分を子供に投入することになり、また自分の人生の意義としても、子供を育て上げたことが大きなウェイトを占めることになる。
エコカーや地デジ対応テレビへの買い換えであれば、金銭的なインセンティブによってある程度の効果が期待できる。だが、ライフスタイルそのものの転換が必要な子育てでは、直接的な金銭インセンティブの効果はずっと小さく、根本的な解決にはならない。
つづく
「極度の悲観論」=世界経済がクラッシュする=は後退したが、依然として景気回復が世界的な政治課題だ。しかも世界同時不況とは別に、日本経済は長期的な低迷から未だ脱しておらず、まさに内憂外患だ。
世間一般でははっきり認識されていないかもしれないが、少子化と日本経済のトレンドは表裏一体だ。少子高齢化こそが日本経済の構造的・根本的な欠陥だからだ。より正確にいうと、労働人口の減少が問題だ。
坂道を転げ落ちる日本経済とは対照的に、これからの50年で世界を引っ張ると期待されているBRICs諸国、ブラジル・ロシア・インド・中国はすべて人口大国だ。グローバリゼーションが進行すれば、人間の潜在能力に大差がない以上、一人当たりの生産力は自然と均衡する。技術の進歩と拡散速度のバランスにおいて、拡散速度が上回れば、国力を決める要素として人口がより重要になるのは、歴史的に繰り返し見られてきた現象だ。
先進国=日米欧=の中では、アメリカだけが人口が増え続け、経済大国として存続すると言われている。移民の流入と、最近入ってきた移民=ヒスパニック=の出生率が高いからだ。逆に人口が減少に転じる日本には、誰もが相当悲観的だ。
~ 少子化問題の解決は即効性のある景気回復策 ~
無論、こんなものは単に今のトレンドを無理無理将来に引っ張ってみた荒っぽい予想にすぎない。だが、経済活動とはすべて予想に基づいて行われるものであって、「萎びていく」というレッテルを貼られた国に投資しようなんて誰も思わない。そんな国には新しいオフィスビルも、ショッピングモールも、道路も、何もかも不要ということになる。そうなると足下の就労機会もなくなってしまう。つまり不況になる。
ではもし日本の少子化が止まり、人口一億二千万人の均質な国家が長期にわたって持続可能であると言うことになったらどうなるか。これは少なくともここ20年で一番の「ポジティブサプライズ=うれしい驚き」で、世界の日本に対する評価は劇的に変化する。日本を無視、あるいは撤退していた資本が日本に戻り、それだけで相当の経済押し上げ効果を期待できる。しかもそれは一時的なものだけではない。
ここで重要なのは、日本の少子化が止まったと多くの人が確信することである。「今年は出生率がなぜか上向いた」というような話では、意味がない。また、現実に少子化がとまったと確認するには、少なくとも10年程度、出生率が2.1を上回るなど、長期的な観察が必要であるが、経済活動は予測に基づいておこなわれるので、多くの人がそれを「確信」すれば十分だ。つまり少子化問題が解決可能と思えるだけの社会的な仕組みをつくれるか、それを維持推進する政治的リーダーシップがあるかがポイントとなる。
~ 移民の受け入れは少子化対策の代替にならない ~
労働人口の維持が、経済規模の維持、つまり持続可能な経済につながる、として、主に財界の代弁者から大規模な移民の受け入れという解決策が提唱されている。世界人口は増えているのだから、数字だけでいえば、他から連れてくれば「日本列島に住む人間」の数を維持することは可能だろう。
しかしこれは歴史・社会に対する洞察を欠いた安易きわまりない暴論で、あたかも皮膚炎にステロイド剤を塗りまくるのと同じ、つまりそのときは良くても取り返しが付かない結果を招くだろう。1500年前、まだ民族概念が確立されていなかった飛鳥時代に帰化人を大量に受け入れて以降、日本は大規模な移民を受け入れたことはない。移民政策は人口維持と引き替えに大混乱の種を蒔くことになり、少子化を止めた場合のような日本見直しには必ずしも繋がらない。
~ 少子化問題の解決は子供を育てるライフスタイルの確立 ~
少子化問題について、主要政党はそれぞれマニフェストで対策をうたっているが、見れば分かるように、基本的にばらまきだ。
・自民 3~5歳児の幼児教育無償化
・民主 子ども手当創設と出産一時金拡充
・公明 幼児教育無償化と児童手当の拡充
・共産 公的保育充実と子どもの貧困克服
・社民 医療費無料化と子ども手当創設
ばらまき政策は、せいぜいやらないよりマシという程度であり、ここから少子化問題の解決までの戦略=ストラテジーは見えてこない。
少子化問題を解決とは、国民の一人一人が、子供を育てるライフスタイルを確立するということだ。子供がいる人生といない人生では、時間の使い方、お金の使い方はもとより、自分の一生の価値をどこに置くかという点からして大きく異なる。子供がいる大多数の人は、結局の所、人生に使えるリソースのかなりの部分を子供に投入することになり、また自分の人生の意義としても、子供を育て上げたことが大きなウェイトを占めることになる。
エコカーや地デジ対応テレビへの買い換えであれば、金銭的なインセンティブによってある程度の効果が期待できる。だが、ライフスタイルそのものの転換が必要な子育てでは、直接的な金銭インセンティブの効果はずっと小さく、根本的な解決にはならない。
つづく