誰かの宝物になりたかった、あのころ
わたしはひどく不自由だった
走っては転び
よろめきながら進むも
壁にぶつかり
ひどく混乱していた
その壁は分厚く感じた
音も光も届かない
絶望とも
呼べないような世界との隔たり
わたしは何をそんなにも恐れていたのだろう
そして
いまだ何に怯えているのだろう
喜びも悲しみも背中合わせのまま
ひとりでは感じることすらも許されず
誰かの肩が触れたときに
凍りつくような孤独を感じた
わたしは
わたしになりきれず
わたしは
わたしを見つけられず
さまよい歩く心許なさと隣りに並んだまま
光まぶしい窓の外を眺めていた
言葉も出ないほど傷ついたときに
やさしい言葉はカタチを持たない 蜃気楼のようで
ただ物悲しい
離れていくものの影を追いながら
ひとり静かに過ごす午後は
いつも
果てしなく続く憂鬱のみずたまり
わたしは
愛したかっただけなのだった
いついかなる時も
空に消えた あなたも
地に堕ちた わたしも
わたしは
いつだって
わたしの宝物になりたくて
悲しみよりも早い速度で 歩いている 今日も