シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#29 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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J事務所所属、気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

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ラザルが死にジャンが捕まったと聞かされたおいらは
このままこの事件が終わっていくんだと勝手に思い込んでいた
あの日から長く続いた暗く苦しかった日々・・・

おいらはやっとその呪縛から解放され
これからは眩しい太陽の元で普通に暮らしていけるんだと思っていた

本当にそう思っていたんだ・・・


でも、その呪縛に囚われていたのはおいらだけじゃなかった
ラザルの凶行に自分の人生を狂わされた人間はまだたくさんいたんだ

そして・・・その火種はラザルが死んだ今でも燻り続けていて
その苦しみの捌け口をずっと探し求め彷徨い続けていた



穏やかな街並み、楽しそうに笑う人たちの影で
そんな人が苦しみ涙ながら踠いていたなんて
想像すらしていなかったおいらは
この後、その事実を意外な形で知る事となった・・・



。。。。。。


    
     「ただいま・・・」


「あ、お帰り潤くん」


     「・・・・・・・・」



「・・・・・?どうしたの?」


     「い、いや別に何もないよ
      今日の晩御飯のメニューが全然決まらなくて困ってただけ・・・」


「ふ~ん、そうなんだ・・・」


     「うん・・・」


買い物から帰ってきた潤くんの様子が
いつもと違う事においらはすぐに気が付いた
でもそういう時は、あえて何も聞かないであげる

だって誰にでも言いたくない事の1つや2つはあると思うから
それが大切な人であればあるほど・・・余計何も言えなくなってしまう
そんな時はそっと1人にしてあげるのが1番だと思っていた


「おいら・・・・ちょっと買い物に行ってくるね」


    「え?どこに行くの?」


「あぁ・・・画材屋さん
 絵の具とかキャンバスとか色々無くなってきちゃって・・・」


    「そうなんだ・・・どう?絵の進み具合は?」


「うん、イイ感じだよ。どこを見ても綺麗だし
 日本に帰る前に出来るだけたくさん描き残しておきたいしね」


     「そ・・・そうだね・・・」


「じゃあ、ちょっと行ってくるね。直ぐに帰ってくるから」


    「うん・・・分かった。行ってらっしゃい、気を付けてね」


「うん、大丈夫だよ。んふふ・・・」


おいらは潤が買ってくれたウエストポーチを腰に巻いて部屋を出た



2人で住んでいるアパートから少し歩いた先の街角に大好きな画材屋さんがある
おいらは残り僅かになった絵の具や小さめのキャンバスなどたくさん買って店を出た
店に入った時はまだ空は明るかったのに買い物を終えて外へ出ると
空はもう赤く染まっていて歴史のある街並みの影を長く伸ばしていたんだ

おいらはもう少しその景色を見ていたくて夕暮れの街並みを足の赴くまま歩いてみた
街の中心に建っている大きな教会のレリーフは何処から見ても本当に見事で
その彫刻達は沈みゆく赤い太陽の光を浴びて陰影をつけて浮かび上がり
まるで本物の天使たちが舞い降りてきたのかと思う程綺麗だった



「すっげー、きれーだなー」



よく考えてみたら、おいらはこの街をゆっくり歩いた事がなかった
ラザルがこの世からいなくなり、ジャンが捕まってから
やっと初めて1人でこの街を歩けるようになった
それまではずっと隠れるように毎日過ごしていたから・・・



「ふぅ・・・いい気持ち・・・、
 風がちょっと冷たいけどそれが気持ちいいや・・・」



目の前で鐘の音が鳴る
石畳の上で餌をつついていた鳩たちがその音に驚き
バサバサと音を立てながら大きな羽を広げ一斉に飛んで行く



!?
「バイバイ・・・」



鳩たちが慌てて飛び立っていく様子を近くで見ていたおいらはそのまま空へと視線を移す
青い空の片隅でオレンジ色が赤色に移り変わっていく空がとても綺麗で
足を止めその光景に思わず見とれてしまった

やがて空一面が真っ赤に染まり始めると街角の陰影はさらに濃くなっていく
時折通り過ぎるひんやりとした風がもうすぐ冬の到来を感じさせた
視線を落とし流行りの商品をディスプレーしている店頭をよく見てみると
すでにクリスマスイルミネーションが輝き始めていた


「んふふ・・・そうか、もうすぐクリスマスなんだね
 なんだか懐かしいな・・・」



おいらはそっと自分の胸に手を伸ばす
でも・・・そこにはもう何も無い事に改めて気づかされ胸が痛んだ



「・・・・・・」


(おいら・・・・何時失くしてしまったんだろう?
 翔くんとお揃いのネックレスだったのに・・・)



1つは翔くんから付き合って初めてのクリスマスプレゼントに貰った指輪
おいら達はその指輪を失くさないためにお互いネックレスにしていたんだ

もう1つは翔くんの誕生日にあげたお揃いのペアネックレス・・・
裏には2人の名前を彫ってもらって
どれだけ離れてても寂しくないようにと願い込めていた




(翔くん・・・逢いたいな・・・
 おいらもあの鳥の様に
 君の元へ飛んでいけたらいいのに・・・)




そう思いながらおいらは鐘の音が響く街で
暮れゆく空を見上げながら独り佇んでいた




。。。。。。。。。。



どのくらい経ったんだろう
気が付いたら周りはもう暗くなって来ていて
街のイルミネーションツリーがキラキラと輝いてる
おいらは潤くんに「直ぐ帰る」って約束していた事を思い出した


「あ・・・やばっ!
 潤くんに怒られちゃう・・・」


そう思って足早に帰ろうとした時だった
目の前から潤くんが息を切らして走ってくる姿が見えた

   
     「大野さん!!」


「あ、潤くん・・・。探しに来てくれたんだ・・・・?」


     「こんな時間まで何してたの?
      心配させないでよ?」


「ごめん
 あんまり綺麗だったから、つい見惚れちゃて・・・」


     「・・・・・もう!
      こんな所に1人でいちゃ危ないよ、さぁ帰ろう?」


「うん・・・」



そういうと潤くんはそっとおいらの手を取りゆっくりと歩きだす
まるで恋人同士みたいだ・・・

潤くんがおいらの方を見ては優しく微笑んでくれる
おいらもそんな潤くんの笑顔をみてうれしくてつい微笑んでしまった



「んふふ・・・」


     「ふふっ・・」



ところが・・・
そんなおいら達を鋭い視線で見ていた奴が
湿った街の暗闇から姿を現し
雑踏に紛れて小さく声をかけてきたんだ




     
     <お前が何故此処に居るんだ・・・?>





「・・・・?」




      <お前は何故笑ってるんだ?>




「な・・・なに?」





      <お前は・・・何故生きてるんだ?>




「!!?」


様々な声が混ざりあう広場の中から聞こえる低い声がおいらの耳に届く
小さく、でも確かにおいらに向かって話しかけているのが分かった



「え・・・?」



おいらはその声には聞き覚えがあった・・・
もうずいぶん昔に聞いたことのある・・・懐かしい声



「あの・・もしかして・・・」



     <アイツはお前の為に壊れたんだ・・・
       だからお前も・・・壊れてしまえ・・・っ>



「あっ・・・え?」



グサッ・・・・



     「うっ・・・・!!」



!!!?

小さな呻き声と共にさっきまで隣にいたはずの潤くんが
おいらの目の前で膝から崩れ落ちてゆく

その瞬間の光景はまるでスローモーションのようで
潤くんが倒れた先に立っている人の顔がはっきりと見て取れた


「あ・・・」


その顔はおいらの知っている顔だった
雰囲気は随分と変わってしまっていたけど
でもそのころの面影は残っている
その顔は間違いなくあの人だった


「なん・・・で・・・?」


そしてその手には
血の付いたナイフの切っ先がこちらを向いたまま握られている




ドサッ・・・!




「・・・!?」


家路を急ぐ人たちで賑わっていた街中で突然起こった異変に
おいらよりも先に周りにいた人達が悲鳴や大声を出した
潤くんが倒れた石畳の上にジワリと血が滲んで大きく広がってゆく


「あ・・・」



キャーッツ!!!
どうした!何があった!!?
オイッ人が刺されてるぞ!!
そいつが犯人だ、逃がすな!
誰か、そいつを取り押さえろ!!
ナイフを持ってる!気を付けて!
誰か早く警察を呼べ!救急車もだ!早くっ!!



「・・・・・、フラン・・ソワ・・・?」



     <お前が・・・悪いんだ
       俺の大切なジャンを・・・お前が壊したんだ
       だからお前も壊れてしまえ・・・お前が居るからいけないんだ>



「おいらがジャンを・・・・壊した?」



     「大野・・・さん・・・」



「潤くん・・・・!?」



潤くんは自分の血が付いた手をおいらの方へ伸ばしながら
そっとおいらの頬に触れ優しく話しかけてきた


!!!?
「あ・・・・」


     「だい・・・じょ・・・うぶ・・・?」


「うん・・・、おいらは・・・大丈夫」


     「良かっ・・た・・・、貴方が・・・無事で・・・うッ・・」


!?
「や・・・やだ・・・、死んじゃ・・・やだよ・・・」


     「死なないよ・・・これくらい・・で・・・、ふふっ」


「潤くん・・・、潤・・・くん・・・・ッ」


     「だいじょ・・・ううっ・・・!」



そういった潤くんの脇腹からは更に血が滲み
やがておいらの腕の中でその意識を失ってしまった



!!!?
「潤くん!?潤くんっ!!」


     「・・・・・・・・」


蒼白い顔をしたままピクリとも動かなくなってしまった潤くん・・・
おいらはあの時の司の事が脳裏に蘇ってきて一気に怖くなり
カタカタと身体の震えが止まらなくなってしまった


「や・・だ・・・、潤くん目を開けて?」


     「・・・・・・・」


「逝かないで・・・?おいらを1人にしないで・・・」


     「・・・・・・・」


「ねぇ、誰か助けて?
 お願い・・早く助けて・・・助けてーッ!!



遠くから聞こえる救急車の音がなぜかとても遅く感じる
おいらは潤の身体を強く抱き締めながら
潤の脇腹から流れ出る血を必死押さえ続けた