シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#18 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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J事務所所属、気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

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     <潤くん>


「あ、松岡さん」


     <司から連絡あったか?>


「いえ・・・・、あれから一度も・・・」


     <そうか・・・>


「・・・・・・」


兄貴のあの電話から1か月が経った
あれきり俺の携帯に兄貴からの着信履歴はない

今、俺と話しているこの人は外交官の松岡さんだ
昔兄貴に世話になったとかで
フランスから逃げてきた俺達の面倒を見てくれている人

イタリア領事館に顔が利くからと色々な事を俺に教えてくれる
当然兄貴が身を隠すことになった経緯も・・・・



兄貴は今、ラザルの魔の手から逃れるために身を隠している
フランス警察の上層部に顔が利くラザルは
当時自分の持っているあらゆる権力を使って自分の元から逃げた2人を探していた

でも個人で探すにはどうしても限界が生じる
そこでフランス警察内部の人間を使って
警察が調べた情報を裏で入手していたらしい
その中で唯一名前が判明していたのが司だった


ラザルは警察内部から得た情報を元に
裏社会の人間を使ってその記者を拉致させた

その記者はリークしてきた相手の事は一切喋らなかったらしい
でも、ラザルに手を貸していた裏社会の人間は
その記者の家族にまで手を出した
生まれたばかりの子供と大切な奥さんを人質に取り
必要以上に暴行を繰り返したらしい


そして、遂にその記者は大切な家族を守る為
司の名前を出してしまった・・・と言うのだ



俺はその一部始終を最近松岡さんから聞かされ
ラザルが本気で俺達を狙っていることを改めて知った
兄貴はそんな俺達を守るため今、必死で逃げている



本当は直ぐにでも俺達の元に来たい筈なのに
それが出来ないもどかしさ

大野さんの顔を見て笑い合いたいと思っている筈なのに
それが出来ない歯がゆさ


兄貴はそんな全ての事を背負ったまま
あえて俺達の傍には近づかない事を選んだんだ・・・・


     <こっちにさえ来てくれたら
      俺が全力で助けてあげる事が出来るんだけどな・・・
      何処にいるのかも分からないんじゃどうする事も出来ない>


「・・・・、すみません」


     <何でお前が謝るんだよ?お前たちは何も悪いことしてないじゃないか
      悪いのはラザル・バルローだろ?>


「・・・・・・・・」


     <でもそのラザルも指名手配を掛けられてからはその身を隠してるからな・・・
      不気味だよ・・・いつどこに現れるか分からないし、
      ラザルの権力は底知れないからな・・・、一筋縄では行かないぞ・・・>


「・・・・ッ」


     <あ、ごめん。お前にこんなこと言っても仕方がないよな
       でも潤よく覚えておけよ?>


「!?」


     <相手は何をしてくるか分からないような危ない奴だから
       細心の注意を払え!特に大野くんを絶対に外には出すな!
       向こうは大野くんの命を狙っているんだからな・・・いいな?>


「はい・・・」


     <もし司から連絡があったらいつでも連絡してきてくれ
       時間関係なく直ぐに連絡してきてくれよ?頼んだぞ?>


「分かりました」


     <・・・・・・・。
      お前も色々辛いだろうけどラザルが捕まるまでの我慢だ
      ジャンは警察病院内で身柄を拘束されているから大丈夫、心配しなくていい>


「・・・・・・」


     <おっと・・・ごめん、そろそろ仕事に戻らないと・・・
       また何かあったらいつでも連絡くれ
       なければまた来週ここで落ち合おう・・・>


「はい」


     <じゃ・・・>


「あ・・・松岡さん」


     <ん?何だ?>


「1つだけ聞きたいことがあるんですけど・・・」


     <何だ?言って見ろ>


「兄貴から・・・特別な人がいるって話聞いたことありませんか?
 たとえば中学の頃からずっと好きなやつがいる・・・とか」


      <あぁ・・・そんなこと言ってたことがあったな
        後輩で物静かな奴だけど大好きだって言ってたっけ
        笑った顔が優しいから思わず自分も笑ってしまうって・・・
        何か・・・懐かしいな。
        その時の司、幸せそうに目を細めていたっけ・・・>


「そうですか・・・すいませんお忙しいのに引き留めてしまって」


     <いや・・・いいよ。じゃぁまたな・・・>


「はい、ありがとうございました」


松岡さんはスーツのズボンのポケットに両手を突っ込みながら
足早に雑踏の中へと消えていった

街角の小さなカフェに取り残された俺は
冷めたエスプレッソを見つめながら考えていた


「・・・・・、ふぅ・・・」


やっぱりそうだ



兄貴は大野さんの事・・・
だからこんなに危険な事も出来るんだ


大野さんを守るため
愛する人を守るために・・・


「馬鹿やろ・・・」


手に持ったカップに残っているエスプレッソを一気に喉へと流し込み
大野さんが待つ部屋へと戻る



「・・・・・・」



松岡さんに言われたからじゃない
これは俺の意志だ
何があっても決して揺らぐことのない断固たる決意





翔さんの大切な


兄貴の大切な



俺の大切な大野さんを



全力で守リきる



そして必ず日本へ連れて帰るんだ



それが・・・俺の役目だ






俺はもう一度気合いを入れ直して歩き出す
そしていつか貴方へこの想いを伝えるんだ




愛してる・・・って





。。。。。。。。。。。


街角の小さなカフェから徒歩20分で俺達のアパートに着く
途中の市場で買った食材を両腕に抱えてその扉を開いた


「ただいま~」



あれ?返事がないな?
いつもなら優しい声で「おかえり」って出迎えてくれるのに
トイレにでも入ってるのかな?

俺は手にしていた紙袋をキッチンの調理台の上に置き
冷蔵庫へ食材を入れながら部屋の中にいるであろう大野さんに声をかけた


「大野さ~ん、聞いてよ~
 今日はね、良い魚が手に入ったんだ
 あとで料理作るの手伝ってくれない?」



     「・・・・・・」



「・・・・・?」




何処からも返事がない



ゾクリ・・・



その瞬間背中を悪寒が走った




「・・・・・・・
 大野さん?返事して!?・・・・大野さん!?


俺は慌てて部屋の中を見て回った
トイレ、風呂、ベッド、ベランダ・・・
でもどこを探しても大野さんはいない


俺は改めて部屋の様子を見てみる
誰かが入ってきて荒らして言った形跡はない
物を取られたり、壊れたりもしていない・・・


「大野さん!!大野さんっ!!」


何処に行ったんだ?
1人部屋を出ちゃ駄目だって言ってあったのに・・・・ん?


ダイニングテーブルにメモが置いてある
そこには大野さんの字でこう書かれていた



   ー 潤くんへ

     司から逢いたいって連絡がありました
     ルカとテオも着いて来てくれるって言うから3人で行ってきます
     場所は×××です、すぐに戻るから心配しないでください

                            智 -



!!!?


「馬鹿・・・ッツ、罠だ!!」


俺は携帯を片手に兄貴に連絡を入れてみる
でも何度呼び出しても連絡は取れない
気が付いたら大野さんが残したメモを片手に
部屋を飛び出していた



心臓が・・・激しく鼓動を刻む



ヤバイ・・・



ヤバイ・・・・・と警報を鳴らしてる



(大野さん!大野さん!!)




俺はその場所まで全速力で走る


走りながら心の中で何度も名前を呼び続けた



(大野さん・・・お願い無事でいて・・・
 もし貴方の身に何かあったら
 また俺は何も伝えられないまま終わってしまう)




「はぁ・・・はぁ・・ッ」



(いやだ、俺はちゃんと伝えたいんだ!
 貴方の事が好きだって・・・今度こそ・・・)




「はっ、はッ・・・は・・・ぁ・・・ッツ」



(愛してるんだ・・・貴方だけをずっと・・・・)




白い壁に赤茶色の屋根が連なる歴史的建造物
一際高く見えるのは美しい彫刻が刻まれている教会だ

この街で一番高い塔の上から鐘の音が時を刻み始める
果てしなく続く空は赤く染まり、古く落ち着いた街並みに
光と影のコントラストを濃く浮かび上がらせた


普段なら思わず見とれてしまいそうなほど美しい情景
でも、今はそんなことに心を奪われている場合じゃない

もうすぐ夜がやってくる
この街が闇に覆われてしまう前にあの人を探し出さないと
貴方の手を2度と掴む事が出来なくなってしまう


俺は鳴り響く鐘の音を聞きながら
街の中をなりふり構わず全速力で走り抜けた
 






  「智ーーッツ!!」