シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#08 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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J事務所所属、気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

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俺と兄貴はフランスから日本へと一時帰国した
新しい年を家族と迎えるためだ

本当は俺だけでもパリに残りたかった
だってどのタイミングでテオから連絡が来るか分からなかったし
日本へ帰ってきてもあの人の情報は何も得られないと思っていたから・・


俺はとりあえず帰国したことを和に伝える、すると
「久しぶりだから一緒に飲みに行こう」と誘われ
俺達は六本木にあるホテルのバーで待ち合わせた


。。。。。。。。


相変わらず東京の夜は賑やかだ
クリスマスが終わると年末年始に向けて日本中が一気に慌ただしくなる
そんな中に久しぶりに身を置くのも悪くないなと
バーカウンターで副都心の夜景を見下ろしながらグラスを傾けていた


     「遅くなってごめん・・・」


少し離れた背後から聞こえた懐かしい声
ちらりと振り返ると和が小さく手を上げながらこっちへ近づいてきていた
暖かそうなマフラーで顔半分を隠しポケットに手を突っ込んでいる
相変わらずな格好で思わず笑ってしまった


「いや・・・そんなに待ってないよ?」


     「ん?何?何で笑ってるの?」


「え?あ、相変わらずの格好だなって思って・・・」


     「あぁ・・・これ?だって暖かいんだもん
      どうする?ここで飲む?それともテーブルチャージする?」


「どっちでもいいよ?」


     「じゃぁ・・・テーブルに行こうよ、ちょっと込み入った話もあるんだ」


「ん?わかった・・・」



俺は近くにいたバーテンにテーブルのチャージと2人分の新しい酒を頼んだ



「「かんぱ~い」」


テーブルに着き酒が運ばれてきたのを見届けてから
久しぶりに顔を合わせた和とグラスを合わせた

お互いの近況報告とか色々な事を和は教えてくれる
注文していた料理が無くなり始めて3杯目の新しい酒が運ばれてきた頃
和が気になる話をしてくれた


「は?大野さんが・・・死んだ?」

 
     「うん・・・そういう噂が流れているんだけど・・・」


「いったいどこからそんな噂が?」


     「ん~?
      そこまではちょっと分からないんだけど、でも・・・」


「でも?」


     「翔さんの姿を見る限り、そんな噂も強ち嘘ではないような気がして・・・
      潤くん何か知ってる?向こうではどう?何か動きとかあった?」


「・・・・・。
 いや・・・、それより翔さん大丈夫なのか?」


     「大丈夫・・・とは言い切れないな、あの状態じゃ」


「どういう事?」


     「笑わないんだって・・・あの人」


「!!?」


     「もうあの人は仕事をしてるから最近はあまり会うこともなくなったけど
      相葉さんとは時々会ってるみたいで・・・
      まぁそれも、
      相葉さんが一方的に会いに行ってるって感じみたいだけどね・・・」


「相葉さんが・・・」


     「でも・・いつも寂しそうな顔して帰ってきて、その度に飲みに誘われるんだ」


「・・・・・」
      

     「この間、相葉さんの誕生日だったから久しぶりに俺から誘ってやったの
      そしたらちょうど翔さんと会った後だったみたいで・・・
      タイミング的に最悪で・・、相葉さんが泣いちゃった・・・」


「・・・・!?」


     「あの相葉さんが・・・泣いちゃったんだよ・・・
      翔さんは自分の事なんて全然見てないって
      何をしてても・・・大野さんの事しか考えてない・・・って
      苦しそうに、寂しそうに泣いたんだ・・・」


「・・・・・」


     「俺、何も出来なくて・・・
      大野さんが死んだって噂が流れててても、絶対諦めようとしない翔さん
      そんな翔さんを近くで見ている相葉さん・・・
      そんな2人を見守る事しか出来ないなんて・・・辛すぎるよ・・・」


「和・・・・」



教えてあげたかった
いま俺が掴んでいる細い糸の事を・・・
でも、この先にいるのが絶対に大野さんだとは限らない


それに翔さんにこの事を知られる訳にはいかないんだ
万が一アイツの耳に入ってしまったら
今まで頑張ってきた事がすべて無駄になってしまう
ぎりぎりで掴んでいる糸が切れてしまう・・・


ごめん・・・和・・・・




「なぁ・・・・和・・・」


     「ん?」


「翔さんと相葉さんの事、頼んでもいいか?」


     「はっ!?どういう事?」


「俺・・・大学卒業したらそのままパリで仕事するんだ
 当分の間、帰ってくる事が出来ないと思う
 だから2人の事・・・助けてやってくれよ?な?」


     「う・・・ん・・・・。
      学生の時のようには行かなくなるだろうけど
      できるだけ傍にいるようにするよ
      何かあったらすぐに連絡するから、その時は相談に乗ってくれる?」


「あぁ・・・いつでも電話してきて」


     「うん・・・。
      ねぇ・・・・潤くん・・・」


「ん?」


     「実際どうなんだろう?
      大野さん・・・生きてるのかな?生きてる・・・よね・・・?」


「・・・・・・・」


     「ご両親がもう亡くなっている事も知らないまま・・・なんて事ないよね?」


「・・・・・・・」



俺はその時、和の顔を真っ直ぐに見る事が出来なかった
だって縋るように俺を見つめているその瞳が大きく揺らめいていて
必死で耐えている雫が今にも零れ落ちそうだったから・・・


カラン・・・・


手にしていたグラスの中の氷が解けて小さな音を鳴らした
琥珀色をしたその液を一気に喉へと流し込む

そして俺は静かに席を立った・・・・









。。。。。。。。。。。。。。。






俺と兄貴は年が明けてすぐにフランスへ戻って来た


2月、兄貴に頼まれて俺はある街へと出向いた
そこはテオの住む街からTGVで2つ手前の大きな街で
そこで俺は家具の買い付けをしに行ったんだ


仕事は良好だった
取引相手のオーナーも好感触で話をしていて珍しく意気投合してしまった

その人は自家のワイナリーを所有していて俺にそれを見せてくれると言う
断る理由もなく時間もあったから俺は喜んでその申し出を受けた


車で1時間、田舎道を走ると
何処までも続く低く広いブドウ畑が見えてきた
所々に立っているお城や家が見事なまでに調和していて
思わず見とれてしまう程だった



やがて案内されたワイナリーで俺は美味しいワインを試飲した
熟成された味と仄かな酸味が口一杯に広がって幸せな時間を過ごす事が出来た
俺とオーナーはワインを口に運びながら色々な話をする
その中でオーナーがとても興味深いことを教えてくれたんだ


「え?見たこともない男の人?」


     「あぁ・・・ときどき見かけるんだ・・・」


「どこで?」


     「実はこの近くにある森には小さな湖があるんだけど
      そこで絵を描いているみたいなんだよ・・・」


「!!?」


     「秋になると狩猟が解禁されるだろう?
      その時に何度か見かけたんだよ・・・ 
      あれは・・・バルローさん所の使用人の子と一緒だったな・・・」



      !!!!!



「バル・・・ロー?」


     「あぁ・・・。
      いや・・・あの家は亡くなった奥さんが所有していた物だから
      ブリヨン家と言った方がいいのか・・・」


「ブリヨン!?あのワインで有名な!?」


     「さすが、知ってるんだ。まぁ・・・有名だもんね
      そう、その家の別荘がこの近くにあって
      そこに住んでいる耳の不自由な少年と一緒だったんだ」

     


ドキン・・・・




ドキン・・・・・・





心臓が・・・・止まりそうだ




あまりにも急な展開に頭が付いていかない




     「どうかしたのかい?ジュン・・・」


「あの・・・・」


     「ん?」



「その場所教えてもらえませんか?
 是非、世界的にも有名なそのワイナリーをこの目で見てみたい・・・」


     「ワイナリーじゃないよ?別荘だよ?」


「それでもいいです・・・一度見てみたい
 こんなチャンス2度とないと思うから・・・・」


     「・・・・・・。
     いいよ、連れて行ってあげるよ、ここからすぐだしね
     ちょっとだけ待ってて直ぐに支度してくるから・・・」


「ありがとう・・・」




俺はオーナーが立ち去ってから大きく深呼吸をした
ワイングラスを持つ手が微かに震えている


もしかしたら貴方のいる場所を・・・見つけたかもしれない


期待と不安が俺の身体を駆け巡って
震える手を止める事が・・・・出来なかった・・・・